神の血に溺れる~Re:キャンパスライフPART5

出っぱなし

ワインの道を歩む先人たちの熱き魂 前編

『クレイジー・バイ・ネイチャー・コスモ レッド

 2019

 ミルトン ヴィンヤーズ 』


 ミルトンはニュージーランド(NZ)のビオディナミの先駆者にして世界的な自然派ワインのレジェンドであるが、詳しくは後編で語ろうと思う。


 今回のワインは、マルベックという赤品種とフランス南部コート・ロティで伝統的に混醸される赤品種シラーと白品種ヴィオニエをブレンドしたユニークなものだ。


 早速開けてみよう。


 ダークで血のような色合いであり、スパイスの効いた香りには濃厚な雰囲気を漂わせる。

 味わいはカカオの多いチョコレート、刺激的なスパイスであるが果実味もあり、渋みが控えめでなめらかで優しい飲み心地だ。

 生き生きとしているブドウの旨味が凝縮された1本だと思う。 

 

『義経焼』


 僅か60年程前に誕生したばかりであるが、山形県米沢市でソウルフードとして愛されている名物らしい。

 羊肉を秘伝の味噌ダレで焼き、共に炒められる野菜の甘味が羊肉の旨味を引き立てるという。

 さらに、あんじゃも南蛮という刺激的な辛さの薬味をトッピングして完成となる。


 早く作ってすぐに実食してみよう。


 羊肉独特のクセのある香りであるが、この味噌ダレと合わさることで肉の旨味に変わる不思議な化学反応を起こしている。

 あんじゃも南蛮も絡めてみる。


 クッ?!


 か、辛……いや、痛い。

 だが、この痛みがさらに味わいの奥深さを引き立てる。


 箸が止まらないが、ワインとタイミング良く合わせる。


 スパイシー感のあるワインが義経焼の味わいをさらに引き立て、あんじゃも南蛮の辛みが効いているからか、強烈な刺激がある義経焼をワインの果実味が和らげてくれる。

 そして、羊肉の濃厚な脂分がワインをさらに磨き上げるかのように味わい深くさせる。


 これは、実に面白い。

 

 ブドウから情熱を持って造られた魂のあるワインとソウルフードとなるまでに試行錯誤を繰り返された秘伝の味、この相性は抜群だった。

 

 熱き仕事が食文化を創り出すというのは、真理なのだろう。


 NZでの学生生活の終盤、このワインを造った心の師との出会いを思い出す。

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