第3話 人攫い

ブラッドパーティのアニキを追って森に入ったまでは良かったのだが‥‥


「もう無理…腹減った‥‥‥」


空腹に耐えきれずバタリと倒れてしまった。


「来世では…垂れパイのロリに囲まれたい!‥‥ガク」


垂れパイのロリって奇跡の様な女性だなと思いながら意識を手放した。



そして次に目覚めた時には手枷と足枷を嵌められて牢の様な場所に居た。


「ここは?」

「お!目が覚めたか?」

「あんたは?」

「俺はこの奴隷商に雇われた護衛だ」

「奴隷商?」

「あぁん?お前さん何も知らないのか‥‥どっかのお貴族様か?」



これは凄い!死んだと思ったら変態ロリコン野郎に生まれ変わり、行き倒れてたら奴隷商の商品になっていたと‥‥凄い因果律だ。


ともあれそのな事を馬鹿正直に目の前の怪訝そうな顔をした男に話した所で意味もないので適当に相槌を打っておく。


「まぁな」

「ハハハハハ!お前さんも運が無いな、あと少しで街の奴隷商で商品になるんだから大人しくしとけよ?」


やっぱ貴族様の子供だってよ!といいながら檻から離れる男を見送りながらふと気づいた!


(あれは街だ!ならここで暴れても一人で街に行ける…そして飯が食える!)


「ハハハハハハ!!!!素晴らしい因果律だ!」


ピアノ線を生成し木製の枷を切り裂き檻の鉄格子も切断しようとしたが、流石に切れなかった。


「ふむ。ピアノ線じゃ鉄格子は切れないか‥‥なら!超高圧ウォーターカッター!」


ピアノ線で斬れないなら切れるものを生成すればイイいじゃない!


指先から超高圧の水を生成しスパスパと檻の鉄格子を切った。


「おぉ~流石ウォーターカッター!豆腐の様にスパスパ切れるぜ!ひゃっほーい!」

「お、お前!何してんだ!?」


まぁここまで派手な音を立てれば護衛の男も気が付くだろう。さっきの男と新顔の3人の計4人が腰の剣を抜き半円形に囲む様に布陣した。


「おい!魔封じの枷は!?」

「首に付いてるだろ!?見えないのかよ!?」

「はぁ!?ならなんで檻から出れるんだよ!対魔法付与もしてるのに!?」


(ふむ?この首輪は魔法を封じる機能が有ったのか!ならこれ付けとけば被害者ですって事になりそうだし付けとこ)


「ところでおっさん達?ごはんまだ?」

「は、はぁ!?」

「おい!ガキ!一度しか言わないが檻に戻れ!そうすれば命だけは助けてやる!」

「えー?じゃぁ戻ったらごはんくれる?」

「‥‥いいだろう、ほら戻れ!」

「へーい(まぁ危険になってもピアノ線攻撃は可能だし檻も壊せたから安心してごはんを待としよう)」


俺はいそいそと檻に戻った。


(今一番欲しいのは食事だからな。わざわざ反抗しても仕方ないし)

「「「‥‥‥‥」」」


たった一言で檻に戻るオーキスを見て男達は言葉を失ったが、脅せば言う事を聞くことに安堵していた。



「さて今日のご飯はなにかな~?」

鼻歌を歌いながら待っているとさっきの男が泥の様なモノを持って来た。


「おら、飯だ食え!」

「‥‥‥」

「‥‥‥」

「おい」

「なんだ?」

「これが『食事』と申すか?」

「あぁん?早く食えよ!」


そっか~これはもう宣戦布告と同義だね!よし誅しよう。


「そっか~じゃぁさようならだね!来世では垂れパイロリ子ちゃんによろしくね!」


スパーンと目の前の男の首が飛び血が噴き出し頭からもろに掛かった。


「さて、次はまともな食事を期待しよう」


空腹で気が立ってるのか超腹が立つ。

なのでのこり3人が居る場所に行くと奴らは固まってこちらを見た。


「お、おい…ザックはどうした?」

「ザック?ああ、豚のエさを寄こしたから首を飛ばしたよ」

「「「‥‥」」」

「で?俺のごはんはまだ?」

「っち!もういいこいつはここで消せ!これ以上は問題になる!」


3人が腰の剣を抜き放ったのを見て溜息を付いた。


「はぁ~~~なんでお前たちは食事すらまともに出せないんだよ!この豚がぁ!」


怒りマックスとはこの事だろう。両手の指に生成したピアノ線を操り一人を見せしめに輪切りにする。

「あ‥‥」


どちゃっと音と共に転がる頭を見て腰を抜かす2人に最後のチャンスを与えた。


「最後のチャンスだ‥‥食い物をよこせ!」

「‥‥ない」

「は?」

「さっき食べたのが最後だ!」

「もうのこって…」


スパーン!スパーン!


キレイに飛んだ首を見ながらため息をついた。


「はぁ~~~~~パン一個でもくれたら大人しくしていたのに‥‥仕方ない荷物を漁って街に繰り出すか」


奴隷商の荷物を漁ると金貨が入った袋が2つ出て来た。


「これだけ有れば当面はしのげるか」


金貨の入った袋を腰に括り付けて遠くに見える街を目指して歩き出した。


★★★★★★★★


そしてフラフラになりながらもどうにか街の入り口に辿り着いた。


「お、おい!大丈夫か君!凄い血だ!」

「ひ、人攫いから…逃げて…きて‥‥これ、お金…ごはん‥‥ガク」


力尽きる前に腰のお金を渡して飯をくれ!と門番にお願いした所で行き倒れた。



「ん‥‥?」

次に目を覚まし辺りを見回すと簡素だが清潔感のある部屋だった。


「ここは?」


体を起こすとさっきまで着ていた血まみれの服ではなく簡素で清潔な服に変わっていてベッドサイドのテーブルには外れた首輪があった。


手に取って眺めていると不思議と首輪の構造が頭の中に浮かんできた。


「成るほどね~装着者の魔力を吸収して拘束を強化するのと同時に不快感を与えて魔法を発動を阻害する訳か。まぁ理に叶った効果だが‥‥首が痒くなる程度で妨害になるのか?」


あと瞬間的に吸収量以上の魔力を放出すれば壊れそうな気がするし…思った以上に改良の余地があるなと思っていると誰かが訪ねて来た。


「失礼しま…気が付きましたか。お加減は如何ですか?」

「一応大丈夫そうですね」


訪れたのは黒色の修道服に身を包んだシスターさんだ。


「それは良かったです‥‥それで起きて早々ですが衛士の方がお話を聞きたいそうなのですが…」

「その前に何か食べさせてください。空腹で倒れそうです」

「判りました。食事をお持ちしますので衛士の方には食事の後でお話をする旨をお伝えしますね」


そう言うとシスター服を着たシスターさんが部屋を出て行く。


(ようやく!念願の食事だぁ~!!!!!棺桶から這い出てから殺し屋と人攫いに絡まれて‥‥あー今思い出してもあの人攫いは頭に来るな)


微妙にイライラしているとパンと暖かいスープを持って先程のシスターさんが戻って来た。


「どうぞ、質素ですが」

「わぁ!!…っう!(あ、ダメだ。感動で涙が!)

「だ、大丈夫ですか!?」

「大丈夫、まともな食事にありつけるのも暫く振りで…感動で涙が!」

「その、こんな質素な食事でも喜んで頂けて嬉しいす」


ちょっとだけ嬉しそうな顔のシスターさんに改めお礼を言い、湯気の立つスープを口に運ぶ。


「う、美味い!」

塩気は薄いが素材のうま味がしっかりと感じられて非常に美味い。

パンは気持ち硬いのでスープに浸しながら食べるとこれまた違った味わいで美味い。


気が付くともう無くなっていてもっと食べたいが取り合えず今は食事にありつけただけでも感謝しておこう。


「シスターさん。美味しい食事をありがとうございます。このご恩は必ず!」

「頭を上げて下さい、怪我人を助けるのが教会に努めるシスターの役割ですから」

「それでも、この恩はどこかで返しますので!」


お互いに譲らず妙な感じになったが、ひたすらに折れないこちらの態度に諦めたのか今度孤児院の炊き出しを手伝う事に決まった。


「それでは後ほど衛士様とのお話がありますので」

「ええ、判りました」

「では失礼しますね」


食べ終えた食器を持って退出するシスターさんのすぐ後に金属製の鎧を付けた男が入って来た。


「目が覚めたか、傷の具合は大丈夫か?」

「ええ、お陰様で大事には至りませんでした。素早い処置をありがとうございます衛士様」


(フフフ!これでも中身はサラリーマンだぜ?お客様応対の経験も有るんだ!これぐらいは朝飯前さ!)


「お、おう。小さいのにしっかりしてるのな?…おっとそうだった。少し話しを聞きたいんだが良いか?」

「ハイ、私でお答え出来るのでしたらお答えします」

「じゃぁまず‥‥」


こうして職務質問が始まった。

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