第31話 悪を利用する事を俺は悪だとは思わない

☆成宮祥子(なりみやしょうこ)サイド☆


翌日になった。

私は薄汚いシミだらけのクソみたいな布団の中で目を覚ました。

それから起き上がりながら伸びをして欠伸をする。

そして直ぐに頭痛がして頭を抱える。

クソッタレが。


「...ちっ」


悪態を髪の毛を掻きむしってから思いっきり吐いた。

それは...自分に向けてや周りに向けての強烈な悪態だ。

しかし強迫観念が凄まじい。

どいつもこいつもクソがクソがクソが!!!!!


「...」


私は学校に行く準備をしてから立ち上がる。

それから私はドアを開けると...そこに姉が居た。

私は「!?」と思いながら姉を見る。

姉は「ゴメン。遅くなった」と息を切らしていた。


「...遅くなったって...」

「脱走するのに時間が手間がかかって。歩いて来たの。...ゴメンね」

「...私の所に来たら無事じゃすまないよ」

「無事じゃなくても良い。私は...貴方が心配だから来たの」


よく見ると靴を履いてない。

そして寝間着に裸足だ。

私は唖然としながら「なぜそこまで」と言う。

すると姉は「貴方がそれなりに悪い事をしたのは心から知っている。...だけどそれでも私は貴方が好きなの。...妹として大切なの。それだけは分かって」と話した。


「...」

「...貴方があの変態の所に連れて行かれたあの日。私は見送る事しか出来なかった。ピアノ教室と偽って実際は何人もの子供に手を出していた...アイツの所に行くのを」

「...」

「...私は心から取り返したかった。貴方を」


足の裏から結構出血している。

何か固いものでも踏んだのだろう。

私は鍵を握り締める。

それから姉を見る。


「...治療しようか」

「絆創膏持ってる?それだけでいい」

「でも感染症とか」

「良いから。飲料水で洗うから足の裏は」

「...」


私は鍵を壊すぐらい握り締めてから握るのを解いた。

それから姉を見る。

「...私と貴方じゃ色々と相対し過ぎるから」と言葉を発した。

すると姉は「そんなの気にしない。貴方を救えればね」と笑顔になる。

抱き締めてきた。


「...今までゴメンね」

「...信じても良いの。アンタを」

「私は決して悪には染まらない。...今まで守れなかった分。私が何とかする」

「...」


視界が何故か歪んでいた。

まさかと思うが私が泣いているのか?

そんな事を思いながら私は涙を流した。

その涙は実に2年ぐらいぶりの涙だった。


「お父様とお母様は頭がおかしい。...だから貴方を守る為に親戚を頼ろうって思って。疎遠になっている幸奈叔母さんとか」

「...おこずかいとか貰っていたしね」

「懐かしいね。蝉取りをしたとか覚えてる?」

「そうね。...確かに」


私はそうそっけなく答えていると「あ。学校だっけ。ゴメンね」と私にウインクしてから「鍵貰って良い?」と言ってくる。

その鍵を渡しながら私は「学校に行く」と話した。

それから私は学校に向かって歩き出す。



アクアユニソンスクエアというバンド。

これは徹達が結成したバンドだ。

私はそのバンドのSNSの批判を見ながら屋上でご飯を食べる。

それから目の前を見た。

空が見える。


「...私は何をしているんだろうか」


そんな事を呟きながら居ると屋上にやって来た女子達が「うわ」とか言いながら私を見ていた。

最近、私は嫌われているのだ。

それは多分...米田健のせいだろう。

アイツが要らない情報を拡散したから。


「...」


誰でもやれると思われている様だ。

女子からは軽蔑され男子からは好奇な目を向けられている。

誰でも股を広げる女。

つまり売り女だと。


「...」


忌々しい。

私とやりたいならとっととくればいい。

幾らでも筆おろししてやるよ。

思いながら私は荒っぽく弁当箱を叩きつけてからそのまま仕舞ってからその場を後にした。

それから教室に戻る。

そうしているとスマホが鳴った。


「...?...は?」


徹だった。

私は唖然としながら「ブロックを解除したのか?」と呟く。

そしてメッセージを読む。

そこにはありえない言葉が飾られていた。

それは。


(成宮。お前を捨てた野郎に接触した。米田の兄だ。...お前は棄てられたんだな。使い捨てられたんだな。今まで大変だったな)


という感じでだ。

米田に接触したのか。

思いながら私はタップして返事を書いた。

それから送信する。

(まあそうだけどそれが?)という感じでだ。

すると徹は(お前...反省する気はあるのか)と聞いてきた。


(反省と米田がどう関係があるの)

(...米田は危ない。絶対に。...そこで提案がある)

(何よ)

(ここは一時休戦してお前と手を組みたい)


その言葉に私は驚愕しながら文章を読む。

予想外の言葉だった。

(アンタはそれで良いの。私は悪人だよ)と送る。

すると徹は(今はそうは思わない)と書いた。


(どっちにせよ俺達はアイツを倒さないといけない。だからこれはトレードだ。お前という力が要るんだ)

(そんなの勝手だね。...私が手を組むと?)

(実はバンドメンバーからも批判だらけだ。だけどお前と手を組んでからやりたい)

(...)

(悪人を悪に利用するのを俺は悪だとは思わない)


私はその言葉に盛大に溜息を吐く。

それから(ちょっと考えさせて)と返事を書いて送信した。

今の状況では返事のしようがない。

思いながら私は返事を留保した。

そして私は窓から外を見ていると。


「なあ」

「...何」

「...お前ってマジに売り女なの?性病とかは?」

「...そんなの知らない。やりたいならやるだけだけど」


クラスの男子がそう言ってくる。

ガキだなと思いながら私はそう返事をする。

すると男子達は「するか馬鹿。気持ち悪いな。お前」言ってきた。

それから顔面にコップの水をぶちまけられた。


「...性病うつるからこっち来るな」

「よーやるぜ。武」

「そうそう」


私はクラスメイトを睨む。

ピエロの様な外道達を。

私もまあ大概外道だけど。

コイツ等私が何もしない事もありやりたい放題だなって思う。

クソッタレ共が。


「売り女が学校に来るのもおかしいだろ」

「汚れるっつーの」

「そうそう。アハハハハ!!!!!」


これまでの分の天罰だろう。

これはだ。

思いながら私はハンカチで水を拭いてから椅子に座る。

それからイライラを抑えた。

丁度先生が来たのでだ。

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