魔狼記 ★転生した陰陽師外伝

珠玖こんきち

第1話 予言の若者たち

そもそも、混沌とした宇宙万物のもととなるえにしがすでにここへと集い紡がれことばとなりました。


 昔々日本の北に大きな集落があったとさ


「おおい村長むらおさにすぐ連絡に行くんだ。予言通り赤子が三人同じ日に生まれたぞ」

 この程度の村人の数だとそんに珍しくもない出来事に産婆は三人目の男の子を取り上げるとあわてて人を呼んだ。

「おめえは一番小さいな。キビのようじゃキビと名付けてやろうか」

 抱き寄せた赤子はこの産婆ヨネの孫であった。次に静かに眠っている赤子を見て

「可哀そうにの、はの黄泉の国へ旅立ったの、おぬしはヨモと名付けてやるか」

 出産の際にヨモの母親は死んでしまったようである。この子の父も数カ月前、狩りに出かけ鹿の角に刺され死んでいた。

「おお、ヨネ婆よ、誠か予言の子が生まれたか」

 大きな男が蚊帳をくぐり入ってきた。族長のスザナだった。自分の妻を見つけると

「メイよ。この子か、わしの子は」

 傍らにいる赤子を抱き上げると火がついたように泣き始めた。

「おお元気な子じゃ」

ぬし様そのように手荒に扱われては女の子ですよ。丁寧にされなさい」

「おなごかヒミと名付け給う」

 うれしそうに笑っていた。

「スナザよ、忘れてはいかんぞ、この赤子たちを大切に育てるのだぞ」

「あの旅の卜者ぼくしゃが予言したことじゃな。アレイとか言ったか、やがて15年後、うそりやまが暴れる前に三人で生贄を供えに行けという言葉だったな」

「そうじゃ、そうじゃ」

 その夜はスナザの命で誕生を祝う宴が開かれたのであった。


 ヨモはキビの家族として育てられて村長むらおさからの加護を受けヒミ同様に暮らしていた。

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