第17話
私と違って深瀬先輩はいつも通りに見えた。そういうところもなんだか大人っぽく感じてドキドキしてしまう。
「力ちゃん、遅いよ~!早く部会始めよう!」
黒板前で座っている鈴木先輩が深瀬先輩を呼ぶ。深瀬先輩は私と島田君の間をすり抜けて鈴木先輩のもとへ向かった。
ほどなくして部会が始まったため、適当に近くの丸椅子に座る。
「来週はいよいよ実習をしていくよ!今回はホットケーキを作ります!」
「ホットケーキなら簡単だから1年生もそんなに気負わずにできるかなと思って。」
鈴木先輩と深瀬先輩の説明を聞きながら、私はワクワクしていた。いよいよ来週から調理部らしい活動が始まるんだ、そう思うとうずうずして早く来週になってほしいという願いが胸の内に生まれた。
「1年生がいるから改めて説明するけど、調理部の部費から材料費は出てるんだ。でもその分買い出しも部員でやるのね。今回は初めてだし1年生と私、あと副部長の力ちゃんで買い出し行こうと思うんだ。」
「ちなみに買い出し係は普段、くじ引きとかじゃんけんで決めてるよ。」
「いいですね!行きたいです!」
小春が声をあげる。島田君もいいっすねと言っていて乗り気なようだ。
「部活がない日の放課後に行くことが多いから、今日金曜日でしょ、来週の火曜日に行こうかなって思ってるんだけどどうかな?」
「賛成です!」
「俺も大丈夫です。」
「わ、私も行けます。」
1年生3人の回答を聞いた鈴木先輩は満足そうに笑って、「じゃあ、決定ね!今日と月曜はレシピの確認とアイディアを出しあおう!」と言った。
鈴木先輩があらかじめインターネットで見つけておいたらしいホットケーキの材料やレシピを深瀬先輩がきれいな字で黒板に書いていく。その様子を見ることもなしに見ていると、近くに座る2年生の先輩の会話がふと耳に入ってきた。
「深瀬先輩、相変わらず字超綺麗だよね。まじ完璧だわ。」
「それでいてあの見た目と性格とか最高だよね!」
小声で話してはいるけど、近くにいるせいか耳は会話を拾ってしまう。やっぱり深瀬先輩は女生徒からも人気があるらしい。そう実感すると、モヤモヤした気持ちが胸の内で広がった。
(別に付き合ってるからって、私だけの深瀬先輩じゃないのは百も承知だけど…。)
そう心の中で思いながらも、深瀬先輩の話で盛り上がっている先輩の姿を見るとやはり気分は晴れない。
(私って、心狭いのかな…)
そんなことを考えながら机に肘をついて深瀬先輩を見ていると、ふと目が合ってしまった。ドキッとしてそらすこともできずにいると、深瀬先輩はふわりと柔らかい笑みを浮かべてくれた。それだけでさっきまでの鬱々とした気分は上向きになっている自分がいる。
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