第24話 フルスロットル
「やば、流石にスタミナ切れそう」
「アタシ達だけじゃねぇけどな」
膝に手をつき、肩で息する英玲奈と海は同じく膝に手をつき、肩で息する花火と玲に視線を合わせる。
女バスのレギュラー候補筆頭と言っても玲央や俺にフルで合わせるだけの体力は持ち合わせていないみたいだ。
俺はこの後、野球の決勝で完封しなきゃならないからそこも計算してやってるが計算すんのやめてもいいかもな。
「メンバーチェンジ」
「先生、これで」
「オッケー」
俺はレナ先生に伝えた。
メンバーは以下のように変わる
PF
相良翔
SF(スモールフォワード)
椎葉英玲奈→一之瀬絵里
PG(ポイントガード)
水野海→浅野
C(センター)
浅野→水野海
SG(シューティングガード)
陽浦楓→椎葉英玲奈
「英玲奈と海は守りに徹しろ」
「オッケー、助かる」
「了解」
2人は小さく頷き、後ろへ下がっていく。
「絵里、浅野、俺に出しとけ」
「あぁ」
「かしこまりー!」
今からフルスロットルでプレーする。
スコアは68ー70でリードを許しているが俺はオールラウンダーだ。
ーーさぁ、始めようか、超俺tueee展開。
「翔くん!」
「ナイスパス」
「はっや!!」
「相良やべぇ!」
「何あれ、やば!」
絵里から受け取った俺は勢いよく地面を蹴り、花火と玲を抜き去った。
花火と玲は反応すら出来ず、恐怖に顔を歪ませ、振り変えることしか出来ない。
当然、度肝を抜かれた観客は湧く。
「え...?」
「そこから...?」
スリーポイントラインのかなり後ろから放って、ディフェンスに戻るため背を向けると花火と玲に加え、英玲奈、海が声を漏らす。
「玲央、次は仕掛けに来いよ」
71ー70。
俺はニヤけ、玲央に指で伝える。
観客は静まり返る。
「花火、俺によこせ」
「わかった...、ッ!カイ!」
「余裕ぶってんじゃねぇよ!」
「ほら、決めろ!翔!」
花火が玲央に出したパスは驚くほど緩かった。
海が簡単にカットし、後ろの俺に出す。
「あぁ」
もう一度、超高弾道スリー。
74ー70。
「俺1人でいい」
疲れ切ってる玲と花火じゃ、自分の足を引っ張ると判断したんだろう。
玲央は2人を切り、突っ込んで来る。
「絵里、浅野、リバウンド、玲央は俺に任せろ」
英玲奈、海を綺麗に抜き去った玲央は俺を睨む。
勝負しろと。
「だと思った、でもそれ無理だろ」
玲央の性格上、同じようにスリーを打ってくると確信していた。
だから、俺は動かない。
打ちたいなら打てばいい。
「えりち!」
配慮した言い方をしよう。
惜しくもリングに邪魔されたボールは絵里の元へバウンドした。
キャッチした絵里は俺を探すが俺はもうゴールに向かって走っているから他の誰かに出すしかない。
英玲奈が叫んだ。
「翔!」
「ナイス」
ほんの少しだけ、ドリブルで運び、俺に出す英玲奈。
「アンクルブレイク」
「ッ!」
ディフェンスに入った花火と玲が崩れ落ちる。
「飛ぶなバカ...」
ドリブルで運び、ゴール前で飛び上がると七瀬が思い切りジャンプした。
俺はダンクをキャンセルし、ボールを軽く投げレイアップに切り替える。
このままダンクをしてしまえば、ぶつかって、七瀬は吹っ飛んでしまう。
吹っ飛べば大怪我どころでは済まない。
「あっぶな」
76ー70。
ギリギリ当たらなかったからよかった。
避けようとして尻餅はついてるけど
「あと5分手加減してくんない?」
「するか、それより大丈夫か?」
「うん、ありがと」
「よかった」
俺の手を取り、立ち上がると七瀬はニッと微笑む。
「ごめん、もう限界!」
「私も!」
花火と玲が声を張り上げ、勢いよく腰を下ろす。
俺のアンクルブレイクがトドメだったらしい。
「メンバーチェンジ」
「花火、よく頑張った!」
「玲、ナイスプレー!」
担任が交代を告げると2人はタオルを頭からかけられ、肩を貸してもらいながら下がっていく。
スタンドから拍手が送られる。
「花火!玲!
すまん!俺がもっと動けてりゃ、お前らに負担かけなくてすんだ!」
玲央は本当にキャプテンシーがあって、良いヤツなんだよな。
こいつ、この試合50得点だぜ?
こんだけ活躍して、仲間に謝れるやついるか?
中々いねぇよ。
「相良!相良!相良!!」
試合終了。
俺と玲央が2人きりでやり合う形になって、88ー80。
スタンドからの声援に俺は拳を上げて応えた。
────────────────────
「こりゃ、二年より一年のが怖いね、あやせ」
「やったぁ、翔くんと遊べる〜」
「ダメだこりゃ」
ニヤニヤするあやせを見て、頭を抱える新凪。
ーー柚葉ちゃん達よりしょーくん達とやりたいなぁ、じゃんけん負けないとなぁ
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