僕とノワールとパーシモンの館。

猫野 尻尾

第1話:偶然出会った子猫ちゃん。

この物語は人間になった黒猫ノワールと僕の平凡だけど幸せな日々のお話。


僕の名前は「犬飼 涼平いぬかい りょうへい」歳は23歳。

広告デザイナー&イラストレーター兼エッセイなんかも書いてる自称小説家。


趣味は自転車。

行き詰まったらデジカメ持参で自転車に乗って街や田舎道を徘徊する。


ある日、僕は地元にある小さな島に渡って、その島を一周してみようと

思い立ち自転車の修理道具一式リュックに詰め込んで、コンビニでおにぎりと

お茶を買って自転車と一緒に渡船で海を渡った。


島をゆっくり一周しても約10キロのコース、アップダウンもあってなかなかのもの。

ちなみにこの島、磁場が発生していてその磁場が全くのゼロで大気の気がたっぷり

吐き出されているんだとか・・・。


どこかに異世界とつながっているって言う境界線があるらしい。

一種の神霊スポットにもなってるそうだ。


未だにそんな不思議な場所が存在してるって、まあ代々伝わってる謎な出来事は

にわかに無視できないこともある。


自転車を漕いで島の途中まで来るとだいたい頂上・・そこの木々の切れ間から

海が見える。

昔、そこにレストランかなにかあったんだろう。

朽ち果てた建物が残っていた。


僕はそこで、コンビニで買ったおにぎりとお茶を取り出して食べようと思った。


そしたらどこからともなく聞こえる子猫の鳴き声。


根っからの猫好きな僕はその声に反応した。


本当は猫ちゃんを飼いたいんだけど・・・先日可愛がっていた猫ちゃんと

決別したばかり・・・気分的にすぐにまた猫ちゃんを飼おうって気には

ならないでいた。


そのあたりをキョロキョロしていると建物の床から可愛い子猫が出てきた。

ははあ、おにぎりの匂いに誘われて出てきたかな?


僕の顔を見て何かを訴えるようにニャ〜ニャ〜鳴く子猫ちゃん。


子猫は毛がオールブラック・・・真っ黒でまるで魔女の使い魔みたいだった。

首輪や鈴もついていないところを見ると生まれながらに野良か?


その子猫、やたら人懐っこくて地ベタに座ってる僕のお尻や膝に体を押し付けて

グルグル言ってる。

とうぜん腹が減ってるだろうと思って、おにぎりを小さくちぎって食べさせて

やった。


案の定子猫ちゃんは、むさぼるように夢中でおにぎりを食べた。

なにも食べてなかったんだろう。


僕が通りかからなかったら、この子はどうなってたんだろう。

そう思うとたまらなく哀れに思えてきた。


迷う必要はなかった。

僕はその子を背中のリュックに入れて、急いで島をあとにした。


そしてその子はその日から僕の家族になった。


僕が島で拾って帰った子猫ちゃんは女の子で、種類を調べてみたけど

黒猫の種類ってけっこういるもんだ・・・だから特定はできなかった。


ただ子猫ちゃんは左と右の瞳の色が違っていた。

いわゆるオッドアイって言ってそれはトルコのターキッシュバン・ヴァンって

猫の特徴らしい。


でもトルコの猫は、ほとんどが白猫なんだよね。

そういう点では黒猫って貴重な猫ちゃんなのかも。


子猫ちゃんはどうやら洋猫みたいだったから僕は子猫ちゃんに「ノワール」って

名前をつけた。

黒はフランス語でノワールだから・・・単純。


本名:犬飼いぬかい ノワール。


そして俺んちにやってきたノワールはすくすく成長していった。


生き物が部屋にいるのといないのとじゃ空気感が違う。

ひとりでいるより、ふたり・・・お互い、おしゃべりができなくても意思の

疎通はできる。


この子と出会えてよかった。


だから、僕は自分の仕事をしながらノワールと干渉しあわない程度で仲良く

やっていけると思っていた。


ところがある日を境にノワールはよく寝るようになった。


ひどい時には一周間寝たっきり・・・いくら日中よく寝る猫でも寝すぎだろう

ってくらい。

だから病気かと心配した。


で、それから三日目の朝のこと、なにげな〜くのノワールが寝てるベッドの

横を通りがかった時、ふとノワールを見て僕はめちゃビビって後ろにのけぞりそうに

なった。


猫のベッドで寝てたはずのノワール・・・なにがどうなってそうなったのか

は分からないけど・・・そこに猫コスをした大きめの裸の女がベッドから

はみ出すように寝ていたからだ。


え?猫ちゃんが猫の姿をしたまま大きめの裸の女性に変身してるってことは?

これからさぞやエッチいお話に発展して行くのか?って思うでしょうけどエッチい

話は一切出てきません。


とくに起承転結もなく涼平とノワールとのまったりとした日常が描かれるだけです。


つづく。

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