第46話 成宮一族の激高

☆山吹小春(やまぶきこはる)サイド☆


正直に言ってこんなに簡単に終わるとは思わなかった。

米田健はあっという間に捕まり。

因みに米田健司だが警察に保護された。

山奥から逃げ出したという。

外道達の歌ももう終わりだろう。


思いながら私は梓ちゃんとお菓子を作っていた。

梓ちゃんはお菓子の腕前が凄い。

だから教わる事ばかりだ。

だけどその手が止まったりする。


「...梓ちゃん」

「はい。小春さん」

「きっと良い事はあるよ。大丈夫。また良い人が見つかるよ」

「そうですね」


そう言いながらも私も泣いているというか目に涙が浮かぶ。

失恋したんだなぁという事が身体を電流の様に駆け巡る。

私は涙を拭いながら梓ちゃんとお菓子を作った。

そうしているとインターフォンが鳴った。

まさかと思い私はドアを開ける。


そこにはやはり成宮さんが居た。

成宮さんは私を見ながら頬を掻く。

そして「アンタと梓に用事があった」と言ってくる。

私は「何の用事?」と聞く。


「...どう彼に接したら良いか分からないから。それを聞きたくて」

「...えぇ...それを失恋した私達に聞くの?」

「デリカシーが無いですね」

「...私だってさんざん悩んだけど分からないから」

「...まあそれは分かる。...貴方が苦労しているのは」

「さばさばしていたけど実際はね」


私は成宮さんを家に招き入れる。

それから成宮さんは何かに気が付いた様に顔を上げた。

「お菓子を作っているの?」と聞いてくる。

私達は「そう。失恋中だから」と言う。


すると成宮さんは「成程」と言いながら考え込む。

そして数秒間。

そうしてからいきなり顔を上げた。


「...私もお菓子を作って良い?」


私達は顔を見合わせる。

それから「そうだね」と梓ちゃんが言う。

私はその言葉を受けながら「貴方が居たら何か変わるかも」と言う。

そしてパーティーに成宮さんも参加する事になった。



「何を作っているの」

「マフィン。そしてクッキーかな」

「そうなの」

「そうです」


梓ちゃんは生地を仕込む。

それから成宮さんも参加しながら生地を形にしてから焼いていく。

3人での共同作業は初めてかも知れない。

そう思いながら居ると成宮さんが「あの」と言葉を発した。

そして口を閉ざしてから開けた。


「...今まで悪かった。...だからその。色々と教わりたい」

「...成宮さん。私は貴方は十分な事をしているって思う」

「そうですね。だからこそ成宮さんには立ち直っていってほしいと思います。今なら」

「...感謝しか無いね。...有難う」


そんな事を成宮さんは言う。

それから涙を浮かべてからそれを拭う。

私達は顔を見合わせながら「じゃあクッキーとか焼きましょう」と言いながら3人で作業していると...成宮さんに電話が。


「...ごめんなさい。お姉ちゃんからだ」

「じゃあ私達焼いてますのでお構いなくです」

「ゆっくり電話かけてね」

「有難う」


それから電話に出る成宮さん。

「もしもし」という感じでだが。

私達はそれを見ながらマフィンを焼いていると「え」と絶句する様な声がした。

その言葉に私達は成宮さんを見る。

成宮さんは「待って。それはどういう事」と眉を顰めた。


「何でそうなるの。お姉ちゃん...?え...」

「...どうしたんだろう」

「そうですね」


そんな会話をしながら私達は不安げに成宮さんを見る。

すると成宮さんは「...うん」と返事をして電話を切った。

それから私達を見る。

辛そうな顔でだ。


「...どうしたの?成宮さん」

「お姉ちゃんが実家に戻るらしい。...私がアクアユニゾンスクエアに加入しているのを知った両親がお金をかけて繋がりとかを全部解体させるって言ってきたから。妹を。誓ったバンドを守りたいからって。腹いせだと思うけど」

「...え?それは...え!?」

「...酷い」


そんな言葉を言いながら私はマフィンが焦げるのを見ていた。

そして私達は歯を食いしばる。

そんな非道な真似をするのか普通。

思いながら私達は顔を見合わせながら居ると成宮さんは「幸せになれないんだな。私」と呟いた。

私はスマホを取り出す。


「駄目だよ。成宮さん。これで諦めたら」

「そうですね。小春さん。絶対に許せない」

「私達を敵に回した事を音楽で後悔させるよ」

「私もどうにかします」


その言葉を受けながら成宮さんは「え、え?」と動揺していた。

まるでこの動きを予測して無かったかの様な反応だ。

それで良いのだ。

私達はお菓子が焼き過ぎているがそれを無視してから電話を掛けたりする。

アクアユニソンスクエアを敵に回すとは恐ろしい事をしたものだ。

後悔させてやる。


「...でも私が居なくなったら良いだけの話だけど」

「それでは解決しません。貴方は大切なバンドの一員です」

「そうだね。梓ちゃん。じゃあ徹くんに知らせよう」

「でも徹は...関係ない」

「関係あるよ。こうなった以上はね」

「そうです」


「絶対に徹君は許さないだろうね」と私は言いながら笑みを浮かべる。

それから私は徹くんに息を吸い込んで話す。

何が起こったかを。

すると徹くんは予想通り怒り始める。

「何でそうなる」という感じでだ。


「...徹くん。どうしようか」

『それは決まっているだろ。...ぶちのめす!』

「こうなった以上は成宮さんの家に行こうか」

『当たり前だな』


そして私は成宮さんを見る。

成宮さんは涙を浮かべて「私はもう必要無いって」と言う。

私は電話をスピーカーにした。

それから聞かせる。


『祥子。...そろそろ決着をつけるぞ。全てに』

「...徹...」

「私も協力するよ」

「当然私もだけど」


『あとは成宮夫妻がどうにかなれば完結だと思うから』と徹は言う。

だけど危険が相当にある。

音楽ではどうにもできない問題だと思うが。

そう思いながら見ていると徹は『団員もそうだけど1つでも失えばアクアユニゾンスクエアじゃないからな。頑張ろう』と言ってくる。


「...」


正直涙が止まらない。

そうかこれが...これが本当の優しさなのだな。

そう思えた感じだった。

そして私は徹にお願いする。


「お姉ちゃんを取り返して」


と懇願した。

徹は『ああ』と力強く言った。

そして2人も頷きながら私を見た。

何としても奪還する。

お姉ちゃんをだ。

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