犬とスライムとそれからわたし

@komedawara88

第1話 ここはどこ?

空を舞う虹色の蝶、遠くの方で山ぐらいある巨大なザリガニとカタツムリが戦っている。

広がる草原と、太陽の光の下で1人と1匹はポカンと立ち尽くしていた。



私は、藤咲 あやめ、10歳。柴犬のボタンと日課の散歩中に虹色の蝶を見つけた私たちは、いつもは通らないはずの道へと進んでしまったの。蝶を追いかけることに夢中になっていた私私たちは、気がつくと見渡す限りの草原の上にいたわ。



「ここはどこ?」

そんなに長い距離を歩いていないはずなのに、どこを見ても町が見当たらない。

人だって見当たらない、だから私の疑問に答えてくれるのは「ワンッ!」って言うボタンの鳴き声だけ。


ここにいても何も分からないなら、進むしかない。せめて人が見つかればいいのだけれど。進むべき道があるとするなら巨大なカタツムリとは逆の方、だってあれに近づくのは嫌だもの。


けれど、進んでも進んでも草原が広がるばかり。時々変な生き物が現れては逃げていく。

角の生えたうさぎや、触覚の生えたカエル、ゼリーのようなダンゴムシ、虹色のシマウマ、もしかしたら不思議の国のアリスの世界に迷い込んでしまったのかも知れません。


「せめて言葉が話せる猫がいればいいのに、いつまで歩けば帰れるの?」

もう帰ることはできないのかもしれない、そんな不安が頭をよぎった、その時です。さっきまで、どこを見ても草原だったのに目の前には薄暗い森が広がっています。進むべきか戻るべきか、そんなことを考えていると、ボタンが先に進むように私を引っ張ります。

「ボタン、そっちに人がいるの?」

私の問いかけに、ボタンは「ワンッ!!」と答えます。それなら進むしかありません。鬱蒼と生い茂る草木をかき分けて、森を進みます。


森の中を進むと、すぐに道のようなものを見つけた。

「この道は人のいるところまで続いているのかしら?」

そんな疑問にもう1つの問題が答えます。「グゥ〜」もう何時間歩いたのかも分からない私たちは、疲れと空腹が限界まで来ていました。ボタンも元気なさそうです。食べるものを探そうにも、見たことの無い植物やキノコばかりで食べれるものが分かりません。こんなことなら、途中で見つけたうさぎを掴まえておくべきだった。そんなことを思っていると、草むらの向こうから何やら聞こえてきます。

「食べ物かもしれないわ。少し見て見ましょう。」

恐る恐る覗いてみると、4人の緑色で裸の子供たちが足元にあるゼリーのようなものを棒で叩いたり踏んづけたりしています。

何をしているのか分かりませんがとにかく人を見つけることが出来ました。緑色なのはきっと、ピッ○ロさんの仲間とかそういう人なのかもしれません。ここはナメッ○星なのかもしれない。そう思って声をかけてみることにしました。

「こんにちは。私達は地球から来ました。アヤメって言います。こっちの子はボタン。私達、お腹ぺこぺこなの。何か食べるものを持ってないかしら?」

私の突然の登場に子供たちは困っているようで、「グゲェ、グゲゲゲ」っと言いながら睨みつけてきます。

しまった。ナ○ック語は学校で教わって無いです。これでは、会話はできません。それどころか、子供たちは怒ってこちらに飛びかかって来ました。

「キャーーーー!!」

私の叫び声に反応するように、ボタンが私の前に飛び出した。けれどその数秒後には私の後ろまで吹っ飛んでいった。殴り飛ばされ血まみれになったボタンはそれでも、すぐに立ち上がり、子供たちに体当したり噛み付いたり、大きな声で吠えて子供たちを追い払います。

「ボタン、ありがとう!怪我はだいじょ....」

私が駆け寄る前にボタンはそこに倒れてしまったのだった。


そして、私は背後から忍び寄るその場にいたもう1つの影のことを忘れていたのです。

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