ある異世界皇太女が婚約者を決めるまでの物語

@pusuga

第1話 天使のお母様

 何の種類だかわからない鳥達がチュチュチュンとさえずる朝、そして広大なお城の庭に設置してある噴水からピュッピュッドピュと、これ見よがしに噴き出す水。


 運命の選択を迫る地獄からの狂戦士は突然やって来ました。

 

 コンコンガチャ

 

 「起きてる? 入るわよ、アルシンド」


 「……お母様……もうすでに入っていらっしゃるから、ノックの意味がないのですが……」


 「いいじゃない。なに? あなた、朝一から見られちゃまずいソロ活動でもしてたのかしら?」


 「…………」


 私のお母様は、この国――タンス=ニゴン王国の女王様。更に、優秀な魔法使いでもあります。


 「あなた、まさかまた庶民街へ出かけてはないでしょうね?」


 私は20才。

 女学院を卒業してからと言うもの、窮屈なお城の生活が嫌で、身分を隠して庶民街に出掛けるのが唯一の楽しみでした。


 「ご安心下さいお母様。断じて出かけてなんかいません」


 「そうよね。こないだみたいに、私を怒らせないで頂戴ね」


 「はい! 大丈夫です!」


 しかし、遂にお母様に見つかってしまい、3000文字にも及ぶ反省文を書かされ更に、言葉を発する事が出来ない魔法を一週間もかけられ、地獄の様な日々を過ごしたのは先月の事。それからと言う物、私が抜け出せない様に、城周辺には24時間体制で鉄壁のムキムキガードマンを10名配置。


 「と、ところでお母様、何か御用でしょうか?」


 パサッ


 「このリストに目を通しなさい」


 お母様は怒りに狂った悪魔の目つきで、一枚の紙切れをテーブルの上に不時着させました。


 「えっと……」


 「次期女王となる貴方のお婿さんになり得る候補者三人のリストよ」


 「え?! つまり結婚?!」


 「そうよ。私も含めて歴代女王は18才で結婚してるのに、貴方と来たら昼間っから庶民街に抜け出し、遊び三昧……もう、私の我慢も限界よ。今日の夜までに決めなさい」


 「え?! 今日?!」


 「その為に既に、13時、15時、17時に候補者をお城に呼んであるわ」


 「あの……お母様……私にも選ぶ権利が……」


 「ゴチャゴチャうるさいわね! また魔法かけるわよ!」


 「あ、はい……わかりました……」


 私は、朝一から怒りの煉󠄁獄火炎を顔面に強打。選択の自由アハハーンを木っ端微塵に破壊されてしまいました。


 「いい? 聞きなさいアルシンド。今回のリストの三名は、私が厳選に厳選を重ねた、顔面偏差値、家柄、性格、知識教養、袋のフニフニ感、竿の形、大きさ、太さ、フィット感など全てにおいて、二年間のんべんだらりと遊び呆けていた、ふざけた貴方にはもったいない殿方ばかりよ」


 「…………はい」

 (フィット感って……実際装着しないとわからなくない?)


 その後、女の子の日が始まり体調不良だからと言う迫真の演技虚しく、竜巻旋風脚で一蹴された私は、心は号泣、表情は眩い喜びの笑顔でドレスに着替えて、食べるラー油で楽しく昼食。


 いよいよ13時になる直前、最初のお婿さん候補のリストを熟読していました。


 


 


 

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