第13話:三人で旅行ってよくないか。

シャーベットと未知太郎とお父さんは、あの核ミサイルの件から平和が

戻ってきていた。


もうどこからも誰からもシャーベットを狙うものはいないはずだった。

だが体の中に核爆弾がなくなったとは言え、やはりシャーベットに戦闘能力

が備わっているかぎり彼女の存在が脅威であることには違いなかった。


お手伝いさんロボットとして世に出るはずだったシャーベット。

実は軍事用に作られたからだ。


でもまあ、そんなことばかり考えてたってつまんないですからね。


危機一髪なことがあった後もシャーベットはいたってのんびりしたもんだった。

相変わらず未来太郎と買い物に行ったり動物園や遊園地に遊びに行ったりしていた。


「ねえ、シャーベット?動物園とか遊園地じゃなくてどこか遠くへ行ってみたい

よな」


「いいね・・・でも遠いところって?」


「たとえば沖縄とか北海道とか・・・」

「季節的に沖縄かなって思うけど・・・」

「夏の北海道もいいなってって思うんだけどね」


「私はどちらでもいいよ、ミッチーが決めて」

「そうだ・・・遠くなら私に捕まって飛んでいけば旅費もいらないし一気に

目的地まで着けるよ」


「まあ、沖縄も北海道も飛行機に乗るからな」

「シャーベットと一緒に飛ぶのと同じようなもんかもな・・・」

「でも、アイドに捕まってビビりながら行くより、ゆったりシートに腰掛けて

行ったほうがいいよ」


「あはは、そうだね」


「そうだ、ミッチーお父さんも誘って、三人で旅行ってよくない?」


「いいね」


で、早速未来は父親に旅行に行こうって聞いてみた。

でもお父さんは社内で不穏な動きがあってその件で忙しいらしい。

軍事用にロボットを作っていたことがバレて、てんやわんやなことになってる

みたいだった。


「おまえたちふたりだけでラブラブで行けばいいじゃないか?」

「私が一緒に行っても、お邪魔虫だしな・・・」

「それにその旅行の旅費、誰が出すんだ?」


「せっかく家族団らんで旅行にでも行ったら楽しいと思ったのに」


で、結局、家族団らんでの旅行って計画はあえなくポシャった。


「ミッチー、旅行ボツになっちゃったね?残念だね」


「あまり残念に聞こえないけど・・・シャーベトも本当は行きたくなかった

んじゃなないの?」


「私はどこでもいいの」

「たとえ家にいてもにっちーいられたら、それでいいの」


「欲のない子だね」

「なんかさ、あれが欲しいとかこれが欲しいとか、そういう欲望はないの?」


「なにが必要なの?、みんなも大事だけど私にはミッチーがいるもん、

だから他に欲しいものなんてないもの・・・」


「あ、そうだ、ひとつだけ欲しいものがあるんだけど・・・」


「なに?そのひとつって?」

「言っちゃったら、シャボン玉みたいに消えてなくなっちゃいそう・・・」


「なにそれ・・・?」


「なんでもない・・・」

「日が昇って暖かい日差しが降り注いで、みんなが元気でいつもと変わりなく

夜を迎える・・・」

「刺激的なことやアクシデントなんかないほうが平和でいいよね」

「人間は欲がありすぎ」

「だからいつまで経っても戦争なんかなくならないんだよ」


「あ〜それは言えてるかも・・・学習しないんだよね人って・・・」

「僕もだけど・・・」


「ミッチーって?夢はないの?」


「夢ね〜・・・さあね、子供の頃はあれこれ夢を描いたけどね・・・

イラストレーターになりたいとか・・・プロのゲーマーかとか、いろいろと・・・」


「今は、なにをしたいのか分かんない・・・」

「だからね目的もなく学校へ行って、目的もなく生きてるって感じ・・・」

「無駄に生きてるだけかもな・・・」


「でも、いいんだ・・・今はシャーベトがいるから」


とぅ〜び=こんて乳。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る