第5話 運命…もしくは必然的な再会

…お互い…

周囲からそんなイジられ方をされているなんて知りもせず、アレから更に何とな〜く数日が経ったある日の金曜日…


「あ、チャージするの忘れてた」

スマホの決済アプリの残高が怪しくなっていた事を思い出した太郎。

だが立ち止まったその場所からコンビニに行くには、帰りのバス停への道のりから少し外れてしまうし、バス自体も一本後の時間のになってしまう。

折角18時という珍しい時間に帰社できるからか勿体なさを感じ、どうするか少しだけ悩んでいると…


「あれ!タっくんじゃん♡」

懐かしささえ感じるその声と、初めて呼ばれたその呼ばれ方に思わず振り向くと…

「…さ、寒くないの…?」

そこにはあの華恋が過剰な位布面積が少ない服にお洒落なコートを羽織った姿で、少し挑発的なポーズをとり立っていたのだった。

「ウフ♪勃起たつでしょう〜♡じゃなくて〜お久なのにその第一声がそれなん?」

「あ、ご、ごめん…おじさんだから…その…そっちの方がその…気になって…」

期待していたリアクションじゃなかったせいか、むくれて抗議する華恋に対して、今更ながら目のやり場に困り視線をそむけ詫びる太郎。


「やっさし〜じゃ〜ん♡まぁ〜いいや♪それよりもこの前話してた職場ってこの近くなの?」

「あ…こ、ここから歩いて5分位の所…だけど…」

「へ〜案外うちが働いてるブティックに近いじゃん♡」

「そ、そう…なんだ…」

「そうそう♪この近くあるコンビニの並びにあるん♡」

「え?じ、自分…ちょうど今からコ、コンビニでチャージしようか悩んでいて…」

自分の目線に合せて少し前かがみになる華恋の胸元の中身が露になるのに耐えられなくなり、再び視線を背ける太郎(笑)

「アハ♪なにそれ〜♡じゃ〜そこまで一緒に行こうよ〜♫」

そんな彼のリアクションの意味に気づかない彼女は、嬉しそうにそう言うと、いきなりを腕を絡めながら過剰なボディタッチをしてきた。

その感触…

というか、女慣れていない太郎は、顔を真っ赤にしながらその場で固まってしまった。


「どうしたの〜ほらイクよ〜♡」

「ん?な、なんだか微妙にイントネーションが違わない?」

「ん?淫行寝るよん?なにそれ〜下ネタ〜(笑)」

「ち、違うって…」

お互い何かが微妙にすれ違っていると思うのだが…

しかも間違いなく確実に…

そんな事を考えつつ半ば強引にエスコートされ引きずられて行く太郎と喜々とした笑顔を浮かべる華恋…


そんな二人の姿を道路を挟んだ向こう側の歩道から見送る影が2つ…

『アレが例のオヤジ…』

『アレが噂のギャル…』

華恋の母親の冴子と、太郎の部下の光子である。

別に面識の無い二人だが、何故かお互い示し合わせたかの様に横を向き顔を見合わせると、無言で頷いていた。


一方、そんな身内や同僚の出会いがあっているなんて…というか、この二人に見られている事等気付きもしない太郎と華恋は、パパ活のカップルの様に人混みの中に消えて行くのであった。


そしてその日の夜、お互い自宅にて…

「華!何であんな童貞臭がする枯オジに惚れたのよ」

「…怒…」

「課長!いったいどんな弱みを握られてるんですか」

「…怒…」

太郎も華恋も各々ラインで届いた不躾な質問に怒りを覚えているのだった…



…続く…






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