第29話 見られないけど、悩む

「ただいま〜」

「おかえり、あれ?一緒じゃないの?」


靴を脱いでいるとおそらく夜ご飯の準備をしていたであろう、エプロン姿のママが首を傾げる。


「誰と?」

「琴菜ちゃん」

「え?会わなかったけど?」

「嘘」


首を傾げ返すとママの顔が段々に青ざめて行く。


「パパ!琴菜ちゃん誘拐されちやったかも!」

「何!?英玲奈!どういうことだ!」

「誘拐!?」


姉貴の容姿はかなり優れており、もう部活もやっていないから門限もかなり厳しくなっている。

両親がパニくるのも無理はない。


「おっと!危ない、おかえり英玲奈」

「琴菜!どこ行ってたの!」

「ママに迎えに行って〜って言われたけど、めんどくさかったから庭で遊んでた」

「あのねぇ...」


探しに行こうと玄関のドアを勢いよく開けると何やらニヤニヤする姉貴が立っていた。

私達は取り敢えずほっと胸を撫で下ろす。

ーー良かったぁ


「英玲奈〜、今日は翔くんとどうだった?」

「いつも通り」


手を洗っているとギュッと抱きしめてくる姉貴。

この質問は中学に上がってから欠かさず聞かれる。


「そっかぁ、今度またお家連れて来てよ」

「今度ね」


これも毎日。

姉貴が高等部にいた頃は学校でも言われてすんごくうざかった。


「その時はもう少し良い下着履こうね、見られても恥ずかしくないように」

「やめてよ!」

「心配なの」

「そんな筋合いない!」

「お姉ちゃんにはあるんだなぁ、これが」


スパッツを下され、ニヤつかれる。

というか、良い下着だろうが翔に見られるのは無理だ。

絶対柚葉先輩やあやせ先輩と比べられる。

あの二人にはスタイル、センスじゃ勝てない。


「二人ともお風呂入っちゃいなー」

「はーい」

「はい」


子供みたいに手を上げる姉貴。

私は小さく頷き、ショーツを脱ぎ捨てた。


「中学生だよ、これじゃ」

「うるさい!」


脱ぎ捨てたショーツを見た姉貴は目を細め、ため息を吐く。

私はひったくり、洗濯カゴに投げ入れる。


「今度のお休み一緒に選びに行こうね」

「うん」


うるさいとは言ったけれど、私だって可愛いかったり、セクシーなやつには興味があるし、そういうことになった時にはそういうのを着てなきゃいけないってこともわかっている。

でも、今まで履いたことも選んだこともないからいざ、ランジェリーショップに行くとなると勇気が出ない。

だから、正直姉貴の提案は嬉しい。


「にしても、こんな下着、私は小学生までだったなぁ」

「はいはい!全部任せます!」

「セクシーなのにしようね」

「可愛いで」

「おけ」


セクシーなのよりまずは可愛いくて少しセクシーくらいが良い。

なんか、履いてたら緊張しそうだし。


「他の子はどんなの履いてるの?」

「カイは同じ」

「女子力皆無コンビ!」

「失礼!」


カイもマジでいつも私と似たような下着だ。


「こういうのどう?」

「良いと思う」


自分のを脱ぎ、合わせてくる姉貴。

紫のレースはえっちすぎる気がするが取り敢えず頷く。


「大人すぎかな、英玲奈ちゃんまだ15だし」

「そうなの?」

「まだしないでしょ?」

「うん」


紫のレースは大人すぎるのか、なるほど。


「翔、どんなの好きなんだろ」


お風呂から上がって、スマホでショーツ、人気とググってみるとかなり際どいやつとか、ちょっと大人っぽいやつが出てくる。

大体ブラとセット。

こういうのって、誰の好みに合わせるんだろう?

ほとんどは自分だろうけど、好きな人に合わせることもあるかな?

ーー黄色とか、緑かな、私は。

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