第5話 路地裏の魔道具店

熱血衛士さんの情報通りの場所に寂れたお店が有った。


「ここか…」


情報が無ければ多分見落としているだろう。誰かしらの紹介が無いと入れない店なのは疑いようもない。


「これは期待出来そうだな」

ボロボロの扉に手を掛けて中に入った。


店の外見に反して店内は整理されていてお客に見やすい配置になっているのに驚いた。

「思ったより普通だな‥‥」


しかし聞いていた程珍しい素材が無いので実は店の地下に秘密の場所が有るのでは?と思ったが店員も居ないので流石に勝手をするのはマズイだろうと思い大人しく店内を見回る事にした。


「へ~今はこうなってるのか!昔はもっと高価だったのにな!」


以外にも表側ショップ(勝手に命名)は面白かった。

博士の知識には無い保存方法や使用方法が有って中々勉強になった。


しかし一部の素材の扱が全く出来ていなかったのが気になった。

『レットローバーのツタ』は専用の保存液に付けてから冷暗所に保管が正解なのだが、なぜかカウンターの横にそのままぶら下がっていた。


勿論指摘したりはしないが魔道具師としては気になってしまうのは職業病だろう。




「まぁ一通り見たし‥‥帰るか」


初回ならこんなもんかと思いながら店を出ると何故か店の前に世紀末戦士達が居た。


「やっと出て来たか~よぉ坊や早速だが金おいてきな?」

「こいつ結構いい服ですぜアニキ?」

「今日は結構稼げたがコレは運が良いぜ!」


(おや?このお財布達は結構溜め込んだ後らしい。最後の締めに俺を選んだ訳か!いやぁ~熱血衛士さんありがとう!お陰で軍資金が出来たよ!)


「おい!何笑ってるんだよ!?早く金だせやぁ!」


ついつい嬉しさが顔に出てしまったらしい。緊張感が無かったかな?と思いつつ一応賊かどうか確認する事にした。


「ところで君達は盗賊さんかな?殺し屋さんかな?それとも財布かな?」

「ほぉ~舐めた口きくじゃねぇか!教えてやるよ!俺達は泣く子も黙るブラッドブラッド団だぁ!」


「YES!財布!!!じゃぁ遠慮なく!」


ピアノ線を生成しスポーンとアニキの首を飛ばす。


「「「「え?」」」」」


日中ならともかく薄暗くなった路地裏でピアノ線を目視するのは難しいだろう。

なので周囲の人にはいきなりアニキの首が飛んだ様に見えただろう。


時間を掛けるとお財布が逃走してしまうので今度は足を重点的に狙う。


「あがぁ!」

「ギャァァァァ!!!!足がぁ!!!!」


路地裏に盗賊達の悲鳴が響くなか、賊が付けている巾着を強奪し自分のポケットにねじ込む。


「ん~まぁ君達の稼いだお金は俺が有効利用してあげるから安心してね!あと知り合いの衛士さんに連絡しとくからすぐに助かるよ!」


「な!衛士だとぉ!」

「ざっけんなぁ!殺すぞガキ!!」

「あーやっぱり生きててもうるさいだけだからスポーンしようね~」


自分でも無慈悲だなと思いながら賊たちの首をスパーんとし表通りに向かった。



そしてその帰りにカワイ子ちゃんを腕にぶら下げた熱血衛士さんに偶然出くわしたので、盗賊をけしかけてくれたお礼に金貨―賊から貰った金貨―を渡し、別の賊の出現場所を聞いてから別れて孤児院に向かった。



翌日、シスターさんから裏通りで賊の死体が転がっていたので近づかない様に注意を受けた。


まぁ金に困ったらまたお金を卸しに行く予定なので、何度かは忠告を無視するけどね!



そんな事を思いつつ翌日またしてもあの魔道具屋に向かった。


「相変わらず店員が居ないし‥‥レッドローバーはダメになってるし‥‥お?」


結構珍しい物を見つけた。魔道具の定番『亜空間収納袋』だ。

文字通り袋の内側に亜空間を繋げ、荷物を亜空間に収納できる優れものなのだが天才と呼ばれたオーキス博士でも再現できない魔道具で博士が現役の時でも数が少なく大変貴重だった。


値段を確認するとやっぱり高額だった。


「あー手持ちだと若干足りないか‥‥」


正直欲しい。

出来れば解析し自分でも同じ効果を持った物を作りたい!だが手持ちのお金では足りないのでどうするか。


流石に二日連続で財布襲撃は身バレのリスクがあるので控えたいし余り外に出ているとシスターさんに監視されそうなので出来ればここで買っておきたい。


(まぁとりあえず値切ってみるか!)


「すんませーん!お代おいとくのでコレ貰ってきまーす!」

「‥‥待ちな」

「ッチやっぱり居たか」

「少し足りんぞ?」

「いやー手持ちがこれしか無くてね~」

「なら帰りな。ガキの来る場所じゃねーぞ?」

「ん~なら一つ知識を買ってくれ。有用だと思ったら不足分にしてくれ」

「まぁ良いだろう、で知識ってのは?」


食いついてくれたので早速レッドローバーの保存方法について話した。


「‥‥‥その知識は何処で手に入れた?」

「企業秘密だ」

「‥‥良いだろう、売ってやるよ」

「あざーっす!じゃそういう事で」


ダメ元での提案だったのだが‥‥思いの他上手く行った。


(ハハハハハハ!当時では当たり前だった知識がここでは金になるらしい!コレは良い事を知れたぜぇ!)



ルンルン気分で魔道具店を出る。

奥から何か聞こえた気がしたが今は一刻も早く部屋に戻り亜空間収納袋の解析をしたい!


急ぎ足で路地を曲がると目の前に真っ黒いローブを着た人とぶつかりそうになった。


「おっと!失礼」

「‥‥」


なんかこっちの事をじーっと眺めてくるので博士の知り合いか?とも思って声を掛けようとした矢先に何も言わずに踵を返し去って行くので「ん~?」とも思ったがまぁ良いかと思い直し帰還を急いだ。



「さてさて!コイツの解析にでも取り掛かりますか!」


帰還早々に自室―3畳ほどの個室―に引きこもり購入した亜空間収納袋の解析を初めていた。

解析と大袈裟に言ったがこの袋の構造自体は単純だ。只の袋に『空間魔法』が付与されているだけだからだ。


しかしこの『空間魔法』の付与が鬼門だ。

博士の時代の話しではあるが空間魔法を付与する事は出来ないとされ、実際博士も何度か挑戦したが失敗している。


(なのでこの亜空間収納袋はもっと太古に作られたと考えられているが‥‥コレを広めたのは異世界人だろうな!俺と言う実例が有る以上昔にも異世界から来た人物が居てもおかしくないしね)


勿論これはただの推測なので確証も何もないが彼は確信している。


(そうなると異世界転生で得た不思議な力で空間魔法を付与出来たに違いない!そして同じく異世界から来た俺なら付与出来る可能性が十分にある!)


「ハハハハハハ!これで俺は一生金に困らないぜぇ!」


バラ色の未来が待って居るぜぇ!



「ヒーハァァァァーーーーーー!!!」


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