第16話「俺のプティ(その2」

「あ。仕事来てたぞ!」 

 ありがとう。  

「また、明日な!」 

 あぁ。

ーーどんな仕事かな?

扉を開けると当時に、指を弾く。 

灯りが灯る。

右側の扉を開ける。

ーーここに布置いたよな?

ハンマーとピンで布を窓に打ち付ける。  

暗い赤色の空を見てふ、と思った。

ーー近いうちに満月だなぁ…。

布を増やして光を透さなくなった窓。

全部の窓に布を打ち付けるのには、時間はかからなかった。

ーー手紙でも見ようかな。

エリントン家からの仕事で、そこの長男が7日くらい戻らないと書いてあった。

ーー…よくある家出だろう。

…つまんなそ。

どうしようかな…。

…急がなくて良さそう。

もうすぐ満月、無理だから…。

近いうちになんとかしないと。

……。

…。


ゆっくり。

ゆっくり。

暗い水の中、沈んでいく。

泥の様な暗い水の中、沈んでいく。

沈んだ先にはいろんな顔がぽぅ、と並ぶ。

みんな悲しそうな顔。

目立つほどに悲しそうにしてるのは、

逢いたかった、愛しくてたまらない「あいつ」

すれ違って、沈んでく様を、ただ悲しそうに見てた。

それを何度も繰り返し。

……逆らいたい。

でも、動けないし、届かない、仕方ないと…。

捨てる様に放り込まれては、底まで沈む。

そして、回数重ねるほど辛くなる。

もう、幾度になるか…。

どうして…。

動けないし、届かないんだろう。

何故…。

愛しい「あいつ」は、手を伸ばしてくれないんだろう。



ーーなんか、夢を見た。

…気がする。

夢…か…。

いつぶりかな⁇

嫌な夢だった…。

…気がする。


ーー螺旋階段を下りて行く。

雨が降ってるらしい。

激しく水が配管を流れる音がする。

雨か。

ーーあぁ''嫌。

空気が纏わりついてくる。  

- - - - -

 モアだけど?

「モアさん!!どうぞ!」

ーーそんなに嬉しい⁇

「今日はいろんな物を用意したんですよ!」

ーーすごい、ご機嫌…。

「いろいろ…シャポゥを被ってもらおうと思って!まずは、コレ!!」

ーー帽子?

何するの⁇

「モアさんには、俺の着せ替えプティになってもらいますね。

さぁ…まずは、このシャポゥから!」

ーーあ。そんな顔もするんだ?

第一印象と違う。

「いいですね。

素敵なムシュ…。

何か仕草を加えてみてください。」

ーーこう?

「あぁ、良いです!

邸宅から出て来た風景が見えます。そのまま。」

ーーやっぱり今日は、昨日よりご機嫌じゃない? 

描くのは相変わらず早いけど、今日は昨日以上にのってる気がする。

「じゃあ、次は上着を脱いでコレを。

そうですね…。

肩を落として、右足を1歩前ヘ。

右の腰に手を当てて下さい。」

ーーこう?

「いいですね!

働いている風景が浮かびます!」

ーーどう言う人間って設定?

うぅん⁇

…郵便配達員?

…工場作業員?

「次は、コレを羽織ってコレを被って下さい!ココに手を入れて!」

ーー渋い青?

自分では絶対選ばない色。

…少し大きい。

「街で買い物している風景が浮かびます。

いいですね!

…素敵な物を見つけられそうです!

素敵な物を見つけて、上から見る仕草が欲しいです。」

ーーこう?

街か、だいぶ歩いてないな…そんな時間ない。

頭の中では、どんな事になってるんだろう?

「じゃあ…次は。

コレを着て、コレを被って下さい。」

ーーやっぱり少し大きい。

これ、あんまり被る事ないな。

「……この格好のモアさん、可愛いらしくなりますね…。」

ーー…‼︎かゎッ⁈

 へぇ?

「色ですかね? 

グリィのカァディナルとブランのボネェがそう思わせるのかも?」

ーー確かに…。

色は、可愛いとは思う。

けど、自分を含めると違うと思う。 

上に黒を被って、下が深い緑だったら印象もだいぶ違うはず…。

「描けました!今日、すごく楽しかったです!!

評価をお願いします。」

 あぁ。

ーーうん。

今日は昨日よりは、よく追えてる。

いろいろさせられただけあるなぁ…。

あ、でももっとはっきりした感じは欲しい。

うぅん。

ここも、もっと強調した方がいいな…。

 昨日よりよくなってると思う。後は、こことここもっとはっきりした感じをさせて。

「はい!ありがとうございます!」

 あ。しばらく仕事で来れないかも。

「そう、なんですね。お仕事なら仕方ないですね!怪我しないで下さいね!」

ーー絶対しない…。

そこまでの敵にむしろ会いたい。

 じゃ、帰ったら声かけるから。

「わかりました。おやすみなさい。」

ーー…。

ショコラ飲む時間はあるか。

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