私の自由帳/自己満足

青燈ユウマ@低浮上

第1話 カフカの『変身』を読んだ感想

 

 面白みのない文章です。

 カフカの『変身』のネタバレ含みます。

 それでも良ければ。


***


 高校時代、進学校に通っていた私は様々な本を読んでいた。

 『レ・ミゼラブル』や、『罪と罰』、『車輪の下』が印象に残っている。

  

 色んな本を読んでいるうちに、カフカの『変身』という本に出会った。この小説は私の人生の中で一番印象に残っている。

 蛇足だが、大学に進学すると学術書ばかり読むようになり小説はほとんど読まなくなってしまった。


 今朝、カフカの『変身』について急に思い出したので感想を吐き出したくなった。なるたけネタバレが少なくなるよう気をつけながら書いていきたい。


 この『変身』という小説は様々な解釈ができ、非常に考察しがいのある作品として有名である。

 そんな作品を高校生の私が読んで、抱いた感想は「救済とは何であろうか?」である。

 この作品の主人公は家族を養うために懸命に働いている。しかし、経済的に支えられている主人公の家族は、その余裕から、自立する意思を失い夢見がちになっている。


 主人公は経済的に家族を支えている、つまり「助けている」筈なのだが、同時に家族から「自立する意欲を奪っている」と見ることもできる。では果たして、主人公の行動は本当に家族を「助けている」ことになっているのだろうか。


 当時、高校生の私はこの問題に頭を悩ました。そして、「バランスが大事なのではないか」という結論に至る。

 助けることは大事だが、助けすぎては自立を阻害することに繋がる。水を与えすぎると植物は根腐れする。自立を妨げない程度に助けることが必要である、と。

 まぁ、今考えれば至極当然のことであるが、当時は一つの結論を導くことができた自分に酔いしれた。


 そして、数年後、大学に入った。

 哲学の授業を受けたとき、初回の授業で教授が話したことが、『変身』の記憶を呼び起こした。

 その授業では、哲学とは対立する意見を突き詰めていき、両論の功罪を洗い出した上で最適な着地点を探すのが目標であると学んだ。最初から「対立する意見の折衷案を出す」というのは安易であり、突き詰めていかなければ本当の問題点は見えてこないと、そう教授は話された。


 なるほど、何故学者、特に哲学者があれほど頑なに持論に固執し妥協をしない姿勢なのか、その理由が分かった。それが必要であり、むしろそうでなければならないのだ。

 であるならば、『変身』も主人公の行為が家族を「助けている」という見方と、「自立を阻害している」という見方で徹底的に討論させ、功罪を全て洗い出さなければ真の意味での「救済とは何か」が見えてこないであろうと考えた。


 そして、それをやってみたいと思ったのだが、その直後、ロールズの『正義論』を読み始めてしまったため、『変身』の読み返しの機会を失ってしまい今に至る。

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