第7.5話 魅力的って……別に深い意味はないよね……(ちひろ)

 帰宅後、夕飯やら入浴を済ませ、自室に戻った後、ちひろは連絡先を交換した花梨に早速お礼のメッセージを送った。すぐに既読がつき、返信がきた。「またやろう」と一言、簡素なものだったが、そのすっきりさが花梨の魅力だと感じる。

 今日、初めて念願のサイファーに参加をすることができた。ずっと怖いと思っていたけど、いざ参加してみればみんな優しくて、本当に楽しかった。

(田中君には無茶させちゃったけど……)

 本当に達也には見学だけしてもらうつもりだった。だけど、達也とも一緒にやりたいという気持ちが抑えられなかった。結果あんな形で巻き込んでしまった。文化祭まであと三週間、正直かなりのペースで練習をしないといけないのは事実だが、さすがに今日のやり方は強引すぎた。夢中になると周囲のことを考えられなくなるのは、自分の悪い癖だとは自覚している。そんな自分に付き合ってくれた達也には本当に感謝している。それに……

(魅力的って……別に深い意味はないよね……)

 ちひろの容姿や中身を褒めてくれる人間は多い。特にクラスメイトの男子中には可愛いやら優しいだのそれほど大したことをしていないのにすぐに言ってくる者もいる。魅力的と言われたこともあった。しかし、今日ほど心に響いた日はない。

 同じ言葉なのにどうして達也の言葉はこんなに心に染みていくのだろうか。普段達也がそういうことを軽く言わないからなのか、それとも……。

(ええい! やめやめ!)

 あまり考え込むのは性に合わない。魅力的と言われて嬉しかった。ただそれだけでいいじゃないか。

 ふわふわと考えがまとまらない頭をボフっと枕に乗せ、そのままちひろは夢の中へと落ちていく。色んなことがあってもすぐ寝れるところが自分の長所だなと思った。

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