さくっとSS

あかいあとり

それはサモエド

 主人は私をポメと呼ぶ。弟分を率いる立派な番犬だ。スーツという布切れを纏った主人の出陣を見守って、今日も私は窓辺の日向で丸くなる。

 やかましい足音に片目を開けば、同居猫どもが毛を逆立て、まさに真隣を駆け抜けていくところであった。ため息をついて、私はひと声、宙に呼びかける。ハブられてばかりの鈍臭い新入りに、群れの節義を教えるためだ。

 のそのそとやってきたのんびり屋は、ぼふりと嬉しそうに尻尾を振って私を舐める。程度を弁えろと言っているのに、いつまで経っても覚えやしない。噛み真似をして叱りつければ、図体ばかり大きな後輩は、しゅんと頭を下げて丸くなった。ついこの前まで揃いの綿毛じみた見た目だったのに、いつの間にかこいつは見上げるほどの巨体になった。弟分のくせに生意気だ。

 白い巨体を前足でつつけば、後輩は困ったようにぺたりと床に頭をつけた。同じ高さになった目線に満足し、私は新入りの腹に倒れ込む。二匹で抱き合うように丸くなって間もなく、でかい寝息が聞こえてきた。頭を乗せる位置を変えると、むずがるように抱き寄せられる。いつまで経っても甘えたなこの新入りが、私は嫌いではない。

 思うところはあれど、この世界できっと、ただ二匹だけの同種の兄弟分である。仲良くしてやろうではないか。ふすんと息を吐いて、私はまどろみに身を任せた。

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