偏執狂のワガママ


  偏執狂のワガママ



多分、カラスは君を愛せないから

ここが地となり肉となり

それから老いて何もなくなるまで

僕は何も生み出せなくなるんだ


磁界に囚われて

カッコーは行き場を失った

二十四の愛の歌に

三十六の泣きの花

池に毒を投げ込んで

それから何もしなくなった


君は太陽の存在なんか信じてないけど

月を作ったのは僕であってほしいと思ってる

四日間パリにいたけれど

得られたものなんか何もなかった

友達を幾つか失った。


好きだと言うけれど

愛する体力はない

サムの息子の話を聞いて

ワールドフェアの探偵を見た

そこから大海に乗り出すけれど

カジキの一つも打てやしない


溺れたままにしてほしい

肌がふやけて醜くなっても

叱ったりしないでほしい

陸に流れ着いたって

ゴミのように燃やされるだけなんだから


アルミのラインが頭で軋む

耳から吸い出されて雲に呑まれていく

マーブルの悪魔を取り上げないでほしい

空中に張られたテントから神が降りて来て

じきに僕の首を絞めるだろう

それでもオレンジ色の怒りと哀しみを

僕に向けたりしないでくれ

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