第3話 はーい

彦徳は智と一緒にコンビニへ向かっていた。


冬休みもそろそろ終わるし、少しばかり夜更かしをしても

罰は当たらないだろう。


冬の夜の雰囲気はとても良い。

空気が澄んでいて、息が白く、羽織るダウンもひっくるめて好きだ。


いつも行っているコンビニに着くと、学生らしくポテトチップスや

チョコや肉まん等を10分程で買い、店を出た。


店を出るやいなや、徳彦は袋から肉まんを取り出し、智に渡す。

歩きながら食べる肉まんは格別だ。

彦徳は強烈にそう思った。


コンビニの明かりがやや弱くなる距離で、智がビクッと止まった。

それにつられて彦徳も驚く。


「どしたん?」


「いや、じいさんが座ってるからさ」


確かに70代位のおじいさんが、道路と歩道の間の縁石に座っている。

冬の寒い時期に、一人で、しかも何するでもなく、ただ一人でぼーっとしている。


「じいさん、寒いでしょ、大丈夫?」


智が声をかける。

彦徳はよく声をかけられるな、と思った。


「はーい」


おじいさんは言った。間の抜けた声だった。


「あ、そう」


智は行こうぜ、と彦徳の肩を押し、歩き出した。


家に着くと早速コンビニで買ったポテトチップスを取り出し、

ゲームの用意をする。


智がボソッと言った。


「なぁ、さっきのじいさんの声、なんか俺の声に似てなかった?」


彦徳は智の目をじっと見た。

さっきのおじいさんと全く同じ声だった。

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