第3話 S級パーティー

 ついに、ダンジョン調査攻略のクランを率いる上級冒険者パーティーが街に到着する日がやって来た。

 ギルドマスターと僕との打ち合わせでは、A級パーティーが来るはずだったのだが、なぜかS級パーティーが街に来ていた。

 街の人達と冒険者達は、予想以上の強者の来訪にお祭り騒ぎが更にヒートアップしている。

 なにしろ魔王討伐に失敗したものの、数少ないS級のトップクラスパーティーが現れたのである。

 リーダーは王国の王女でありながら、聖騎士パラディンのライオット姫。

 盾役となる守護者タンクのガルフ。

 遠距離射撃を受け持つ弓使アーチャーいのオスカー。

 魔術師ウィザードのニッキー。

 回復者ヒーラーのモナ。

 罠や鍵の解除を受け持つ盗賊シーフのタムタム。

 この6人がS級パーティー【ロイヤルワラント】のメンバーである。

 

 6人が冒険者ギルドに入ると、一目その姿を見ようとする街の人々や冒険者達で、ギルド前の通りがごった返していた。

「この様な辺鄙な街にお越しくださり、感謝申し上げる」

 ギルドマスターが頭を下げる。

「いえ、王国の民を救うのが我々冒険者の務め。礼など必要ありません」

 ライオット姫が涼やかな声で応えた。

「さっそくっすが、現在の状況とクランをいつ動かせるか、教えてもらえるっすか?」

 実務を取り仕切っている盗賊シーフのタムタムが質問した。

 6人の中では、一番小さくうら若い少女である。

 だが、その黒い瞳には秘められた決意が宿っていた。

「実際、ダンジョンに潜った奴に説明させようと思っていたのだが…まだ来ていないみたいだな。人混みや賑やかなのが苦手みたいでな」

 ギルドマスターの言い訳を聞いて、S級パーティーのメンバーに殺気が走った。

「いや、申し訳ない。だが報告書はここに用意してある」

 ギルドマスターは冷や汗を拭いながら、報告書を差し出した。

 タムタムは報告書をペラペラとめくると、

「中層フロアボスでオーク3体っすか…確かに初級ダンジョンの枠を逸脱しているっすね」

と言うと、アゴに手を当てて考え込む。

「クランの方は、すでにパーティーの選別は済んでいますのでいつでも出発可能です」

 ギルドマスターは、これ以上S級パーティーの機嫌を損ねない様に必死に取り繕っている。

「では、明日の朝からダンジョン近くにベースキャンプの設営をお願いします」

 ライオット姫がそう言うと、S級パーティーの6人は席を立ってギルドを後にした。

 

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