第5話 最善の選択とは

☆渦宮華(うずみやはな)サイド☆


私は...彼。

佐藤徹の人生を私の心に生き写ししている。

他人事の人生では無く。

私の人生と思って徹を見ている。

何故そうしているのか。

その理由は簡単だ。


私が徹の歌に助けられたから。


である。

彼は今となってはそんな面影も見られないが昔は歌をよく歌っていた。

そして私はその輝かしい彼の一ファンで有り。


彼を公園ライブとかで追い掛けていた。

だけどある日彼は歌うのを辞めてしまった。

だから私が歌い始めた。


そして彼が再起するのを祈っていた。

その中で怒りの情報が入った。

噂程度で彼の彼女が浮気したという噂が。


私はショッキングなその情報に苛立ちを覚え彼の教室に来た。

真相を確認する為に。

すると彼は陽キャに絡まれていた。


「...守らないとな」


そんな事を呟きながら私は教室を後にして帰って来る。

すると男子に絡まれた。

告白してきたのだ。

だけど私は「今はそんな気分じゃない」と断る。


「...」


私の身はあくまで彼のものだ。

その為に私は歌い続ける。

彼が蘇って来るまで私は仮初のヒーローで有り続ける。

思いながら私は教室に戻った。

陰口を叩かれていた。


「...ちっ」


そう舌打ちをしながら私は椅子に腰掛ける。

それから授業を受けた。

徹と絡んでこんな仕打ちを受けているが。

痛くもかゆくもない。



放課後になった。

私はギターケースを持ってからそのまま教室から後にしようとした時。

女子達に今度は絡まれた。

それから「アンタ生意気」と怒られる。


「...は?」

「告白してきた男の子に告白したかったんだよ!佳代子が!」

「...いや。告白したのは向こうだよ。勝手に」

「何それ!?そんな軽々しく!」

「いやいや...」


こんな事もしばしば。

私はそう思いながら歩き出す。

泣いている女子とかばう女子の間をすり抜ける様に。

それからウザったく私は歩き出すとコップに入った水をかけられた。


「毎回毎回!生意気だよ!」


私はその言葉を浴びせられながらその場から立ち去る。

どうしろっていうのだ?

そんな事を思いながら私はイライラしながら歩く。

それから階段を上がっていると徹が目の前に立っていた。


「大丈夫か?」

「え?あ、うん。大丈夫だよ」

「...何か濡れているけど...」

「あ。転んじゃっただけだから」


私は何か間違っているのか?

そんな言葉を思い浮かべながら私は徹を見る。

徹は「すまない。書類を運んでいてな」と笑みを浮かべる。

私は「一緒に手伝おうか」と聞くが。


「そうだな。じゃあ職員室前で待っていてくれ」


徹にそう言われたので私は徹に付いて行く。

それから歩く。

冷ややかな視線ばかり感じる。

女子達にも噂が広がっている様だ。

私のそっけない感じのとかの態度の事がだ。


「気にすんな」

「...徹?」

「...もうどうしようもないぐらいに歪んでいるからな」

「...うん。少し気になるけど気にはしない様にしてる」

「俺のせいで巻き込んでいる様な感じだな。すまない」

「私が勝手にしているだけ」


そんな会話をしながら歩く。

その中で私は足を止めた。

それから周りに人が居ない事を確認して聞いてみる。

「浮気されたの本当?」という感じでだ。

徹は大きく目を開いた。


「...誰から聞いたんだ」

「噂が広まっている」

「そういうろくでもない情報が広まるのも早いな。それはそうか。他校の可愛い子が浮気した、寝取られたって話だしな」

「違うよ。...全部徹のせいになってる」

「...」


「それはまあそうだな」と曖昧に返事をする徹。

「何それ...!?」と私は絶句する。

「そんなので良いの!?」と声を上げながらだ。

すると徹は「どうしようもない。相手が悪かったんだ」と複雑な顔をする。

そんなの我慢できない!


「...私は絶対に許さないよ。成宮を」

「...それは義妹も同じことを言っていた。だけどどうしようもないだろ」

「...どうしようもないなら私が仮にも悪魔になってやる。絶対に許さない」

「それは止めろ。...こんなつまらない事で悪人になるな」


つまらない...!!!!?

私は仮にも憧れた人が貶され言葉で嬲られている状態を放っておけと!?

怒りが爆発した。

それから私は徹の胸に手を添える。


「私は絶対に許せない。貴方は憧れの存在で...大切な友人なの!!!!!」

「...華?」

「私は...」


いや違う。

これは友人想いとかじゃない。

私は...好きだ。

徹が世界で一番大好きだ。

だからこそ。


「もういいよ。華。噂も大概だ。こうなった以上は...」


そこまで言った徹のネクタイを引っ張ってそのうるさい唇を私は自らの唇で塞いだ。

それからキスを交わす。

そして私は真っ赤になった顔で徹を見る。

徹は絶句して私を見ていた。


「ごちゃごちゃうるさいっての」

「...な、にをしている!!?!!」

「私はどうあっても徹が好き。世界で一番憧れたボーカルで恋人として好き。だから私は地獄に落ちてでも復讐してやる。共に落ちて閻魔に舌を切られてもね」

「...!?」


オレンジ色の夕日に照らされながら私は徹を見る。

そして赤くなった顔を平常に戻し。

そのまま私は決意した。

成宮を確実に地獄に落としてやるという事をだ。

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