TS転生してのじゃロリ美少女やってたら何度も死に戻る羽目になったのでスキルを磨いて成り上がる！

第一章 村防衛編

第1話 ぼうけんをはじめますか？

「おい、アリア！俺との決闘を受けろ！」

　いかにもガキ大将といった風貌の13歳の少年……いつもわしに突っかかってくる顔なじみのバーズがいきなりそう言い出した。

「そんなことをして、いったいわしになんの利益があるのじゃろうか？」

　未だ自分にとっては違和感のある、脳を揺さぶるような愛らしい声でそう否定した。

　……わしには前世が存在する。

　地球という星の日本という国に生まれ、高校を卒業しないうちに死んだ。

　その頃の性別は男じゃった。

　死因は何だったのかわからない。

　それでも言えることは、死んだという確信があることと、わしはこの世界に女として生まれ変わったということ。

　思わず笑ってしまうわ。平々凡々に生きていてこれか、と。

　だが、この世界での生活も悪いものではなかったの。

　中世か近世のような文明なのに、飯も前世より美味いし、女の子もやたらと可愛い子が多いからのう。村を歩いているだけでも目の保養になるわい。

　……その中でもわしは思いっきり特別扱いされたりかわいいかわいいと扱われているが、それはどうでもいいとしよう。

　内職をして、それによって得たお金で本を買ってこの世界の歴史を学ぶ。

　そんな日々はなかなかに楽しかったし、充実していた。

　――少なくとも、今日この少し先まではそう思っていた。

「利益ならある！ほら！」

「な、何をする気なの……？」

　バーズは取り巻きに命じて、一人の少女を連れてきた。

　彼女はエフという名前で、わしの親友じゃ。

　……あー、展開読めてきたのう。

「エフをかけて俺と戦え！勝ったほうがエフを好きにする！」

「エフをかけるもなにも……わし、一応女なんじゃが？というか剣なんて握ったこともないのだがのう。……ああ、要するに企画倒れってことじゃ」

「うるさい！戦え！お前さえいなけりゃ、エフは俺を見るはずなんだ！」

　痴情のもつれか。エフとは仲は良いが、そういう感情はないぞ？

　わしは男とはくっつく気はないが、ロリに手を出す気もない。

　少なくとも、お互いに想い合ってるであろうお主らの仲を引き裂いたりはしないから安心するのじゃ。

　心配しなくてもエフはお主のことが好きだと思うぞ。

　実際そういう相談を時々してきたしなぁ。

「とか言っておるが……エフはそれでいいのかの？」

「良い……やっぱ良くない！そういうのはこういう形じゃなく……というか今日のバーズ、ちょっと怖いよ」

　確かに、明らかに目が血走っている。

　何かあったのじゃろうか。

「ともかく、わしは戦う気はないしそもそも戦えないぞ。お主は騎士を目指しているのじゃよな？そんなお主が丸腰のわしを叩きのめしていいのか？」

「うるさい！」

　バーズは腰から子供用の銅剣を抜いて、わしに叩きつけようとした……その時だった。

「賊共が攻めて来たぞ！60人ほどの集団だ！」

　隣家に住んでいるタダべーさんがそんな言葉を告げた。

「なっ！？マジかよ！……ここは一時休戦だ。俺は親父のところで一緒に戦う」

「いや、無茶じゃ。お主はまだ子供じゃし、隠れていたほうが……」

「いや！騎士を目指すものとして放っておけねぇ！じゃあな！」

　バーズは子分を引き連れて村長の家へと走っていった。

　さっきまでは女の子を甚振ろうとするクソ野郎だったのに、偉い転身じゃなぁ……。

　しかし、60人ともなると相当な集団じゃ、

　もしかしたら負けてしまうかもしれないの。

　いや、村長がいるから大丈夫かのう？

　村長は信じられないほど強いからの。

　それから、わしはエフとともに物置に隠れた。

　そこには戦えない老人や、女子供が集められていた。

「アリアちゃん、怖いよ……」

　アリアというのは今のわしの名前じゃ。

　泣きべそをかいてわしにすがりつくエフは正直とてもかわゆいが、それ以上に不安じゃ。

　わしのメンタルや恐怖への耐性は並かそれ以下の男子高校生程度であり、下手したらエフ以下の可能性も高い。

　現代人が異世界人にそこらへんで敵うとも思えないし。

「大丈夫じゃ。きっと、村長たちが蹴散らしてくれるから、の？。安心してくれ。わしらは死なないぞ」

「うう……」

　それから30分ほど剣戟の音が鳴り響いていたが……そのうち止んだ。

　そして……。

「へへへ、おかしらぁ！老人共は殺すとして、女どもはさらっていいんですよね！？」

　賊たちが物置にやってきた。

　賊どもが下卑た視線をわしらに向ける。心底気持ち悪い……！！

「ほら、特にこのガキなんかいいんじゃねぇですかい？」

　わしに向けて指を指してきたが……もはやわしの胸中には絶望しかなかった。

「いや、殺せ」

「へっ？」

「殺せ、と言ったんだ」

　性奴隷にされる未来は回避されたが……今度は未来自体がなくなった。

　そうして、わしの二度目の人生は終わりを迎えた。

　――アリア、死亡一回目。頭を鈍器で殴られて死亡。