第13話
「そんなこと言っちゃったの!で、力ちゃんの反応は?」
「その後は珍しくあんまり話してくれなくて。でも帰り際はいつもの深瀬先輩でした。」
私の言葉を聞いた鈴木先輩は背もたれに体重をぐっとかけ、両腕を組んでなるほどと言わんばかりに数回うなずいた。
「力ちゃんは照れると黙るんだよ、だから美恋ちゃんのこと意識しちゃったんじゃないの?」
「そうだと嬉しいですけど…、引かれてたらと思うと怖いです…。」
私の弱気な発言に、鈴木先輩がにこっと笑った。
「自分のことを好いてくれているかもしれない後輩に引くような人に見える?」
「んん、深瀬先輩はそんな人じゃないと思いますけど…。」
「美恋ちゃんがそう思うならそうなんじゃない?考えすぎは良くないよ!」
そう言って鈴木先輩は椅子から立ち上がり、私と小春に手を振ってから食堂から出ていった。残された私たちも下校時刻が迫ってきたため食堂を後にする。
「鈴木先輩の言う通りじゃない?深瀬先輩の気持ちなんて聞かない限りわからないんだから、そこまで気にしなくても大丈夫だと思うよ。」
昇降口で上履きからスニーカーに履き替えながら小春が言う。2人に励まされ、私もうじうじ気にしていても仕方がない気がしてきた。
「そうかもね、もう言っちゃったことは帰ってこないし。」
「そうそう、前向きに考えていこうよ!」
小春が拳を作ってガッツポーズをする。私もそれを真似て拳を作り、2人でばかばかしくなって笑った。
(さすがに今日は会わないか…。)
駅のホームにも今乗っている電車内にも深瀬先輩の姿は見当たらない。今までが偶然だったのだろうし、そもそも今日は部活がないからもっと早い時間の電車に乗って帰った可能性も高い。さっきまで引かれていたらどうしようだなんて悩んでいた頭の中は、もう今日は姿を拝めないのかという落胆に変わっていた。
カバンの中からワイヤレスイヤホンを取り出し、耳に装着して音楽を聴いているといつの間にか最寄り駅に着いたため私は電車を降りた。ホームに立つとベンチにあった人影が動き、こちらに近づいてきた。何事かと思い、思わず近づいてくる人の顔を見ると私は驚きで息が止まりそうになった。
深瀬先輩が眉を下げて困ったように笑っている。先輩の最寄り駅はもっとずっと先だろう。こんな何もない田舎の駅に何か用でもあったのだろうか。
「なんで…」
「よかった、会えた…。ここでならゆっくり話せるかと思って。ストーカーみたいな真似してごめんね。」
理解が追い付かないけれど、「会えた」ということは深瀬先輩はここで私を待っていたということなのだろう。混乱する頭で私はとりあえず深瀬先輩と並んでベンチに座った。
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