とある喫茶店 恵。今日もひっそりと営業中。~ただの喫茶店ではないようだ~どうやらバフを追加してくれるらしい?!
宮川祭
第1話 モンブランとマロック【一章完結」
冒険者達は、疲れている。日々の魔物との戦闘やクライアントの値段交渉による人間関係の金銭トラブルに、脳は疲れ果てて司令塔が思うように働かないようだ。冒険者チーム「
「俺はリーダーには向いていないかもしれない。」と、ぽつりとつぶやく。
突然、どこからか「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております。」という言葉が聞こえてくる。ふいに嗅いだことのない。マロックの心を癒してくれるような甘い香りが鼻腔をくすぐる。
匂いの元に導かれるように疲労していた身体は自然に歩きだすと小さな看板が見える。
看板には、読めない文字が書いてある。木製でできたドアを開ける。その瞬間にさっきほどの香りが濃厚に感じられる。この店だ。怪しげな店ではないだろうかとマロックは剣に手をかける。
「いらっしゃいませ。空いているお席にどうぞおかけになってください。今日も冒険お疲れさまです。」
声が低い男の声が横から聞こえてくる。びっくりしたマロックはシャランと剣を抜いてしまう。しかし店主らしき顎髭を生やした高身長の男は、剣を見ても「ひっ!」 とも言わずに堂々として、陶器を綺麗な白い布で拭いていた。
「きさま、何者だ⁉ 気配を感じなかったぞ! 魔族の類か!」
「落ち着いてください。初めて来られるお客様は、あなた様のような感じですので慣れてしまいまして、まずは、これでも飲んでおちついてください」
白い陶器に入った黒い液体。液体から香る。匂いは、脳の疲労を和らげてくれるように感じる。マロックは、一口飲む。猫舌であることすら疲労で忘れていたのかもしれない。
熱かったのと苦みが口の中に広がる。店主は「ふふふっ、最初にコーヒーを飲まれた方たちは同じ顔をします」と笑っている。
すっと差し出された。謎の黒いものを手に取ると、食べ物の絵がぎっしりと並んでいる。
「このなかで好きなものを選んでください。あっ、代金は今日はいらないです。お客様なぜだか死にそうな顔をしているから」
「俺が?そんなことはないとは言い切れないけれども、タダというなら、この山のような金色のなにかが乗っかっているものをくれ」
「ご注文承りました」
店主は、六席しかないカウンターのテーブルの奥で調理を始める。黄色い何かが入った袋のようなものを手に持ち、土台となる菓子。その上に白いクリームを乗せた。ところに先ほどの絵でみた。細い線の集まりが層になっていく。マロックは「おおっ」と言うと、カウンターから身を乗り出してしまう。最後によくわからない黄色いものをトッピングすると完成のようだ。
「お待たせしました。こちら、モンブランといいます」
「モンブラン?というのか、これは」
こんなものは見たことがない。この花柄が描かれた皿といい。銀を使ったフォーク。どれも高級なモノばかりだ。もし、この皿を割ってしまったとしたらと考えただけ恐ろしい。
ゴクリ、生唾を飲み込む音とともにモンブランに高級フォークを差し込む。やさしい。固いケーキだと思っていたが予想を上回る柔らかさだ。一口小さめに取って口に運ぶ。
甘い! なんともいえないクリームの甘さといい土台になっていた菓子のようなものはクリームと合わさることによってバランスがちょうどよくなる。この栗というのは木の実のような食感をしている。
「お好みでミルクもどうでしょうか? これは、ボアークのミルクです。」
「ボア―クのミルクだと⁉ 生臭くて飲めたものではないと聞いているのだが‥‥‥。」
店主がどうぞ、試してください。というので、黒い液体「コーヒー」の中に、ボア―クというウシのような姿をした家畜動物のミルクを注いでいく。独特な生臭い匂いが一切しない。なぜだ? 特別な何かをしているのだろうか。よくわからないこの店。そして店主一体何者だ?
マロックは、ミルクを入れたコーヒーを飲む。先ほどの苦みとは違って、甘みの方が強くなっている。こんなボア―クのミルクは飲んだことがない。店主に聞いたところ、「秘密です」と言って誤魔化されてしまった。
「お客様、元気出ましたか? さっきよりいい顔をしていますよ」
「本当か? なんだか少し元気が出てきた気がするな!」
マロックは、席から立ち上がり、店を出ようするが、革袋を取り出して金貨一枚をテーブルに置く。
「これは、ほんの気持ちだ。受け取ってくれ。あと、この店の名は、聞いておこう」
「気持ちとしてありがたくいただきますね。この店は
「おお、キッサメグミという店かおぼえておこう」
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」
銀色の傷だらけの鎧を纏った。黒髪の冒険者マロックの後ろ姿を見送ったあと、
カランという音とともに「本日開店中」を「閉店」に変える。
♢ ♢ ♢
【あとがき】
最後まで作品を見てくださり誠にありがとうございます。
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