㉛無人島生活7日目07● ヒロイン良い暮らししてやがった。

 うーん、でもまあ、彼らの言うことも、もっともな気はする。

 もし万が一、またエロい目……じゃなかった偉い目にあったら、ちょっとしばらく立ち直れない気もするし。


 ……そうだな、午前中あんなことあって実はまだちょっと疲れてるし、ミーシャたちの作業見学行くかな。

 そうだな、そっち手伝えばいいや。

 しかし、あんな事があったのにまだ午前が終わったばっかりなんだね!!



「……わかったよ。ミーシャ達と温泉行く」

「良い子だね、アーシャ」

 ミーシャに頭を撫でられ……え、良い子!?


 それは私の立場だったはず……。

 子供扱いするな、とは言われていたけれど、まさかミーシャの方から良い子扱いされるとは思わなかった。


「?」

 ミーシャはニコニコして、どうしたの?って顔してるが……。


「あ……ありがとう?」

「うん、よろしい」

 

 よ、よろしい!?


 いや、身分的にも年齢的にも本来は、さほどおかしくはない。

 本来ならば。


 成長スピードが早すぎる……精神年齢今、いくつなんだ……。




 そしてミーシャとドミニクス殿下とハーマン、私で温泉へ向かう。


 コニングはお留守番で工房にこもるそうだ。


「ん……あれ」

 ミーシャが立ち止まった。

「どうしたの?」


「いや、コンが、変な場所に入り込んじゃった……あ、コンってあの……白いキツネね」

「……」

 あの鼻血垂らして倒れたキツネか!


「ミーシャ殿下、変な場所とは?」

「うん……今までこんな場所があったなんて僕も知らなかった。いや、なかったと思うんだけど……誰か住んでたのかな?」

「兄上、小屋でもあったんですか?」


「いや、小屋とも違う……豪華な部屋だなぁ、とは思うんだけど。でもちょっとコンを回収しにいきたいからちょっと寄らせて。危なくはないと思う」


 豪華な部屋?

 ……あ、まさかヒロインが課金したものか!?


 見てみたい!


 ミーシャが言う場所へと私達は向かった。





「なにこれ」

 岩場の切れ目の中に、ピンク色の光がキラキラしている。


「えーっと、ここに触れるだけでいいみたいなんだけど」

 そう言ってミーシャがピンクの光にふれると、姿がスッと消えた。


 それにならって、中へ入る。



「わっ!?」

 部屋の中は、コンパクト気味ではあるが、お姫様の部屋、といえば良いのだろうか。

 白とピンクが基礎となった、女の子が一度は憧れちゃう感じの部屋だ!


 天蓋付きのピンクのベッド。白を基調としたテーブル。

 可愛い扉のクローゼット。

 片付けが下手だったのか、服が床とかに散らかってる。

 絨毯可愛いのに! 片付けなさいよ!!


 また、おままごとキッチンが大きくなったようなダイニング。

 あああ! 冷蔵庫あるううううう!!


「なんか……目がチカチカするな……」

 ドミニクス殿下が、部屋を白い目で見て近くの椅子に腰掛けた。

「女性の部屋のようですね」

「多分ね。これサンディの部屋だと思う」

 課金で部屋を買ったな……。

 どこでも暮らせるやん。

 異世界の沙汰も金次第かい。

 クレカの支払い額が気になる!



「……は?」

「ドミニクス殿下を見捨てた後か、ちょくちょく一人でここに来て過ごしてたんじゃないかな。

彼女、やたら身綺麗じゃなかった? ほら、お風呂ある」


「うわ、あいつ……」

 ドミニクス殿下が青筋を隠すように額を覆った。


「あ、コンがいた」

 ミーシャがコンを見つけた。ピンクのソファの上で丸まって寝てる。

 可愛い。


 ミーシャが抱き上げてよしよししてる。

「……ここが気に入ったの?」

 とか話しかけてる。

 ……良い。ほのぼの可愛い良い。

 でも、懸念がある。


「ミーシャ、ここいつまで存在するかわからないから、コンちゃんは連れて帰ったほうが良いかも」

 ヒロインはエンディング迎えちゃったわけだし、ここも消えるかも?


「きゅぅ……」

 コンが寂しそうに鳴いた……う。


「でもその代わり、ここにある家財を私が全部運びだすから、ほら、このクッションとかコンにあげるといいよ」

 多分、運び出せばアイテムはそのまま消えない気がする。


「そか、ありがとうアーシャ」

「きゅ!」

 コンが私のとこへ来て足にスリスリしてくれた。

 ……可愛い、死ぬ。


「じゃあ、時間もったいないから、ここはドミニクス殿下と私で作業するよ。温泉の方、しばらくミーシャとハーマン様だけでもいい? 手早く終わらせて合流するよ」


「な、お前勝手に決めんな」

「だって殿下も闇属性じゃないの。テレポート手伝ってくださいよ」


「めんどくさいな」

「ベッドあげますから」

「……しょうがないな」

 釣れた。


「ソファーと椅子があるから、団らん部屋とか作れそうだね!」

「ふふ、アーシャ。なんだかウキウキしてるね」

「だってこれはテンション上がるでしょう!」

「わかったよ。気をつけて作業してね。……ドミー、アーシャを頼むよ。念のためにコンは置いていくからね」


「はい。兄上もお気をつけて」

 ドミニクス殿下、ミーシャには普通の態度っていうか、ちょっと猫かぶってる感あるな。



 ……とか思ってたら。

 ミーシャ達が出ていった後、ドミニクス殿下は、ベッドにゴロっと転がった。

 猫かぶりいいいいい!!


「ドミニクス殿下! さっそくサボる気ですか!?」

「あとは、まかせた姉上」


「も……もう!! あと、姉上違うし!」


 ドミニクス殿下がこのモードに入ると、何言ってもだめだ。

 サバイバル生活でも彼のサボり癖は変わらない模様。


 しょうがない、一人でやるか。


 まずは風呂をのぞく。

 シャンプーとトリートメントあるっ……!!

 そしてボディーシャンプー……うわあ。

 足拭きも洗濯したら使える!! 

 お宝やーーーー!!


 私は速攻で拠点のバスルームにそれを送った。

 

 そこからの作業はもうテンションあがりまくりだった。

 前世でしか手に入らないようなものもあったし。

 死にものぐるいで拠点に移転させた。


 サンディ……とても良い暮らししてらっしゃいましたね……!



 しかし、拠点が、モノだらけになってしまった。

 ミーシャに頼んであとで倉庫作ってもらおう。


 ミーシャに頼りっぱなしだなあ。

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