⑳無人島生活6日目03■ 少年は皆~新たな扉を開き少しずつ大人になるのである。


 しかし、ハーマンの制服もボロボロだなー。

 よし、ちょっと漂流物探しに行くか。


 私はお昼ごはんの後、一人で漂流物を見に行ってくる、と二人に伝えた。


「え、僕も行くよ」

「オレも行きます。レディ一人で出掛けさせられない」

「いや、一人で大丈夫。場所わかってるから、闇魔法のテレポートで行ってくる。誰かいて危なそうな相手ならすぐにテレポートで戻ってくるから。二人は勉強してて」


「えー」

 ミーシャが口を尖らせる。


「帰ってきて、お勉強が一段落してたらまたクッキー焼こう?」

「むぅ。わかったよ~」

「まあ、それなら……では、殿下はお預かりします」

「じゃあいってきまーす」


 私は、闇ゲートを作って、さくっとテレポートした。

 闇の中に入ってしばらく歩く。


「えっとこの辺だ、多分」

 闇ゲート出口を開いて出る。

 ちょうどいい所にでた。


 私は海を眺めた。

「ああ、またいくつか増えてるなー」

 私は闇から手を出して、使えそうなものを拾う。

 おそらくこれ豪華客船からのやつだよねぇ。


 トランクが2~3、と食料の包と思われるものや、樽も使えそう。

 闇属性で良かった。

 陸地にいても長い闇の手でひょいひょい拾える。

 

 「う……」

 私が宝探ししている横で、うめき声が聞こえた。


 「…………」

 声がした方を探す。

 岩が重なり合っている、岩と岩の隙間とかにいるのかな……。

 ひょいひょい覗いてみる。


「う…ぁ……」

 もう一度声がした。

「誰かいる?」

 声をかけてみる。


「……っ だれか……いるの、か……?」

 わかった、あそこの岩場だ。


 少し、岩の奥から手がでている。男性の手だ。傷だらけだ。

「大丈夫?」

 私は手を握って、岩の奥を見た。


「……コニング伯爵令息」

「な……おまえ、悪女……!」

 手をパシッと払われる。

「いたっ……」


 ――コニング伯爵令息。生徒会の書紀だ。

 やはり、攻略対象。

 薄茶の髪に深いグリーンの瞳。年下枠だったはず。

 可愛らしい系だ。

 性格は可愛くない。私に対しては。


 見ると、やつれて、足に大怪我を追っている。


「……私を悪女などと言っている場合じゃないでしょう?!」

 私は手を伸ばして冒険者魔法で簡単な治癒の魔法を施す。


「 『First Aid』」

 聖属性ほどの治癒力はない。

 だが、かけないよりマシだ。


「ふん、平民が使うような魔法でボクには十分ということか」

「……今はこれしかできないのです。ポーションなども持っておりませんし。このような魔法でも重ねて何回かかければ立ち上がれるようにはなるかと」

「……フン」


 さっきの言葉通り、私は丁寧に何回かかけて上げた。

「どけよ」

 しばらくすると、彼は起き上がって、岩場の外へ出ようとした。


 ふらついた、弱っている。

 私は支えた。


「ここは危ないですよ、手を貸しますから――」

「触るな!!」

 ドン、と突き飛ばされた。


「キャッ!?」


 バシャーン!!


 私は海に落下した。

「プハッ……」

 海面に顔を出し、コニングを睨む。


「ちょっと、助けて差し上げたのに、これはひどいのではなくて!?」

「ふん、お前なんかに助けられたとあっては、サンディに顔向けできない」


 私は、空中に闇を作り出しそこから腕を出して自分を海から救出した。

 そして、これはあまりやりたくないのだけれど、その闇の腕に自分を放り投げさせる。


「なっ!?」

「よっ……」

 私は体制を整えて着地する。


「なんだ、悪女かと思ったら、サルだったのか、おまえ」

「酷い言われようですこと。ところで、体力が万全ではないでしょう、あなた。それなのに私と喧嘩なさるおつもり?」

 私は闇を作り出し、形をレイピアにして、手に取り、一振りした。

 このやろう、これ以上悪意ある行為に及ぶなら、海に突っつき落としてくれるわ!!


「……」

「ああ、もう海水でビショビショになってしまったではないの……」


 コニングが無言で私を見ている。頬が染まっている気がする。

 嫌な予感がする。


 ……私は少し俯いて自分の姿を確認する。


 透けてる!!!!!

 胸元が!!!

 今日は男物の薄手の白シャツを着てた!

 はりついて! 丸見えです!!


 エッチな前世漫画で……人気(ひとけ)のないバス停とかで雨宿りしてる女の子のブラウスが透けて見えちゃってる、その、アレっぽい状態です!!


「いやあああああああああああ!!! 見ないで!!!」

 私は闇の剣を放り出し、胸元を両手で隠して座り込んだ。


「だ、誰がお前なんkレウpgr@」


 見てる! めっちゃ見てる!! こんの!!

 私は闇の手を出し、奴をひっぱたこうとしたが――


「ピエエエエエエエエエ!!!」


 ドコォッ!!


「ぐあああああっ!?」


 じゃぽーん…っ



 なにやら輝くでかい鳥が、コニングの鳩尾をストライクし、そのまま海までふっ飛ばした。


「ほぁ……!?」

 私はその様子を見て、放心した。


「アーシャ!!! 大丈夫!? ピエール! ありがとう!!」

「アナスタシア様、ご無事ですか」

 ミーシャとハーマンが走ってきた。


 ピエェ……あ、ピエールか!



「あ、ああ……だいじょう……」


「……」

「……」

 二人が歩みを止めた。 見てる。 


「こっち見んな!!!!!!!」

「すみません!!」

 ハーマンはハッとしてすぐに目をそらした。


「…………」

 ミーシャは顔赤くして固まっている。


「……ミーシャ」

「あ、えっと大丈夫!?」

 名前を呼んだら、やっと気がついて走ってきて抱きつかれた。


「あ、こら。濡れるよ」

「いいの! すぐ乾くし」


「アナスタシア様、その……綺麗なものではないが、これを……」

 ハーマンが制服の上着をかけてくれようとした。が。


「すぐ乾くからいらないと思う!!」


 みーしゃあああああ!!!

 理にはかなっているけれど!!

 そこは、上着を受け取らせろ!!


「ミーシャのバカ!!」

 私はもうその場にいるのが嫌になって闇を使ってテレポートした。

 なんだよ! このセクハラ小僧!! いい加減オラ、切れちまったぞ!!


「え、あ!! ごめん!! あーしゃあああ!!!」

 そんな声が聞こえた気がしたが、知らん!!!

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