第7話

まず、何処から話すのが正解なのか。

 滉は私がカフェに入るなり、上機嫌で迎えてくれた。

 それが、逆に申し訳なかった。

 どう切り出そう。そう考えていると、滉から話を切り出した。

「太田、こっちに帰ってきたんだな。」

 思わず、顔をあげて、滉の顔を見る。

 なんで、急にその事を話し出したの。

 滉は空気を察するのが、苦手なはずじゃん。

「志木蓮。知ってるだろ?俺の仕事の後輩。」

 知ってる。

 滉は、私が頷くのを見ると話を続けた。

「志木と太田がバイト仲間らしくて、この前俺の話になったらしいんだ。あいつ、いつこっちに帰って来たんだろうな。」

 莉愛は、私と別れてすぐに引っ越した。

 というか、お父さんに無理矢理引っ越された。

 莉愛のお父さんは私と莉愛が付き合ってる事を良く思ってなくて、その事を知った途端すぐに莉愛を引っ越させようとしたらしい。でも、それは可哀想だからって莉愛のお母さんが止めたらしい。でも、卒業式が終わった途端どこかに行ってしまった。それ以降、昨日まで連絡は無かった。

「あのね、莉愛と私、付き合ってたの」

 滉の目は一瞬見開かれたけど、すぐに続けてとジェスチャーした。

 滉の優しさに甘えてしまう。その優しさがしみる。

「ごめん。今まで、ずっと黙ってて。」

 滉は首を横に数回振り、ほほ笑む。

 その顔はなんて形容したらいいんだろう。わからない。

 言ったら、言ったで、どうすればいいかわからなくなっちゃった。

「あの、あの、ほんとにごめん」

爪が手に食い込むほど、握りしめた私の手を滉がそっと包む。

「謝らなくて、いいよ。むしろ、言ってくれてありがとう。」

 滉は優しいからそう言ってくれるけど、申し訳なさすぎて今すぐ帰りたかった。

 いつもは、ちょうどいい甘さのコーヒーフロートが今日は甘すぎた。

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