第15話 呪いの産物

☆佐藤徹(さとうとおる)サイド☆


山吹さんが友人を殴り飛ばした事によって俺は衝撃を受け。

何かショックを受けていた。

それから引き籠っていた俺を彼女は。

華は表に連れ出してくれた。


「海に行くならやっぱ塩海駅だよね」

「...マジに海に行くんだな」

「行くよ。だって君が傷付いているんだから」

「...俺にそんなに配慮しなくて良いんだぞ?お前。...お前だって忙しいだろ」

「私はこれはデートって思っているから。全然平気」


そう言いながら俺を見る笑顔の華。

俺はその姿を見ながら苦笑する。

それから華は俺に手を広げる。

そして「ほら。行くよ徹」と言ってくる。


俺はその声に華の手を握る。

それからゆっくりと歩き出す。

それはまるでヴァージンロードを渡るかの様なそんな感覚だった。

俺はゆっくり目を閉じてから開き歩みだす。


「...そういえばお前は真面目ちゃんだったのに大丈夫なのか」

「真面目だけじゃ経験は積めない。だからこういう事もしないとね」

「...意味が全く分からんがまあ...お前がそう言うなら」


俺達は電車を待ってから乗り込み。

それから塩海駅を目指す。

ここから2駅離れた場所に存在する場所だ。

煌びやかな海に...防波堤がある。

主に恋人たちに人気の...場所である。


「俺さ」

「...うん?何」

「...お前に出会えて本当に良かったよ。お前がこうして連れ出してくれなかったら何も変わらなかっただろう」

「恥ずかしい事を言うね徹」

「...いや。自分が思っている事を言っているだけだ。だから恥ずかしい言葉じゃない」


そう呟きながら俺は窓から外を見てみる。

窓から外の世界は広がって大いに広がっており...快晴である。

つまり俺達を歓迎している気がする。

俺はその世界を見ながら溜息を吐いてから「俺さ」と言葉を発する。


「...うん」

「...歌が嫌いだった」

「...うん」

「...だけどな。親父が「それで良いのか」って言ってから。...母親が自殺して初めてハッとしたんだ」

「...徹...」

「心が歌が好きなんだなって」


そして俺は華を見る。

すると華は「...そうなんだね」と返事をしてくれた。

俺は「ああ」と言いながら頬杖をつきながら外を見る。

華は「私。歌があって良かった」と言う。

それから俺の頬にキスをしてくる。


「えへへ」

「お前な...」

「...私...本当に歌があって良かった。歌が無かったら。貴方が歌をしてなかったら。私は何も知らなかった。お父さんにねだる事も無かっただろうから」

「...」


華は俺の手をまた握ってくる。

俺はその手を見ながら赤面する。

そして「全くお前は」と頬をかく。

すると華は寄り添って来た。


「...どんなに酷い状況でも私、覆すから」

「...もう覆っているとは思うけどな。嫌な方向に」

「...そうだね。...転校とかした方が良いのかな」

「分からない。こればっかりはな」

「...山吹が心配」

「...そうだな。彼女がどうなるか」


そんな言葉を言いながら俺達は離れあってからSNSで到着までニュースを観ていると...何か気になるものを見つけた。

学校裏サイトSNSコーナーとか書かれている。

そしてそこに俺はゾッとするものが書かれていた。

写真が投稿されているのに気が付いた。


「...」


投稿主のアドレス。

それはnari-nari-77だった。

アホみたいなアドレス。


しかしまさか?いやまさかな。

流石にこれには成宮は関係無いと思いたいが。

アイツなら即座に食いつきそうだし。


因みに写真だが。

それは他のクラスメイトが撮ったと思われる山吹さんの殴った時の写真だった。

どうしたものか。

通報するべきだろうな。

恐らくはこうなるとは思ったが...早すぎる。


「酷い」

「...そうだな。どうしようもない。このSNSのはびこった様なクソ社会だしな」

「...だけどどうにかならないのかな」

「...正直何も思い付かない」

「デジタルタトゥーだよねこれ」


俺は真剣な顔で考える。

すると電車は塩海駅に着いてしまった。

それから俺達は頷き合ってからそのまま塩海駅に降りる。

取り合えず今は楽しむか。

来てしまった限りは。


☆渦宮華(うずみやはな)サイド☆


予想通りとなってしまったかもしれない。

誰かがきっとこの事件をSNSに投稿するだろう。

そしたらやはり投稿されており。


多数の人達が賛同やら反発やらの嵐だった。

私はその様子を見ながら顎に手を添える。

そして砂浜にやって来る。


「良い景色だ」

「確かにね」

「...大丈夫か」

「...うん。彼女が可哀想だなって」

「...」


彼は裸足になってから海を蹴る。

そして海水が飛び散ってから煌びやかな景色を生み出した。

私はそれを見ながら考え込む。

すると「彼女は強いから」と言葉を発した。


「今助けるのが本当かどうかは分からない。でも彼女が助けを求めたら俺は助ける。お前が俺にしてくれたように」

「...徹...」

「お前も協力してくれ」

「...そうね。私も協力するよ」


そして徹は膝を曲げて砂浜に腰掛けた。

それから海をぼんやり見つめる。

徹は「もう失うのは十分だ」と呟いた。

自らへの言葉だろう。


「...今だけは休息して...また頑張ろうって思う」

「徹...」

「...助けるってのがこれ程辛いって思わなかった。知っていた筈なのに」

「...」


私は「だね」と一言返事をしてから砂浜に腰掛けた。

それから2人で暫く海を見る。

そして私は目を閉じて徹に寄り添った。

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