親しかった友人を想う

 きっと主人公は、一番、仲が良かった友人と共鳴していて。ペンか何かを拾われて見つめ合った時に、友愛以上の感情を心の奥底に持っていたのだと思いました。

 主人公と友人は見つめ合った時、合わせ鏡のように同じ感情、同じ表情であったのでしょう。しかし主人公は、その感情や表情を自覚したくなくて、だから友人の表情を思い出せないのでした。

 友人のきれいな爪を思い出し、美しく繊細な心を持ったその友人は、美しくない現実に耐えきれず世を去って。自分も、その「現実」の一部であったのだと、自らの爪を見ながら主人公は思ったのでしょうかね。
 友人の女装姿を見て、自分も同じ姿になる事で、主人公は友人に寄り添います。友人を想いながら、しかし主人公は、窓に映る自分の顔を見られないまま物語は終わるのでした。静かな描写に、作者の力量を感じます。