第40話 翔に金属バット
「キャー!!相良くーん!!」
「頑張って〜!!」
「私を甲子園に連れてって〜!!」
ブルペンで最終調整を終え、ゆっくりとマウンドへ歩き出すと主に一年生女子から黄色い声援が飛んでくる。
「サンキュ」
「キャァァァ!!」
「サインちょうだい〜!!」
「相良くん、今日イーグルスのスカウト来てるよ〜!!」
「え?」
軽く手を上げ応えると更に盛り上がる一年生達。
俺は思わず振り返り、スカウトを探す。
「へぇあんたか」
スカウトは俺が探していることに気づくと軽く手を上げた。
俺はニヤつく。
「輝、一番柚葉にもフルスロットルだ」
「え?有志先輩相手にスタミナ取っとくんじゃねぇのかよ」
「ばーか、スカウト来てんだ。
俺を未来のドラ1だと思わせなきゃいけねぇんだよ」
「了解」
輝は最初こそ驚いた顔をするが直ぐにニヤつく。
言い忘れていたが輝はボーイズNo.1捕手として名を馳せたすげぇやつだ。
「一番、キャッチャー、柊さん」
「柚葉、やろうぜ」
心が躍り狂う。
思い出すなぁ、リトル時代の栄光。
────────────────────
「手加減なし、そう来なくちゃ」
「ホント完璧だよね、翔のフォームは」
力を抜き構えると翔がゆっくりと振りかぶる。
アタシは翔より凄い投手を見たことがない。
去年、有志先輩が甲子園優勝投手になったけれど、アタシの目には去年史上初の出場した全大会無敗を達成した翔の方が全て上に見えた。
ちなみにこの無敗記録はリトル時代から継続中で翔は負けを経験していない。
「相良!相良!!」
「やばい!やばすぎる!」
「は!?最初から154!?」
「これ、160でちゃうんじゃない?」
完璧な体重移動からリリースされたボールはど真ん中に炸裂。
後ろの観客が最初から決まっていたかのように心を奪われる。
そう、これが翔が無敗記録を達成出来た理由の一つ。
翔が投げると球場全体が翔の味方になってしまう。
そして、翔はこの相良コールを聞くと...
「157!!」
「やべぇ!まじやべぇ!こんなんドラ1どころか高校卒業後即メジャーやろ!」
パフォーマンスを劇的に進化させる。
当然、アタシは手も足も出ない。
「ゴーストフォーク!?」
ストレートと変わらない速さ、軌道で来て、手元でとんでもない落差で落ち、消える、翔の天下の宝刀、ゴーストフォーク。
球速は...
「148!!」
「滉大やんけ!」
大盛り上がりの男子達。
当然、アタシは三振なのでベンチへ帰る。
「1番ピッチャー相良くん。」
そして、1回裏。
翔が打席に入るとまた相良コールが自然発生。
まぁ、ここまでくれば言わなくてもわかるよね。
「バッティングはジャッジ」
「だから言ったろ、あれだけ相良には金属持たせるなと」
「そうですけど、あんなに飛ぶと思わないじゃないですか...」
ボールが破裂したのかと錯覚するほどの金属音が響き渡り、目にも止まらぬ速さで防球ネットを超えて行った打球が学校の最上階にある教室の窓ガラスを粉砕した。
先生たちが頭を抱える。
「ナイバッチ」
「サンキュ」
アタシは翔と思わずグータッチ。
球技大会だし、これくらいは許させるだろう。
「相良くん、君は金属を使ってはダメだ」
「はーい」
そして、この勢いに最後まで抗えなかったアタシ達は最も簡単にパーフェクトを食らった。
ちなみに翔は5イニングを放って、15奪三振2ホーマー、3打点。
最速は157km/h
ガラスは1枚ではなく、2枚割って魅せた。
当然、翔は校長先生に金属バットを没収される。
翔に金属バットは大谷にフルシーズン金属バットで出ていいよと言うようなもんだから。
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