大富豪の娘を誘拐したら、世界中から狙われる羽目になりました。

曖昧もこ

プロローグ

「やっちまったな…………」


 ソファに深々と座り、男は頭を抱えていた。


(連絡は最低でも3回は無視した。発信機も壊した。もう戻れない。)


 男はベッドですやすやと眠っている少女に目を移す。その判断は一時の気の迷いであったかもしれない。だがではなかったと男は確信していた。


(まったく、こっちの気も知らないでよく眠ってくれるよ。その神経が羨ましい。)


 男は部屋にかけてある古ぼけた時計に目をやる。


(そろそろ0時……か。ま、もう無理だな。分かってたけど。いいさ、やってやろうじゃないか。最近は退屈だったし、少しは楽しめるかも。)





 この2時間後、男は全世界のエージェントから命を狙われることとなる。そのことを重々覚悟したうえで男は組織を裏切った。


「最初に裏切ったのはアンタだからな……ボス。」


 最強のエージェントと一人の少女の世界中を巻き込んだ逃亡劇が今、始まる。

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