第7話 ゆるさない

彦徳は本屋に来ていた。


漫画や小説、参考書に文房具まで色々揃っている

この店が好きだった。


漫画は立ち読みできないが、小説は読むことができる。彦徳は目についた小説を手に取りパラパラとめくってみた。


「うそつき鳥はいつまでも瞬く」

タイトルからは何のジャンルか分からなかったが、

どうやら恋愛とタイムリープ系が混じった様な内容みたいだった。


十数ページ読んだ後、手に持っていた購入予定の参考書の上に置き、レジへと向かった。


本にカバーをかけてもらい、彦徳は帰ったら早速読んでみようと考えた。面白かったらいいな。


店を出る手前の棚にボールペンやシャープペンシルのコーナーがあった。


0.3mmから0.5mm辺りのボールペンをとって試し書き用の紙に「の」と書いては戻す。

気に入ったボールペンはなかった。


帰ろうと思った時、無数の試し書きの中に


「ゆるさない」


という文字があった。彦徳は適当なボールペンをとり、その文字の上に二重線を引いた。


店を出て、自転車に乗り自宅へ帰っていると、

交差点付近に看板が立っているのに気がついた。


「目撃者を探しています。令和◯年◯月◯日◯時◯分ころ、この場所で車と歩行者のひき逃げ事故が発生しました。この事故を目撃された方は、左記までご連絡下さい。」


彦徳はふと思った。

試し書きを始めた時、あの文字はあっただろうか、と。



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