第六話 過疎ダンジョンに潜む謎の毛玉!!
ダンジョン地下一階に設置されてる転移用ポーター。
そこからダンジョンの地下二階に移動すると、一階とは完全に雰囲気が変わって郊外の森のような場所だった。
噂には聞いていたけど、こうして目にすると確かに驚くな……。この瞬間を誰かと共有できなかったのは少し残念だ。
この辺りの地下全部開発してもこの広さにはならないと思うけど、ダンジョン内は異空間ってのは本当だったんだな。
「話には聞いてたけどこのダンジョンは森か。採集は捗りそうだ」
ただここはダンジョンの地下二階だし、気を付けないといきなり魔物に襲われる可能性もある。
ここのダンジョンが不人気な理由の一つに魔物の出現率が極端に低いっていうのもあるんだけど……。
「とりあえず魔物に気を付けつつ、スマホのアプリで薬草類の鑑定でもするか」
最近はスマホのアプリも充実していて、カメラ機能と組み合わせれば魔物の情報とかダンジョン内に自生する薬草類の鑑定が出来るようになっている。
クラス次第で各種鑑定スキルもあるらしいけど、今はそのスキルにポイントを振ってる人間がいないって言われてるな。スキルポイントにも限りがあるし。
そのアプリにもいろいろあって、無料の物から月額課金で結構お高いものまでいろいろある。
俺が選んだのは無料のアプリの中でも割と評価が高い物なんだけど、無料のアプリだと高難易度のダンジョンには対応していないらしい。けど、今のところそんな心配は無用だろう。
「この辺りに生えてるのは回復薬の材料の薬草に似てる……。こうしてアプリを起動させて、撮影……っと」
【鑑定結果、ダンジョンヨモギ。回復薬などの材料として買取されています。高さ十センチ、葉っぱ十五枚以上一本で大体十ダンカですね】
やっぱりダンジョンヨモギだったか。これ一本でダンジョンリングに入れるとそれだけでワンスペース潰すんだったか。
ダンジョンリングのブロックはスペース制というか、ワンブロックで十五個までアイテムを登録できる。ただし同じアイテムでも束ねればワンスペースで収まるという裏技も存在するんだよな。
同じ考えで、でかい袋にいろいろ突っ込んでも袋としてカウントされてワンスペースで済んだりする。
とりあえずこの辺りに生えてるダンジョンヨモギを抜きまくるか……。
「という訳で腰のポーチに用意して来たタコ糸。これで縛ると……」
ダンジョンリング内にダンジョンヨモギの束って表示され、使われたスペースは一ヶ所で済んだ。
重量じゃなくて、スペース数で持ち帰る量が決まるのは大きいよな。
「鉱石狙いの時は大きな麻袋を用意するっていってたもんな。そうすると鉱石入り麻袋って名前になるらしい」
筋力とかが上がるとブロック数が増えるらしいけど、三倍になっても四十五個までだし、そこに鉱石をぶち込んだら鉄鉱石とか魔鉱石が普通にスペースを埋め尽くすだろう。
この方法を見つけた奴には感謝だよな。
「しっかし、本気で魔物がいないな……。三十分くらいここに居るけど、魔物と一回も遭遇してないぞ」
そりゃ過疎化するぜ。
こんな所に籠ってたら全然レベルが上がらないし、ここで配信しても撮れ高は稼げないだろう。
ひたすらダンジョンヨモギとかを採集してる動画に需要がある訳もない。
美少女がパンチラさせながら採集してる動画は割と人気だけど。アレは反則だし、エロ系の小技はやりすぎるとすぐに警告が来るらしい。
「安全だけど、本気でそれだけのダンジョンだから人気が無いんだよね」
森の中を探しても生えてるのは普通の木だし、レアな採集物なんて見かけない。
ダンジョンヨモギなんて幾ら集めても小遣い程度しか稼げないからな。十円が生えてるようなものだけど。
ん?
「……向こうに何かいるな。木の陰で何かが動いたぞ。魔物か?」
ゴブリンよりさらに小柄でガリガリに痩せてる雑魚中の雑魚。石を投げたら倒せるとか散々な言われ方してるけど……。
出来るだけ気配を殺して……、ゆっくりと近付いて。
目の前にいたのはちょっと大きめの謎の毛玉……、って。
「ウサギじゃん」
え? ウサギにしてはちょっと大きいよな。って、この過疎ダンジョンの中にも普通の動物居るの? ダンジョン動物の肉は割とおいしくて人気だとは聞くけど、流石にウサギはな……。
ウサギの方もなんだコイツみたいな顔で俺のこと見てるし……。そのうえ戦闘態勢には入らず、近くに生えてた草を美味しくもなさそうな顔で黙々と食ってる。
こいつはダンジョン動物なのか、それとも魔物なのか? 攻撃してきそうにはないけど。もっと難易度の高いダンジョンの深層には、的確に首の動脈狙って来る首狩りウサギなんて物騒な魔物もいるらしい。
でも……。
「ウサギが何か食べてる姿ってみてると割と癒されるよね、とりあえずバナナとか食べるかな?」
ダンジョンリングからバナナを一本取り出して皮を剥き、兎の目の前に置いてみた。
ウサギは目の前にあるバナナの匂いを嗅いだ後、すごい勢いでバナナを食べ始めた!! この隙にスマホで魔物かどうか判定……。
【該当なし。おそらくウサギ】
まんまかよ!!
ウサギもバナナを食い終わって期待のまなざしで俺の方見んなよ。プップッって、ウサギってこんな鳴き声だったのか。
あまりバナナのあげ過ぎはダメっぽいけど、このウサギはたぶん魔物だろうし問題ないだろ。
「仕方が無いからもう一本だけな。って、房の方ガン見するのやめてくれる?」
千切った一本じゃなくて、まだ五本以上ある房の方をみつめて来るんですが~。
これは貴重なダンジョン内の食糧だ。そんな顔をされても簡単にやる訳にはいかないな。
「ぷにゅ……」
ウサギが小さく鳴くと目の前に包まれた飴玉みたいなのが現れた。
ん? もしかしてそれと交換してくれって事か。
人の言葉を理解するのか、思いっきり首を振ってるし。
「仕方が無いな……。それと交換だぞ」
千切った分も含めて、残りのバナナを全部ウサギの前に差し出し、代わりに飴玉を手に入れた。
って、なんでウサギが飴玉なんて持ってるんだ?
「もしかして、お前ユニークモンスターか? って、はやっ!!」
千切った一本をあっという間に食い終わったウサギは房の方のバナナを咥え、あっという間に視界から消えた。
まだ登録されてないユニークモンスターもいるらしいし、もしかして俺が初遭遇しただけかもしれないな。
ユニークモンスターは総じて強い。あそこで戦うって選択をしなかった俺を誉めてやりたい位だ。
「で、この飴玉は何だ?」
スマホのアプリで鑑定させてみた。
【飴玉ですが何か?】
んな事は分かってんだよ!! 何処かで聞いたある様な小説のタイトルっぽく表示しても許されないぞ!!
その飴玉にどんな効果があるのか聞いてるんだけど!!
【毒は無いようです。安心しましたか?】
……このアプリを選んだのは間違いだった? ダンジョンヨモギの時はあんなに詳しい説明が出たのに……。
無料の割に評判は良かったんだけど……。
今回の稼ぎで少しダンカが手に入ったらダンカ対応の検索アプリでも購入するかな……。
「毒が無いんだったらせっかくだし食べてみるか? ユニークモンスターがくれたアイテムだし、何か効果があるかもしれないしさ」
ステータスやスキルなんかが増えるアイテムもあるらしい。この手の飴でもステータスが増えたりするのを期待できるかもしれないし……。
ちょっとためらったけど、口の中に入れたら飴玉は一瞬で溶けて消えた。
ん? 頭の中にファンファーレが響いた!!
【ラッキーダイスが発動しました。今から五レベル上がるまで、レベルアップ時のステータスポイントダイスの目が六になります】
え? なにコレ?
ラッキーダイス? しばらくレベルアップ時にダイスが六だけって凄すぎない?
バナナのお礼にしちゃ効果が高すぎだろ!! と言っても、レべルアップ時のステータスボーナスが五レベル上がるまで十二固定になっただけか。
四色持ちだったらしばらく四十八ポイントが貰えるってデカいけど、灰色も二色判定だしそこまで多くはない。
「それでもかなり大きいかな。下手すりゃピンゾロの二とかもあり得る訳だし……」
レベルアップしてステータスポイントが二しか入らなかったとか地味にショックだしな。
とりあえずレベルアップする時のお楽しみだ。
初戦闘にはならなかったけど、変なウサギに出会えただけでも良しとしよう。
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