第24話
「あ、梨野さん。もう見つかったの?早いな…。」
「たまたま見つけて。もしよかったら、一緒にはちみつ探すよ。ここ、広くてわかんないよね。」
「いいの?ありがとう、ジャムコーナーにあると思うんだけどそれ自体が見つからなくて…。」
2人で周囲を見回しながら歩いていると、パンを売っているコーナーを発見した。その隣にジャム類が置いてあり、はちみつも無事手に入れることができた。
「梨野さん、本当にありがとう!俺1人じゃ見つけられなかったよ、絶対。」
「そんなことないよ、見つかって良かったね。」
レジ前の通路に、買い物かごを手にした深瀬先輩の姿が見えた。深瀬先輩も私たちの姿に気づいたようで、小さく手を振ってくれた。
「梨野さんのおかげではちみつ見つかったんですよ!」
島田君が深瀬先輩にそう報告する。照れ臭い私は「一緒に探しただけです。」と付け加えた。
「そうなんだ。ここ広いから迷うよね、先にフロアマップでも共有しておけばよかったな。」
そうひとりごちる深瀬先輩に見とれていると、島田君に声をかけられた。
「そういえば梨野さん、なんか今日顔違うよね?いつもと印象が変わった気がする。」
「ああ、ちょっとだけ小春に教わってメイクしたんだ。変かな?」
「いや、明るい感じでいいと思うよ。似合ってる。」
ストレートな誉め言葉に照れてしまい顔が熱くなる。深瀬先輩も言われて気づいたのか、私の顔をまじまじ見てくる。そのせいでさらに顔が爆発しそうなほど熱くなった。
「力ちゃん、お待たせ!小春ちゃんとそこで合流したんだ~。」
鈴木先輩と小春が一緒に歩いてきた。2人の関心が私の顔からそちらに移り、ほっとする。
鈴木先輩が部費で会計を済ませ、各々のカバンに自分が担当したものを入れてからスーパーを後にする。自動ドアを出たところで、最後尾を歩いていた深瀬先輩に名前を呼ばれた。
「美恋ちゃん、ちょっといいかな?」
立ち止まって振り返ると、深瀬先輩が歩いてきて私の隣に並んだ。必然的に学校までの道のりを並んで歩く。
「はい、なんですか?」
深瀬先輩の顔を見て聞き返すと、言いよどむように口を動かした。何か言いづらいことだろうか。
「今日、メイクのこと一番に気づけなくてごめんね。俺、彼氏なのに。」
彼氏という言葉にまだ実感が湧かない私の心拍数は急に跳ね上がる。
「そんな…。ちょっとの変化ですし、島田君が気づいたのにびっくりしたくらいです。」
「今更だけど、かわいいよ。メイクしててもしてなくても、美恋ちゃんはとってもかわいいと思う。」
かみしめるように言う深瀬先輩の言葉に顔が熱くなる。消え入りそうな声でお礼を言うので精一杯だった。
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