13 子供っぽい
「 随分大樹様と打ち解けた様子だな。
・・・しかし、少々距離が近すぎて大樹様に失礼だぞ。
これから討伐を控えている聖女様にストレスが掛かるような事をすべきではないだろう。
・・アルベルト、お前の仕事は何だったかな? 」
ペラペラペラ〜と不自然な程早口で喋り出したレオンハルトに、アルベルトは酷く驚いた顔をしながらも、レオンハルトへまっすぐ視線を向ける。
「 ・・レオンハルト殿下の護衛です。 」
「 ・・よろしい。では、即刻私の後ろにつけ。そして離れるな。
分かったな? 」
アルベルトは腑に落ちない様な表情のまま、とりあえずレオンハルトの後ろに戻った。
そして俺が汗を掻きながら無言でレオンハルトへ視線を向けると、直ぐにフンッ!と顔を背けられてしまう。
「 ・・意外と子供っぽいヤツ。 」
多分自分の騎士が他の人間にくっつくのが嫌だったんだろうと思われる。
要は、僕のおもちゃあ〜げない!ーーーってヤツ。
ビービー泣きながら " あるべりゅとはボクのなのー! " と地団駄を踏むチビ助王子様を思い浮かべて、 密かにぷぷーーッ!と吹き出したーーーその時。
突然前方から一直線に進んでくる大量のモンスターの気配を感知したため、即座に俺はカチッと気持ちを切り替え、騎士達に向かって叫ぶ。
「 前方から生体反応多数!恐らくはモンスターだと思われる!
数は8!全員戦闘態勢!! 」
いつもの癖でそう指示を出すと、突然の事にギョッとしながらも流石は戦闘のプロ。
全員即座に剣を抜き構えた。
後ろをチラッと見るとレオンハルトの前にはアルベルトが剣を構えて立っているので、そっちは問題なさそうだ。
そして前から巨大なイノシシの様な動物・・モンスターと呼ばれる生物がちょうど8体現れ、その内の一体がこちらに向かって突進をしてきた。
それを迎え撃つのは前衛で剣を構える数十人の騎士達。
そいつらが総出で何とかその一撃目を受け止めたが、連続攻撃には耐えられそうにないため次の別個体の攻撃で多分崩される。
後方と即座に変わるか?と思いきや、何とそのまま第二撃も同じ様に受けるつもりらしく動く気配はなかった。
いやいや、まずは一度後ろの連中と変わり形勢を立て直して〜ーーー・・
「 次の攻撃が来たらそのまま後衛でモンスターを総攻撃しろ。 」
俺が次の指示を出す前に、後ろの方にいるレオンハルトが平然と最前衛に並ぶ騎士達を囮にする様な指示を出した。
「 ・・・・。 」
おし黙ったまま前方をみると、次の攻撃も無謀にも受けようと決意し身構える騎士達の勇ましい姿が・・
そして騎士達はそのまま飛ばされてお星様になってしまいました〜
めでたしめでたし〜・・
ーーでは困るので、直ぐに騎士達の背後に移動し彼らの襟元を持つと、そのままポイポイっと全員後方へ飛ばす。
そうして綺麗に開けた視界の先には、興奮状態でコチラを睨みつけてくる巨大イノシシモンスターがいて、ブフ〜っ!と台風の風の様な鼻息を勢いよく吹きかけてきた。
「 ーーなっ!!! 」
「 危ないっ!! 」
後ろにいる騎士達が慌てて叫んだが、俺は突進してくるイノシシモンスターの牙を掴みアッサリとその動きを止める。
「 ーーーボホッっ!!??? 」
驚いた様子をみせたモンスターはそのままグググッ・・と更に力を入れて押そうとしてきたが、残念ながらそれは無理。
焦ったモンスターが今度は慌てて体を引こうとしたので、逃さん!とばかりに、そのままヒョイっとその巨体を持ち上げ、大きく回して全頭纏めて吹き飛ばしてやった。
ポカーーン・・
キラッと輝くお星さまになってしまったモンスター達を見つめながら呆然と立ち尽くす騎士達を他所に、俺の視線はレオンハルトの方へ。
ーーーービクっ!!
俺と目が合った瞬間、レオンハルトは大きく震えた。
更に、俺がザッザッと近づいていくとあからさまに狼狽え始め「 な、なんだ! 」「 それ以上近づくな!無礼者!下がれ! 」と命令してきたが、完全に無視。
またお高い鼻をキュムッと摘んでやった。
「 こ〜らっ!人は大事にしろっていっただろ〜?
この悪ガキ。ーーメッ! 」
「 ーーーーななっ!!わ、悪ガキ・・?!それに・・またメッって・・
私はこの国の王子で本来その様なそんな無礼な発言はーー 」
「 無礼してほしくないならちゃんとやれってば。
俺は違う世界から拉致された被害者。無料で働くボランティア〜。
王子だろうが玉子だろうが、崇め奉ったって良いくらいだ。
とりあえずお前は黙って後ろで見学だからな〜。 」
レオンハルトはムカッ!としたらしいが・・何故か先程とは違って鼻を摘んでいる俺の手を振りほどこうとしない。
そのためソッ・・と外してやったのだが、何故か更にムッ!!とした表情をして「 貴様!何様のつもりだ!! 」と急に怒り出してしまう。
いや、手を外してやったのに・・??
頭の上に大きなハテナマークを出しながら俺が「 ・・せ、聖女様かな〜? 」と答えると、今度はグッ・・と言葉を詰まらせ黙り込む。
そんな主人にアルベルトは戸惑っているのかオロオロしていて、その様子がちょっと面白かった。
とりあえずレオンハルトはむっつりとして黙ってしまったためその場の指揮権は(勝手に)俺に。
そのまま騎士たちのペースと実力を観察しつつ、森の奥へと進んでいった。
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