第30話 たこ焼き


 あれから数週間が経った。

 俺たち3人は今、俺の家でたこ焼きパーティを開催していた。


「いやぁ、大変だったな」


 たこ焼きをクルクル回しながら、俺はしみじみと語った。守本に勝利したことはよかったが、あの後が色々と大変だった。


 何人もの生徒が俺の元へ押し寄せてきたり、騒ぎを聞きつけた先生がやってきたり……とにかく色々とあった。だが幸いなことに、罪に問われることは何故かなかった。動画を撮っていた生徒や写真を撮っていた生徒のスマホが、何故か軒並み不良を起こしており、証拠となるものの撮影がなされていなかったからだ。


 さらにあの後、守本は不審死を遂げた。

 彼はその日の夜、ベッドの上で圧死していたという。理由はさっぱりわからないが。


「あ、ありがとうね、志苑くん!!」

「アタシたちの仇を取ってくれたこと、感謝するわ」

「構わないさ。2人が元気になったことが、俺にとって最もハッピースマイルだからな」


 2人は後遺症もなく、完治した。

 毎日ポーションを飲んでいたおかげだろう。

 今となっては、共にダンジョンに挑むこともできるほど元気になった。


「しかし……このたこ焼きは美味いな」

「そりゃそうよ!! アタシが作ったんだから!!」

「わ、私も手伝ったよ!!」


 こう見えて、詩葉は料理が上手いらしい。

 雨凛も、同じくらい上手だった。


 中がトロッとしてて、外側のカリッとした感じとのバランスが絶妙やな。関西のたこ焼きらしく、中はしっかりとベチャッとしてて、その柔らかさが口の中で広がるんやけど、具材のタコの食感と相まって最高やわ。この甘辛いソースと青のり、細かく刻んだかつお節の風味が加わって、もう止まらんな。関西のたこ焼き、やっぱりこれやな!


 ……俺の中の関西人が、顔を出してしまう。

 俺の祖母が関西人だったからか、俺の中の関西人が疼くほど、このたこ焼きは美味だった。


「ほ、本当に美味しいね!!」

「雨凛……太るわよ?」

「た、たこ焼きは小さいから、ゼロカロリーなんだよ? ど、どれだけ食べても、太ることはないんだよ?」

「……んなわけないじゃない」


 パクパクパクッとドンドンたこ焼きを口に運び、飲むようにして食べていく雨凛。このたこ焼きは関西風ではなく関東風なので、油が多めだ。故にそんなスピードで食べてしまえば、確実に脂肪になってしまうだろう。


 そんな雨凛を戒める詩葉だって、たこ焼きを食べるスピードが止まらない。彼女も最初に出会ったときに比べると……若干肥えた気がする。雨凛の食事に付き合っているせいで、カロリーを過剰に摂取してしまったのだろう。


「プレイヤー狩りも死んで、これでハッピーエンドね。掲示板を見る限りだと、みんなも喜んでいるわ」

「も、模倣犯が出てこなくて、よかったね」

「全くその通りだな」


 プレイヤーを倒せば、経験値を多量に獲得できる。俺も守本を倒して、レベルが幾らか上昇した。俺のようにレベルアップ制度が無くともスキルが強くなるのは間違いないので、甘みを知った守本の模倣犯が現れると思ったが……別にそんなことはなかった。


 しかし……何とも不可解だ。

 プレイヤーを倒せば、魔物を倒した時よりも強くなる。このシステムではまるで、プレイヤー同士の戦いを推奨しているみたいだ。このアプリの開発者は、何とも性格が悪いな。


「何はともあれ、2人が元気そうで──ん?」


 その時だった。

 スマホのバイブが震え、通知が届いた。

 スマホを開くと、そこには──


【アップデートのお知らせ】


 と、無機質な文字で書かれていた。

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