方寸記

J・バウアー

第1話 学校では教えない現代史(1)空気を読む〈1〉

学校の歴史の授業では、まともに扱われないジャンル。それが現代史。


戦国時代は派手ですよね。

織田信長とか、徳川家康、伊達政宗などなど、戦国武将は特徴的だし、

福島正則や本多忠勝みたいに脇を飾る人物も魅力的。


対する現代史には、これといった有名人が少ないです。

坂本龍馬くらいかな。あと、良くて西郷隆盛くらい。山本五十六なんて、名前を挙げただけでオタク扱いされそう。


それもそうです。なんせ、現代史を一言で表すと「空気を読む」時代ですから。

みんな「空気を読」んでいるから、個性が出ずに埋没している。


戦国時代なんて違います。全く空気を読まない代表格が、織田信長。

寺社仏閣は神聖不可侵なものなので、誰も表立って対立しなかったのに、

織田信長は平気で、延暦寺を燃やし尽くし、現在の大阪城にあった石山本願寺とも戦いました。


その後の秀吉の時代になると、その前半は謀略は繰り広げられるが、相手や場の雰囲気を壊さないように忖度するなど無縁。


だが、後半になると、忖度そんたくが、はこびり始めます。

秀吉に苦言を奏上するようになった千利休や、邪魔になった豊臣秀次を処刑してから、皆が秀吉の顔色を窺ううかがうようになり始めました。そうなると、とたんに色あせてくる。個性が出てこなくなるのですよね。


もともと戦国武将だった徳川家康とか、織田信長の部下として派手な武勲を上げていた前田利家、上杉謙信の後継者で家康とも対立した上杉景勝とかは有名だけど、他の五大老である、毛利輝元や宇喜多秀家、小早川隆景となるとあまり知られていません。なぜなら、秀吉の都合で五大老になっただけだから。五奉行に至っては、秀吉の意向だけで役職に就いた人物ばかりだから、筆頭の石田三成以外は誰も知らないのではないでしょうか。なにせ、力をつけて歴史の表舞台に立った時が秀吉時代の後半だったから、個性を出してしまうと、親分の秀吉に睨まれて処刑されてしまうので、表立って行動できない。だから、ドラマの題材にできないし面白くない。だから、皆に知られない。


何が言いたいかと言いますと、誰かの顔色を窺ったり、空気を読むような時代は、面白くもないし、従ってドラマの題材にもならないし、ゆえに皆に知られないということです。


現代史も同じです。


明治維新から西南戦争にかけては、まだそういう雰囲気は少なかった。

だから、大河ドラマの題材になることがある。

でも、それ以降は最悪です。

空気を読んだり、忖度したりが始まり、横行してくるのです。



空気を読むということで最悪の決定をしてしまったものがあります。


太平洋戦争の開戦決定です。



次回は、それにまつわるエピソードの紹介をしてみましょう。



つづく

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