第19話「林檎の衝動」

ーー…さぁ、探すか。

だいぶ放置してしまった…。

家出から7日以上か。

片手に魂を握り、眼を閉じる。 

ーーゆっくり眼を開けると、そこにはたぶん横横たわる自分…?向かい合う。

でも、顔は…黒い霧で見えない。

黒い霧の重なった時、見える情景…。

ーーとりあえず、恋人の家から見てみよう。

誰もいない、ここは⁇

鏡が置いてある。

衣装部屋⁇

もちろんいない。

眠ってるのか…⁇

いない。

出歩く時間でもないし。

ここもいない。

もう少し探させよう…。


ーーえ⁈

友達の母親の家⁇

ーーすっごい逃げてる‼︎

え⁈…納屋に⁈

ーー監禁されてる…。

友達の母親と老婆は軟禁されてる…。

へぇ。…監禁。

ーー別に相手は誰でもいいや。

早くなんとかないと…。

このままでは「役立たず」の烙印を押されてしまう。


 ソレイュ。ここから南に岩壁に家が建ってる所ってどこがある?

「次の仕事そこなのか?」

 あぁ、たぶん。

「じゃあ、ヴィオラとかだな〜!とっても遠くて、とっても小さな村だ!!」

汽車で半日。

戻ってくるのに、2日はかかるなぁ!」

ーー…雰囲気で遠そうとは思ってたけど、そんなに遠いのか…。

 紙とペン貸して。…これ、頼んで来た奴に渡しといて。

 じゃ、行ってくる。

「おう!怪我すんなよ〜!」

ーー絶対、しない。

…面倒くさいなぁ。

道案内はいるし。

汽車より速い自信はある。

けど…。なんかなぁ…。

面倒くさい仕事受けたかなぁ。

ーーでもなぁ。

…ソレイュの知り合いだしなぁ。


ーーさぁ、楽しい相手かな?

木の上に身を隠しつつ近付く。

納屋の裏手に。

壁越しに話し声がこえる…。

「オイ! 

監禁したゎ、いいけどこれからどぉするよッ?!」

「焦るな。待て、待て。

もらうモン貰わねぇとなッ!後は隠してる事だけさ!

昨日、店で言ってた通り有名なェリントン家の跡取りなんだからよぉッ!

こいつから会社の秘密を聞き出せりゃアノ人は、マリァジアしなくて済むかもしんねぇ!

ソレに俺達がやったって絶対バレねぇ!!」

「そ、そうだよな!お前、いい加減に話ちまえよっ!!」

「俺は本当に何も知らない…あ''、ぃ''い''やめろぉおおお''ぉ''っ!!」

ーー無計画か、さぞかし強いんだろうなぁ。


ーーここからは眼鏡はいらないか?

納屋の扉を蹴破る。

 暴れさせてもらう!覚悟しろ!!

ーー嘘。

暴れるに入らないけど、とりあえず言っとこう。 

相手は2人だけかぁ…。

相手の拳や脚や刃をすれすれで避ける。

こうしないと退屈過ぎる。

…やっともう片方も出したか。

ーー相手の鋭い2本の刃が向かって来る。

それを、両手に構えた2本の刃で受けて、払って。

ァン、1人目の顎に下から踵を1発

ドゥ、2人目の腹に踵を1発

トヮ、1人目の顔目掛けて刃を振る。

)))_↓

「ハッ?ァア!」

相手の顔すれすれで地面に刃を突き立てた。

 殺しはしない主義でして。敵わないのは、わかったでしょう?このまま戦えば、死ぬ方が楽だと思うことに…。

このまま、引いてもらえませんか?

ーー殺したら、始末が面倒。

でも、邪魔するなら殺すけど…。

「ひ ひ、引きます!!」

 あ!相棒、忘れてますよ!

ーー邪魔だから忘れず、持って帰って。

無計画が許されるのは、強い奴だけ。

 名前は?

「…マキシム。あんた何?」

ーーこいつで間違いないらしい。

 敵じゃない。君を安全にいるべき所に帰す。

「…俺には、敵だッ!!」

 そっちの都合は知らない。

「…マリァジィアしたい子がいるのに、別の子とマリァジィアしろって言うんだ。」

ーー''ッ。

よく、いるんだよ…こんな奴。

はっきり言って知らん。

仕事用の笑顔、少し崩れかける。

…でも、こいつを帰らせないとなぁ…。

ーーなんとか、丸め込まないと…。

 どう言う計画だったんだ?

「時間を置いてほとぼりが冷めたらって話で、ここに1 7日いたらで違う街でイリィナと待ち合わせしてたんだ。イリィナの親戚の家で。

1日過ぎちゃったけど。」

ーーざんね〜ん。

ほとぼりが冷める所か、騒がれてるれてけど⁇

 なぁ、マキシム。監禁されたせいで、予定が狂っただろう?

帰って、正式なやり方でなんとかする事を考えた方がいいんじゃないか?

その恋人は捨てられたって思ってるんじゃないか?

「でもぉ!」

ーー''ッ‼︎

「でもぉ」じゃない‼︎とりあえず、黙って帰れ‼︎

仕事用の笑顔、たまも崩れかける。

 もう、思ってるかもしれない。私の名前で手紙を出してやろう。

中身はお前が書けば良い、「絶対説得する」から待ってて欲しいって。

ーーとりあえず、宥めておこう。

こう言う時、人間は面倒臭い。

特に感情が絡むと面倒くさい。

「あんたは、マリァジィアさせられそうになった事ないの?」

 何度かあるさ。家を出て、交渉して、断って。

今は、この仕事に至る。

ーー嘘。

とりあえず、話しを合わせる。

面倒くさいから、結婚させられそうになったら、即座に姿を暗まして逃げてた。 

何回、結婚させられそうになった事か…。

「ゎ…かった。帰るよ。その変わり、ノゥジェルを説得するのに協力してくれ!」

ーー''ッ。

交換条件を出してくるとは、良い度胸している。

…いや?交渉上手⁇

こんな条件出されたから、こいつと帰らなくてはいけなくなった。

面倒くさい。

 よろしく、モア・リシャールだ。

「よろしく、モア!…ィデデデ。」

 これは…ひどくやられたな。さぁ、これを…。

ーー2日かけて帰るのかぁ。

行きは、半日より早かったのに。


「ドニィズぅうッ!」

「はぁっマキシムぅうッ!よかったわぁあ無事で!」

ーー早く終わらせてしまいたい。

あっちが感動の再会をしてるうちに、手早く禡車を手配する。

交換条件を出されたけど、聞く気はない。

こいつを家族に渡すまでが仕事。

ーーその先は、知らない。


ーーやっと走り出したか…。

汽笛が鳴って汽車が動き出す。

ゆっくり…汽車が走り出す。

汽車って面倒くさい乗り物だな…。

ーーは…ゎ…。

黄色い1面の花畑。

あの花、なんて花だっけ?

「…モアってこぅゆぅ景色あんま見ないの?」

 あぁ。いつもは移動は夜だから。

「なんで?」

 相手に見つかると厄介な仕事だから。

「…ふぅん。」

ーー邪魔するなッ‼︎黙って座ってとけ。

「もしかして、昼に外あんまり出ないの?」 

ーー''ッ! 

 ''ッ。

「…。」

ーーうるさい‼︎黙れ‼︎

やっと黙った。

少し睨んだのが効いたらしい。

ーー…眩しいなぁ。

窓から離れよう…。

反対側の席には家族。

子供が窓を覗いてる。

斜め前は何かをにこやかに話してる2人…。

駅員らしき帽子の男がこっちに歩いて来る。

「乗車券を拝見します。」

ーー少し嬉しそうな顔をされる。

何故⁇


ーー面倒くさい…この町で一泊かぁ。

汽車が終点で止まった。

露店がたくさん並んでる。

ーーあ、あれ欲しいな…買おうかな…。

でも、値段交渉するのが面倒くさい。

じぃい

「…。」

ーーマキシムが、ルビィのと…もう1つを手に取って何か話してる。

「モア。」

ーーなんだ?光った。

マキシムが何かを投げて来た。

ーーあ、さっき見てたの。

アメジストみたいな石のやつ。

「おまけだからやるよ!」

 あぁ。ありがとう。

ーー欲しいと思ってたら、楽に手に入った!

「ごめんよぉ!今日はお客さんが多くて、無理かもぉ…。」

 私は、宿なしは慣れてるから。

「お兄さぁん、私のベッドで一緒に寝なぁい?」

 遠慮しておくよ。マキシムの寝るベッドだけ確保すれば良い。

「……。 

「なぁ、ティバァの部屋は空いてないのか?」

「あるけどぉ?」

「そこで良い。その部屋を貸してくれ。」

「これでモアもベッドで寝れるな!」

ーーこんなとこで交渉上手を発揮するなよ…。

こいつといないといけない時間が増えた。

食事の時間とか上手く誤魔化ないと…。  

 ちょっと町を見て周りたい。食事は他の店でするよ。

ーー食事の時には、席を外し。

マキシムが眠り込むのを待って、部屋を抜け出す。

ーーこの町の夜は、静かだなぁ…。


ーーもうすぐ終わる…。

家にさえ送り届けさえすれば。

「ココは何回見ても、立派なお宅ね。何をなさってこんなに立派になられたのかしら?」

「何でも最近、大きくなっているって噂のェリントン・ノゥジェルでしょう。

今年に入ってお宅を建て直されたらしいわよ!」

ーー散歩中のマダムか…?

どうやら、ェリントン家は近所で噂の種らしい。

- - - - -

 マキシムさんをお連れしました。モア・リシャールです。

「ょ よかったぁあ…マキシム''ゥゥゥ''ゥウ!!」

ーー母親は、扉を開けた途端に口元を押さえてぼろぼろ泣き出した。

「マキシム…心配させやがって…。」

ーー父親は、目頭を押さえてる。

「もうっ!あなたって子はッ!!」

ーー母親は、べしべし背中を叩き出した。

「オフェルニァァン!心配したんだょ!!」

ーー弟は、泣きながら抱きつく。

家族とは、なんて暑苦しいんだろう。

毎回、眺めていてうんざりする。

 では、マキシムさんはお送りしましたので…これで。

「あぁ''!モア!!置いてくなぁッ!

あの人とはマリァジィアはしない、フラレンスは他に決まってるんだ!

その人で良ければ、仕事を継ぐよ。」

「…。何ィ!?」

「アナタのマリァジィアで取り引きが、どうなるがかかってるのよッ!?」

「条件を飲んでくれないなら、このままモアについて出てくよ!」

ーーハァ⁈

なんで⁈そんな面倒な事まで⁈仕事に入ってない。  

結婚させられるとか、その取り引きがどうとか、知らない。

ーー勝手にやってろ。

「別のフラレンスで仕事を継ぐだとッ!!」

「モアさん!!どう言う事ッ!?」

「モア!俺を置いて行かないよなッ!?」

「オフェルニァァン!出て行かないでぇえッ!!」

「ェリントンはッ!?」

「モアさん!!」

「モア!!」

「オフェルニァァン!!」

ーーあ''ぁぁあ''‼︎うるさいッ‼︎黙れッ‼︎

とにかくダ・マ・レ‼︎

はぁ''。

ーー連れて帰るのは嫌、絶対。

条件を飲む方向で。

 皆さん落ち着いて下さい。マキシムさんはとても交渉上手です。宿でも、私にも。とても、商売に上手です。

マキシムさんがいなくなるのは、会社に大打撃でしょう。

ーーぅ。いまいち納得してない。

 この事実は、お知りになった方が良いでしょう。なんと、息子さんは監禁されてたのです。なぁ?マキシム?

「うん。…ほら??この怪我は焼いたグネェを押し当てられたんだ。

なんか…会社の秘密があったら言ぇえって。何も知らないし…言わなかったけどさ。助けてもらった時 モア、すごく強かった…!」

 しかも、ご結婚される方の会社とご関係があった様です。

そんなお知り合いを持つ方と結婚させて良いのですか?

後々、この会社に災いが降りかかることは間違いないでしょう。

そんな、家はっきり言って願い下げです。お辞めにされるのが懸命かと?

ーーおそらく、合ってる。

2人とも会社の上着だったし、マキシム周辺の人間関係は調べがついてる。

まぁ、違っても怯えてくれたらそれでいい。

「本当だよ。」

「まさか、そんなッ!?」

 息子さんを例の彼女と結婚させてしまったら…そうだ!私が調査した内容を、ご関係の方々に送りますよ?

どうします?私の調査は確実ですよ?

「…ここまで大きくした会社を終わらせる訳には…いかない。」

ーーさぁ、堕ちろ。

もう、逃げられない。

「…ゎ、わかったよ…マキシムの言う通りにしよう。」

ーー堕ちたぁ、終わった‼︎

 そうですか。良かったです。では、私は帰ります。

ーー扉が閉まるまで後、少し…。

最後まで仕事用の笑顔を欠かさない。

 …ぉおっと、約束の物を頂いてない。

「ぁあ…!では、こちらを。」

ありがとうございました。

ーー依頼完了。

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