防衛隊員になりたい!ー目標はお金を稼ぐ事です!
ぱっちょ
第1話 防衛ーはじまり1
富士防衛都市
植物が暴走化して以降、日本最大の防衛都市として日々暴走化した植物、
150年後の2250年現在
「ここが富士防衛都市…」|
この物語の主人公、進藤梅12歳。
成長期が遅くまだ143センチほど、前髪が目にかかりショートヘアの暗い印象の少女は現在、日本最大防衛都市にて防衛隊員の仮入隊試験のために入場手続き場へ来ていた。
次、と呼ばれ手続き案内を受ける。
「あなたは…仮入隊希望者ですね?親御さんの許可証、転入手続書、保険証を提示してください。」
梅は肩掛けバックから指示された物を受付に渡す。
「受け取りました。確認にお時間いただきますので、椅子にお掛けになってお待ちください。受付番号3番で改めてお呼びいたします。」
素早く受付番号証を渡され、ロビーにあるソファに座る。
辺りを見回してみると、自分と同じような背丈の子供から17,8才の学生まで沢山の学生が来ている。どういう目的で皆、入隊を希望しているのか、ぼんやり彼らを見ながら考えていると受付番号3番が呼ばれた。
「お待たせしました。進藤梅様ですね。
身元確認が取れましたので、入場手続きは以上となります。仮防衛隊員入隊試験は一週間後となります。試験場などが記載された地図データなどは出口のQRコードにて読み取りください。都市運営宿も掲載していますのでご活用ください。では行ってらっしゃいませ。」
受付から渡した書類を受け取り、出口へと向かう。QRコードがあったのでデータを時計端末で読み取る。
「よし、入ったぞ。ふぉぉぉぉ。ワクワクしてるけど、とりあえずご飯だ。後でデータを確認しよう。」
砦内に入ると、沢山の人々で溢れかえり活気付いている。人の多さと賑わいに圧倒され言葉にならないほど興奮しているが、1人旅なのでここは一旦冷静になり先ずは腹ごしらえをする事に。
人の流れに添い、大通りを歩いていくと飲食店が多く並び始めた。
看板を確認しながら見て回る。
「…高い。」
否、高くない。梅にとっては高いのだ。
そう、彼女の手持ちは宿で泊まる事で精一杯、二週間後までとなるとギリギリなのだ。
「なるほど、これが都会。よく母ちゃんが「都会高い」とか言ってたのはそういうことか。母ちゃんに渡されたカロリーマイト、飴はまだある。…ふむ…先に宿を取るべき、か。」
データを読み取りサイトへ接続する。
おすすめ宿10選、激安宿、などのタブがある。
激安宿を見てみよう。おすすめを見た後激安を見るのは悲しくなるだろう。
『激安宿!雑魚寝宿 一泊500円から。
連泊プランは一週間 3000円!ぜひお越しください!』
破格の値段だ。
来る道で宿を見つけ値段を確認していたが、大体どこも一泊で3000円以上はする。
それと比べると安すぎる。安い程ありがたいのだが
「いや、母ちゃんはこうも言っていた。安すぎるのは怪しい。何か裏があるわっ!と…そうなると都市運営の宿…あ、これか。」
『都市運営宿A 一泊1000円 一週間で6500円 尚、掃除手伝い雑作業兼任の場合お給料が出ます ※応相談』
読んだ後の梅の行動は早かった。
ナビ通りに都市運営宿Aへと向かい空き部屋を確認しに宿受付へと向かう。
「いらっしゃいませ。宿泊予約はお取りになりましたか?」
「していないです。入隊試験結果が出るまで泊まりたいです。あと、掃除の件も受けたいので詳細を聞きたい…」
「承知しました。今空き部屋を確認しますので少々お待ちください。
…お待たせしました。お客様は…206号室のお部屋となります。入隊希望者が多く宿泊されていますので問題等起こさないようご注意下さい。
お掃除のお仕事を受けてくださり有難うございます。お給料は一時間950円でトイレ清掃、お風呂場清掃、廊下清掃など行っていただきます。お給料は2週目の宿泊料支払いへ回すことも可能です。もちろん超過分も支払います。ご自身の身分証をこちらで登録させて頂ければ可能ですがいかがですか?」
ふむふむ。と梅は悪くないと頷く。
そもそも宿泊は結果が出るまで2週間かかる。
連泊プランを使っても13000円を払うことになる。
更に一日何時間、一週間のうちに何回働くのか確認を取ると、一週間の内に3日出勤し時間にしておおよそ3時間程度だという。17100円を2週間で稼げる。宿分は取り返せる。同じ様な状況の人が来る事が多いという事か。
「…それでお願いする。…ありがとう。」
一週間分の宿泊費と身分証を受付へ渡し登録したら完了だ。
「ふふ。どういたしまして。お掃除のタイムスケジュールと詳細はあそこの掲示板に貼ってあるから確認しておいて下さいね。」
良心的な対応と受付のお姉さんの笑顔で梅の強張って緊張していた表情も和らいだ。
受付から鍵を受け取り、案内にあったタイムスケジュールを確認。
『月曜日、水曜日、金曜日 10時から13時まで 受付ロビーで集合』
基本的に月曜水曜金曜に行うみたいだ。
問題ないだろうと頷き、梅は自分の部屋のある2階へと上がる。
扉を開けるとベット机があるのみの簡素なつくり。
「…豪華だ!すごい!1人部屋!窓があって洗濯物も干せる!母ちゃん!都会凄い!だぞ!」
ハァハォと息巻く梅。
薄々気づいているだろうが、梅の実家はそこそこ貧乏なのだ。彼女の父親は防衛隊員でありながら怪我を負いその手当は出るものの、手術代諸々で予想外の出費。更に食べ盛りの、10歳の双子の弟達がおり経済的に余裕のない家庭なのだ。
また地方は砦内の敷地は狭く、必然的に住居も狭い。よって1人部屋は地方から出てきた子の憧れでもあるのだ。
驚きから落ち着いた梅はベットに腰掛け、外を眺めているとお腹からキューっとサインが出た。
「…腹減ったな。外も暗くなり始めてるし、今日はカロリーマイトで済まそう。残りの数が心許ないけど…仕方ない。」
机の椅子に移動しボリボリと食べ進める。
同時にバックから取り出したタブレット(中古品)にて残りの残金を確認し、彼女の母へ無事到着したと連絡の便りを送る。
『残金6450円』
心許ない表示だった。母から、お金を渡されたが梅は断り、地道に貯めたお小遣いと近所の人を手伝いでもらったお金でいくと言い張ったのだ。世の中甘くないと梅は痛感した。
「どうしよう。1週間…ここは水道水が富士天然水だから水筒に入れれば水分は補給できる。2週間目の事は…うん考えるのやめよう。取り敢えず試験までのことが大事だからね。うんうん。
でも6450円か…コンビニが近くにあるしまぁなんとかなるか。カロリーマイトも残り5箱あるしな!」
梅は考えるのをやめた。
共同トイレに向かい用を足し、そのままお風呂場へと向かう。男湯、女湯としっかり分かれている。もちろん実は女の子。赤い暖簾の女湯へと入る。お風呂場は源泉掛け流し温泉で豪華な作りだ。
「おぉ。初めて見た…凄すぎないかこの宿。石鹸もあるし凄いじゃないか」
確かにこの宿は源泉掛け流しで凄いのだが、シャンプーやリンスーが設置されていないため安価なのだ。
だが梅は全く違和感なくむしろそれが普通だと思っている表情。むしろ石鹸も完備してあるなんてパーフェクト!という表情だ。
「やだ!シャンプーリンスー無いじゃない!しかも固形なんて…泡立てネット忘れちゃったじゃない!もぅ!こんな宿嫌だわ〜」と先に入っていた女子たちが話している事なんて、興奮している梅の耳には入らない。
固形石鹸で手際よく頭、体を洗い流したら温泉へと入りほうっと息を吐く。
初めての遠出を思い返し、これから起きる期待に胸を高鳴らせ目を閉じ入浴を満喫した。
お風呂から上がり、タオルを首に巻きながら部屋の扉に手をかけたタイミングで隣の部屋205号室から人が出てきた。
出てきた人は身長が170センチと高く、梅からしたら見上げてしまう身長。柔らかそうな長髪で肌は色白。タラシっぽい雰囲気の色男が出てきた。
「あ、お隣さん?どうもよろしくなー。」と一言声をかけられ梅も応じて「よろしく」と返し部屋へ入る。
「あの人は隊員入隊希望者かな?仮入隊の自分とは関係なさそうだな。」と梅は気にもせず明日の準備と日課のトレーニングに励んだ。
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