第29話 何を食べる?

「西園寺さんは何を食べるおつもりで?」

「うーん、ハンバーガーでも食べようかな」

「なら私もそうします」

「無理に合わせなくていいよ」

「いいえ、私もそういう気分なんです」


 フードコートにはたくさんの人が溢れかえっていた。

溢れかえっているというが、一応私たちが座る分の席は残されている。それが埋まってしまうのも時間の問題だが。


「急いで選びましょう。席が埋まるまで時間がありませんよ」

「私はもう決まってるよ。ハンバーガー食べるときは毎回それ食べてるからね」

「私はどうしましょうかね」

「迷ったら私と同じのにしたら? 間違いなく美味しいから」

「ではそうさせていただきます」


 ハンバーガー店はフードコートでも人気なイメージだったが、並んでいるのは3組だけだった。こらなら今から並んでも問題なく座れる場所も確保できそうだ。


「ところであなたは何を食べるんですか?」

「チーズバーガー」

「脂の塊みたいなハンバーガーですね」

「美味しいよ」

「別に食べたこと無いわけじゃないですけど」

「おっと、それはごめんね」

「私の事なんだと思ってるんですか……」


 前の3組全てが注文した商品を受け取り、去っていった。ようやく次は私たちの番が回ってきた。


「ご注文をお伺いします」

「チーズバーガーのセットを2つで」

「ドリンクはどうなさいますか?」

「私はコーラで」

「なら私は……メロンソータでお願いします」

「了解いたしました。しばらくお待ちください」


「時雨はメロンソータ飲むんだ」

「はい、とても美味しいですよ」

「私もまた今度飲んでみようかな」

「今度是非飲んでみてください」


しばらく時雨と雑談していると、私たちが注文したものの用意ができたようだ。


「ありがとうございましたー」


「どこで食べる?」

「あそこのテーブルは席が全部空いてますね」

「おっ、よく見つけたね。座っちゃおっか」


 時雨が見つけた空いている席に早足で向かい、誰かにとられることもなく席を確保した。

「ふぅー、ずっと立ちっぱなしは流石に体に堪えるね」

「こんなに歩くと明日は足が筋肉痛になってるかもしれませんね」

「そうなったら運動不足気味なのかもね」

「ですねー」


 紙袋を開け、中から2人分のハンバーガー、ポテト、ドリンクを取り出し、それぞれの席の前に配置した。


「いただきまーす」

「いただきます」



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