第12話 異能の双子と神の宝 4
真夏だというのに、うすら寒い日が続いていた。
もうずっと長雨が続いているせいだ。
国のさかいでは小さな川が氾濫して田や畑を水浸しにし、民のあばら家を押流している。
家を失い、物乞いをするしかない者、飢えて倒れる者も多く、そのうえ質の悪い病まで流行り始めたと聞く。
宰相は苦い顔をして家路へと馬を進めていた。
ここのところ、村々では妙な唄が流行っているらしい。
祈祷も呪いも天に逆らえはしないものを。
宰相は神にすがるより人として出来る限り民を救うことが先だと考えていた。
「急ぎ、仮小屋を建て粥を施し、病人は家族と離すのだ。」
今は死人が増えることを防がねば。
宰相は多忙を極めた。
この災いへの手立てを間違えば、本当に王の徳を疑われるぞ。
その夜、宰相の部屋に黒い訪問者があった。
「
「
「
「まさか、ヤマト帝国を倒すつもりではなかろうな?この帝国のために我らが払った犠牲を忘れたのか」宰相と
「英雄、
しかし、あのとき日の神の国の勢いは出雲までも手に入れて東を求めて進み、いくら
長い目でみれば、この道しかなかったと、
「では、なぜだ」
「あの和睦のときに、
「それで?」男の腹はなかなか読めない。宰相はこの男が何の土産もなくここを訪れるはずがないことを知っていた。交渉には長けた男だ。
「あれはたいそう霊力の強い神具です。誰もが持っておられるものではありません。それこそ選ばれし以外の者が持っていると災いが起こります」
「と、いう話に持っていき、神宝を取り戻せというのだな。たしかに
「はい、三輪山の神に降りていただきます」
「なんだと?」
「三輪山の神を降ろせる巫女がおります」
「その巫女が三輪山の神にかわり神託を申すのだな。
わかった。急ぎ、
「
「うむ。
「
「なに、
「はい、人並み外れて武芸に長けたご子息、そして
「うまだあれは成人したばかりだが、、、まぁいい。言いたいことはわかった。それだけか?」
「もうひとつ」
「残りの宝のなかに
「なに、
「それはわたしにもわかりませぬ。ただ、神宝は持ち主を知っているとも申します。隠さず申しましょう。我らは
「そうか、お前たちは
「お聞き届けいただけるか」
「うむ。
「我らと、
「いまはもう、
「そうでしょうか。滅びた国の記録は表の歴史から消し去られても、形を変えて残り続け、時代の綻びからいつか芽吹くもの。我らはそうやって影となってこの国に足跡を刻みたいのです」そう言って男は闇の中に消えていった。
黒い男が去った後も、宰相はひとり夜のなか、音もなく降り続ける雨の先を眺めていた。
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