第2話 まさか、地獄……

彼【ダザイ】=わたしは

玉川上水にて山崎富栄に引きずられるようにして、無理心中というかたちでその人生を終えたはずであった。

わたしは今何処にいるのだろうか? 検討もつかなかったのであった。

(まさか、地獄!?)

【ダザイ】には地獄に墜ちる心当たりがあったのであった。

幼少期タケに連れていかれて地獄極楽の絵をよく見せつけられたのであった。

「嘘をつくと地獄で閻魔様に舌を抜かれ……」

と入った具合にであった。

それにしても、ここは西洋風の村であったのだ……川沿いにいるらしく、水車小屋が側にあったのであった。どちらかというとのどかな田舎と言った次第なのだ……

寒かった冬らしかった。

するとズボンの右のポケットに何か堅いものが入っているのに気付いたのであった。

「これは……」

それを引きずり出してみる。

それはパイプであった。

念入りに塵紙が巻かれていて、中の葉っぱが出てこないようにとしてあった。

左ポケットを確かめてみると、コンパニオンとマッチが入っていた。

(はて、こんな物持ってたかなぁ……)

彼はシガレットは吸っていたが、パイプを吸う習慣はなかったように思えたのであった。

とりあえずよいしょッと水車小屋の側に置かれていた。ベンチに座って。

それに火をつける【ダザイ】

2回目の着火でようやく火が安定し始めた。

「ゴホッ! ゴホッ!」

匂いが強すぎてむせてしまった。

その時であった。

「【ダザイ】よ【ダザイ】世界を救うのです!」

と確かに彼の耳に届いたのであった。

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