点ミニッツ

賽藤点野

2024

January

2024.01.01──鉄の塔

 ギッシン。ギッシン。軋むような音を立てながら、私は錆び付いた階段を昇る。

 私が昇っているのは鉄の塔。この国で一番高い建物だ。

 目指しているのは塔の頂上。この国で一番高い場所だ。

 私の職業は竜射ち。この国で一番必要とされ、そして一番知られていない職業だ。

 竜はこの国に破壊をもたらす。それと同時に、その身に秘める物資はこの国に豊穣をもたらす。

 だから私のような竜射ちが必要とされる。竜のもたらす破壊が、竜のもたらす豊穣を超える前に、見晴らしの良い場所に昇り、竜を仕留めるのだ。

 時刻は早朝。塔の中は暗く何も見えない。

 階段を昇っていく内に、視界が開けていく。

 私は塔の天辺に辿り着く。天辺にはヒト一人が立って一杯になる程のスペースしかない。

 そこで私は竜を待つ。焦らず、怠けず、無心となって。

 冬空を裂く音が聴こえた。私は担いだ銃を構えた。

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