第11話 顧問探し①
(遠野視点)
もう一つの重要な問題、顧問を見つけること。練習や試合参加の為の校内外の連絡、大会関係者への連絡、大会の引率係など部活に顧問が必要なのはそういった部分がしっかりと管理されないといけない。だから、顧問無しには部活は成り立たない。
「どうしようか。顧問」
「部活の顧問になっていない先生を探すしかないけど、そういう先生も中々いないからなあ」
「とにかく、まだ男子テニス部発足もまだ正式に決められた訳ではない、正式に認められてから顧問を探そう」
「分かった」
顧問探しは後日という事になり、体験入部最終日が終わった。俺は山田と帰り道が一緒になり彼と話す事ができた。
「山田、顧問の件、誰かやってくれそうな人はいそう?」
「いや、今の所、検討がついていない。なんせ、俺も入学してきたばかりでどんな先生がいるかも分からないし」
「だよね。悪かった」
「ううん。ただ、誰が顧問でも構わないという訳ではないんだ」
「え…」
「昨日と今日の練習を見てさ、皆んないいプレイしてるって思った。皆んなが自分の個性、テニスを持っている。初心者の2人もあの感じだと、俺達にすぐ追い付きそうなぐらいのポテンシャルを持ってる」
「確かに皆んな、テニスが好きって感じだったな。昨日、今日の練習を見て、それがめっちゃ伝わった」
「遠野が一番だろ」
「え」
「だって、今日阿西にバックハンド、ほぼ低く滑るスライスで対応していただろう」
「うん」
「あの戦術。イギリスのプロ選手の戦術そのままだった」
「ああ、実は俺、よくプロの試合を観ていて、それでやってみたいなって思った戦術や技は練習して、出来るようになりたいって思ってたから」
「凄いな、見た選手の技や技術を真似できるなんて。超テニス好きじゃん」
「それは否定できない」
「だからさ、こんなにテニス大好きな人達が多いだったら、いけるって思ったんだよね」
「何を?」
「全国大会」
「へ?」
「インターハイ出場。俺達でいつか達成したいって思うんだ」
「インターハイ…」
「そう、これは俺の夢なんだ」
「凄いな、山田は。そんなこと考えもしなかったよ」
「割と俺はいけるかもと思ってる。だから、顧問の先生もできることなら、テニスを知っている先生にお願いしたいんだ。そうすれば、俺達はテニスにより専念して活動できる。俺の夢に協力してくれるか?」
「…」
ああ、この人は真っ直ぐだ。夢に向かってひたすらに突き進む。俺もかつてテニスで上を目指していた。でも、志し半ばでそれを諦めた。だから、その道のりは険しいものなのも良く知っている。そして、そこから立ち上がるのがどれだけ難しいかも。しかも、今はいい雰囲気の中で出来ているが、ここから悪い雰囲気になることも十分にありえる。
まただ。俺は家族周りの人達しか信頼しない癖がついている。裏切られるのを怖がり、無意識の内に信用することを避けてしまう。まだこのテニス部の事も完全には信じきれていない。本当に達成できるかどうかは分からないが、今はとりあえず協力の意志を伝えよう。
「目指そう、インターハイ」
「ありがとう!」
俺の悪い癖はいつ治るのだろうか。
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