第3話 ふたたびの戦闘

……王立軍基地……


『そこのあなた!?もう後ろには避難民はいませんか?』

忍が基地の入り口の方からきた少し焦げた作業着を着た若い男性に声をかけた。


『ああ、いないと思うぜ、まあ、いてもあの火の海じゃいてももう助からねえよ』

そう、聞かれた男は生意気な答えを返した。


(パシン!!!)

『あなた!何なんですか!?』

忍はその男の頬を引っ叩いた。

『何すんだよ!』

『何んあんの!?あんた!』


『ああん?俺はクイだよ。文句あんのか?!』

叩かれが頬を撫でながら彼は反抗的な目で答える。そして足早と人混みの中に逃げ込んでいった。



……王立軍基地、新型輸送車の近く……


僕は今、スーツの部品を詰めていた車両の近くを飛んでいる。


『あ!』

ちょうど魔力が切れたのか落下した。


(ドサ!)

落下の衝撃で土埃がまう。


『ゴホゴホ!……君は!もう少しまともな着地はできないのか!?』

散々僕にスーツ内で音声だけで命令してきた男と同じ声が聞こえた。


『まあ、いい、早くスーツを出て姿を現せ』

その男は続けてくる。


『わ、わかりました。出ます』

僕はスーツから出た。



『な!!、こ、子供じゃないか!?……お、お前が魔族を2回も退けたのか?』

出てきた僕を見て男は驚いている。


『はい、でも、このスーツの性能のお陰です』


『ううん……君は正規の軍人ではないのだな?』

その軍人は僕を見て頭を押さえながら聞いた。


『ライト閣下!ライト大隊長!大変です!閣下!』

僕が答えようとした瞬間に彼の後ろから白髪の若い軍人が走ってきた。


『今度は何だ!?』

僕と話していたライト大隊長と呼ばれている軍人は少し荒れた感じで答える。


『閣下?……あ、いや、大変です!先ほど輸送車の運転手が死亡しました。これでは、基地から出られません!閣下!どうすれば!?』

少し様子がおかしいライト大隊長を見て報告している白髪の軍人は少し困惑した。が報告を続けた。


『な!?どうするて!?俺に聞くな!』

ライトは焦りとか、疲れとか、色々なものが吐き出そうな顔で荒く答える。


『ですが……』


『大体、その操縦席を見たが、それほど馬車と変わらないじゃないか?!』


『はい、そうなのですが、私も他の人も負傷して……』


『あ、あの、私、大型馬車の操縦ならしたことが、私でよければその輸送車の操縦をしましょうか?』

近くで怪我人の手当てをしていた女性が僕達に話しかけてきた。


『え?民間人が?……』

大隊長は迷っている。


『私じゃ不満ですか?』

勇気を出して志願した彼女は不安そうだ。


『閣下、今は非常事態です。もう、できる軍人はいません。彼女に任せましょう』

報告していた白髪の若い軍人は彼を説得し始めた。


『わかった。お願いします。それとお名前は?』

ようやく決心したライトは彼女の名前を聞く。


『ヤミ・アストと申します』

『アスト……そうか、あの……』


『アルス!お前も逃げられたのか!』

急に後ろか僕を呼ぶ声と肩に誰かが抱きついてくる。


『よかった。お前も生きていて。うう……』

かと思ったら啜り泣くような声になった。それに聞き覚えのある、いや、毎日聞いている前いた町からの知り合いのフロックだ。


『おい!何なんだ?君は?』

僕の前にいたライト大隊長がフロックを見て怒っている。


『え、あ、す、すみません。つい、友人を見つけて……』

急に怒られたので怯えてしまった。


『……そうか、丁度いいその彼と一緒に輸送車に入りなさい』


(シュ!、バン!!)

いきなり魔導スーツに岩か?何かが流星の様に光ってぶつかった。


『ゴホゴホ、何だ?』

土埃が舞っている。


『あれは……』

空を見上げるとさっきの白いローブを着た魔物だった。


『あ、あれは!白き流星群のアガネイア!閣下!まずいです!』

白髪の軍人は慌てて答える。


『クソ!またか!……』

ライト大隊長は焦っている。頭を掻いたりしていて何か考え始めた。


『そこの君!すまないが、また戦ってきてくれ!』

大隊長の隣にいた白髪の軍人が僕にお願いしてくる。


『え、僕?また?』


『ああ、頼む、えーと……』

『アルスです』

『そうか、アルスさん、私達の代わりに頼む』

軍人の男が頭を下げてお願いしてくる。


『おい、民間人には、それに子供だぞ……』

ライト大隊長は民間人で子供な僕をスーツに乗せるのを拒んだ。


『お言葉ですが、我々には彼しかいません。確かに他に3機魔導スーツはありますがどれもロックがかかってます。今使えるのはそこのだけです。それに我々の誰一人戦える状態では』

白髪の軍人が反論して彼を説得する。


『わかった。アルスくん、私からもお願いする』

彼は渋々頭を下げた。


『わ、わかりました。やってみます』

僕は再び戦うことにした。母の仇を取る。


……王立軍基地上空……


『ん?確実に魔導反応は感知されているはずだが、こないな』

基地上空をアガネイアは飛んでいた。


『まあ、いい。ならば……お!いた』

その魔物は偵察時に戦った人族の新兵器を見つける。


『やろうか、人族の新兵器くん』

そう言うとそのローブを被った魔物は手をその人族の魔導スーツに向ける。


(ジュワジュワジュワ)

突き出した手の前に巨大な岩が現れる。


(シュン!)

その岩は一気に何かの力で押し出され熱で燃え、光りながらそのスーツの方に飛んで行った。


(バーン!)

『よし』

その岩が着弾して土埃が起きる。その様子をアガネイアは少しニヤつきながらみる。


『な!……どういうことだ?!』

少し土埃がはれてその魔導スーツが着弾する前のままになっていたのをアガネイアは見た。


『人族の新兵器は化け物か?これでは!』

その声は焦りを隠せていない。


『あ!あいつら、もう』

焦るアガネイアの視界の遠くには2体の仲間がきていた。


『もう、いい、作戦を考える時間はない。一か八か……補給もくる大丈夫だ』

焦りながらも白ローブの魔物は決心する。


(ジュワジュワジュワ)

アガネイアはまた岩を作った。


(シュン!……バーン)

その岩がまた光輝きながら基地の大砲がある建物に直撃する。建物は一瞬で倒壊する。巻き込まれた人々の叫び声がその魔物にも聞こえる。


(ジュワジュワジュワ)

(シュン!……バーン)

アガネイアは淡々と流れ作業のように基地の砲台を攻撃した。





遠くから飛んできた2体の魔物がアガネイアに近づく。

『アガネイア様』


『来たか、作戦どうりお前達はあそこのムカデみたいな車列を攻撃しろ。私が援護する。』

近くにきた、部下に作戦そのままで攻撃を指示した。


『了解です!やるぞ!』

『おう!』

そう2体の魔物は返事をして、二人とも両手を前に出す。

しばらくして2体の魔物の前に巨大な魔法陣が現れる。


『いけ!』

(バーン)

魔法陣から直径10センチぐらいの破壊光線がでた。



……王立軍基地、新型輸送車……


僕はスーツの中に入った。


(魔力残量0、魔力を充填してください)

その赤い文字しか見えない。

意識しても視界は暗黒のまま、手や足も動かない。

スーツを出ようと意識するとスルッと外に出れた。


『え?なんで、出てきたんだ?何か問題でも起きたのか?』

すぐに出てきた僕を見て聞いてくる。


『わかりません。ただ、魔力不足と……』


『何?魔力不足?何だそれは?』


『あの、魔力不足てのは人で言う所の食事が欲しいと言ってる。みたいなことなので、濃縮アウトラ鉱物を与えればいいのでは?』

フロックが恐る恐る答えた。


『アウトラ鉱物……あれか、なるほど、君は魔道具関係に詳しいのか?』

ライト大隊長の部下である白髪の軍人が聞いてくる。


(ボーン!ガラガラ)

少し遠くで基地の建物が攻撃を受けてた轟音が聞こえる。

『何だ?』


『閣下!迎撃砲台が攻撃されました!』

後ろからさっきの攻撃の被害を早速報告する軍人がきた。


『不味いな、濃縮?アウトラ鉱物なら輸送車の二号車に積んでいる。取りに行こう。このスーツしかあいつに対抗できない』

焦る様に白髪の軍人はフロックの手を取って走り出そうとした。


『おい!子供の言うことを聞くのか?』

ライト大隊長が反発してきた。


『え?子供?閣下!、いまだに軍規とかを気にしているのですか?!我々の誰一人このスーツについて何一つわかっていません。でも、今必要なんです!せめて少しでもわかる子供に任せるのが良いのでは?それにお言葉ですが、閣下も私も子供とそれほど変わりません。この子達に掛けてみましょう』

彼の部下が諭す。その間も別の場所が攻撃されている。地響きや轟音が僕達にくる。


『あ、う、そうだな』

彼もそれが絶対最善だとわかり同意してくれた。


『私は救護を手伝いに行く。君たちでこのスーツを動かしてくれ。救護班!今しているので助かりそうにないのは諦めて今攻撃を受けた所にいる人を救援してくれ!』

ライト大隊長は僕達から離れて別の指揮をし始めた。



『では、二号車は隣だ、行こう』



……新型輸送車、二号車……


『これです!これです!』

フロックが二号車の中に入ってすぐにそのアウトラ鉱物を見つけてくれた。


『これか、では早速持って行こう。どれくらい必要なんだ?』

白髪の軍人が聞く。


『そうですね、ここまで発光するぐらい濃縮したのは見たことないので』


『そうか、わからないか……ひとまず持っていけるだけ持って行こう』


『そうですね』

僕達3人が手に持てるだけのアウトラ鉱物をスーツの方まで運びだす。


『その、名前はなんて言うんですか?』

フロックと白髪の軍人が話している。


『ん?俺か?俺はリュウだよ。よろしくな!』

若い軍人は作り笑顔で答えた。緊迫した状況なのに彼らは少し楽しそうだった。


『そうですか、リュウさん。よろしくお願いします』


『そうだな、で、この鉱物はどこに入れればいいんだ?』

ちょうどスーツの所に着いたのでリュウさんが聞いてくる。


『んーあ!ここです!このマークは充填口のです』

フロックはスーツの背中側にある丸い蓋が着いたところを指差した。


『ここか』

(シュー)

リュウさんがその蓋を開け中に濃縮アウトラ鉱物を入れた。


(充填開始……)

蓋を閉めるとスーツからスーツ内でよく聞いた女性の声が聞こえた。


(充填完了。魔力容量85パーセント)

数秒経ってまた女性の声でアナウンスされた。


『アルス、多分できたんじゃないか?入ってみてくれ』

フロックが僕にお願いする。


僕は魔導スーツの中に入った。


『フロック!いける!』

中に入るとすぐに視界が戻り、手も意識すればスーツが動いてくれた。


『よかった!アルス!早く!早くあいつを!』


『ああ、行くよ』

さっきまで笑顔だったフロックは緊迫した表情で僕を見送った。


『あれは?増えている?』

僕がフロックに見送られまた魔導スーツで空に上がると

あの白き流星群のアガネイア意外に2体いた。


(高魔導反応!!)

(バーン)

『え!?』

急にその2体の間から光の柱のようなものが伸びた。


(パーン)

光の柱は地面につくと目を瞑りたくなるぐらい明るく光った。


『うわー!!』

『ああああああ』

光の中で人々の叫び声が聞こえる。


『何だよこれ……』

光の柱が徐々に細くなり地面の発光も薄まり地面の方を見た。

輸送車の周りでいくつもクレータができていた。そしてそのクレータの中にいくつも人々が倒れていた。


『え』

(バコーン!!)

急に視界が下に下がった。誰かに頭を殴られた。


『な!化け物め!』

声が聞こえる。


『何だ?』

僕はその場を少し背中側に飛んだ。


『アガネイア……』

目の前にはあの白いローブを被った魔物、アガネイアがいた』


『え』

(カーン!!)

気づいた時にはスーツの横腹をアガネイアが剣を当てていた。

効果がなかったのがわかったのかすぐにそいつは僕から距離をとる。


(高魔導反応!!)

(バーン!!)

『え』

僕の下方でまたさっきの2体の魔物が光の柱のようなものを打ち出した。


『まずい!』

僕はアガネイアに構わすにその2体の魔物を殴り倒そうと向かう。


『やああああ!!!』


(パーン!!)

『え』

僕の拳が急に目の前に現れたアガネイアの突き出した手の手前で強制的に止められた。


『やらせはしない』

白いローブからでもわかる苦しそうな声で言われる。


僕はあの魔物を殴る意識をもっと強く念じる。

『な!』

(ゴーン!!!ドン!)


僕の拳がさっきまで止めさせていた力を振り切りそのままアガネイア

に拳が当たりそのまま後ろの2体の魔物の間に押し込んだ。


三体の魔物はそのまま地面に落ちて行った。


『はあはあ、う!……』

急に頭に頭痛が走り空中で意識を失った。






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