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シティ・コンクシエが陥落した。ベスノセリアからそう遠くはない。アシャリは買ったばかりの新聞を握り潰すように駆け出した。セラースカのいるアパルトマンにまで戻ると、勢いよくドアを開ける。
「うわっ! え、アシャリさん、どうしたんです。怖い顔をして」
「潮時だ。この街を離れるぞ」
荷物を纏めていく。アシャリが日々の雑用を担っているのもあって、手慣れたものだ。アシャリのもの、セラースカのものを手早く分けて鞄に詰めていく。
「待って。待ってくださいアシャリさん」
「シティ・コンクシエがやられたらしい。すぐにベスノセリアも呑まれるぞ。セラースカ、君ひとりくらいなら俺で護送できる。来週には発とう。色々済ましておくべきこともあるだろうから……」
「アシャリさん!」
「……何だ」
「私、この街を離れるつもりはありません」
「聞き分けろ。俺はもう、君が死ぬのを見たくは──」
「アシャリさん、私もう言っちゃいますね。ベルソフの畢生のテーマ。多分アシャリさんも薄々気付いて受け入れているでしょうので」
「何を急に……」
「『大切なひとの無事』です。それも多分アシャリさんの。色々深読みとかもしたんですけれど、やっぱりそれです。ベルソフの願いは」
「……」
「アシャリさん。私にも大切なひとやものがあるんです。親戚とか友達とか、両親のお墓とか、憧れたひとの足跡とか。私はそれを守りたいんです。ベルソフだって、私だって、人間というのは大切なもののためなら大抵のものを作れる。だから、私この街を離れられません──ごめんなさい」
「……そうか」
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