第18話 同盟国イザヤ

「3日後、ナグルファは出発する。準備しておけ」


 ある日、セーマはアイシャに突然そう告げられた。あまりにも突然なことに固まっていると、他に用事があるのかアイシャはその場から立ち去ってしまった。どうすればいいかわからなかったセーマは、とりあえずアストレアの状態を見るべく機体ハンガーへと向かった。


 セーマがアストレアの前で足を止めた時、突然話しかけられた。


「君があの機体のパイロットかね?」


「はい、そうですけど…」


 セーマは返事をしながら振り返る。そこには作業着に身を包んだお爺さんが立っていた。


「おお!やっぱり。君に届け物があっての。とりあえずこの機体の前まで運んできたんじゃが、君が見えたんで声を掛けたんじゃ」


「そうなんですね。ところで、届け物って?」


「なんじゃ聞いておらんのか。パイロットスーツじゃよ。なかなか高価な素材が使われておるからの、誰かに盗られんかひやひやしておったわい」


 セーマは模擬戦をした日にアイシャにパイロットスーツが欲しいと言っていたのを思い出す。


「!完成したんですか!?ありがとうございます!」


「いやなに、あんなにしっかりとした設計図があったから楽だったわい。特殊な素材じゃったから少し時間はかかったがの。それに、いつもとは違うものを作れたからたのしかったわい」


 それじゃ、と言い残してお爺さんは去っていく。セーマはその場に残された箱を開け、パイロットスーツを見る。


「お?もう届いたのか。早かったのう」


「アイシャ!?いつの間に…」


 いつの間にか背後にいたアイシャ。


「手が空いたからのう。それに設計図は見たが、実物も見たかったからのう」


 そう言ってアイシャは箱の中をのぞく。


「ふむ…こうしてみるとやはり特殊じゃの。ああ、コックピット内のシートの方も変わっておるからの。後で確認するとよい」


「わかったよ。そういえば、ナグルファはどこに出発するんだ?」


「む?言ってなかったか?これから向かうのはバルホール帝国と同盟関係にある国、伊邪八イザヤじゃ」


「イザヤ…?」


「ああ。今まで奴らはどちらかと言えば中立的な立場を貫いておったが、そろそろ本格的に協力してもらう。もしかすると戦闘になるかもしれん」


「あれ?同盟関係じゃないの?」


「正確に言うと相互不干渉じゃな。それを変えようというのじゃから、反発もあるかもしれん。まあ、戦闘にならない限りはお主に関係ないことじゃろうから、安心せい」


「それフラグじゃ…あれ、アイシャはどこに?」


 セーマの言葉が届く前にアイシャはどこかへと消えた。


 ―――――

 ―――

 ―


 出発する前日、セーマはアレスと話していた。


「アレスさんはナグルファに乗らないんですね」


「ああ。体は治っていると思うんだが、リハビリをする必要がある。そんな状態の軍人は役に立たん……安心しろ、一応俺もバルホール帝国に所属が変わる。いつかまた会えるさ」


「そうなんですね…そういえば、シュリさんはどうするんですかね?」


「聞いてなかったのか?シュリはビーサムでアストレアの担当だったからな。そのまましばらくはアストレアの担当らしい。ほかのビーサムの奴らも、ほとんどがバルホール帝国に転属だ。まあ、ナグルファに全員が乗るわけじゃないけどな」


「なるほど…やっぱり待遇がいいからなんですかね?」


「さあな、そこまでは知らん。セーマ、待遇がいいからって続ける必要はないからな。待遇よりも自分の命を大切にしろよ」


「分かってます」


「おっと、そろそろリハビリの時間だな。じゃあな、セーマ。元気でな」


「はい。またいつか」


 そうしてセーマは去っていくアレスの背中を見送ったのだった。


 ―――――

 ―――

 ―


『総員、我々は1時間後、バルホール帝国を離れ伊邪八へと出発する。準備を怠るな』


 セーマは迫る出航の時に、緊張していた。


「なんじゃセーマ、緊張しておるのか?」


 突然背後から声を掛けられ、セーマは内心驚きながらも返事をする。


「そりゃあ緊張するよ。逆にアイシャはしないのか?」


「せんな。もう慣れたものじゃからのう」


「そうなのか…そうだ、伊邪八のことについて詳しく教えてくれない?ニベ公国とバルホール帝国以外に行ったことがなくてさ…」


「む?いいじゃろう。それじゃあ私が行った時のことを話そうではないか。あれは私が―――」


 ―――――

 ―――

 ―


「—――という感じでのう。なぜかミカには嫌われておるのよ」


「そのミカっていう人は…?」


「あの国の代表という立場にいる男の一人娘でのう。まあ簡単に言えば私と同じ立場のようなものじゃ」


「なるほど。すごい偉い人なんだ…」


「うむ。それにミカはカークスの操縦もうまいぞ。どうやら自分の部隊を持っていてその長らしいからのう」


「戦場に出るの!?」


「それだけカークスの扱いがうまいという事じゃ。どうやら14の時に当時のエースを倒したらしい」


「すごい人じゃん…」


「それに伊邪八は少々特殊での。カークスも―――」


 セーマとアイシャが話し込んでいるうちに出発の時はすぐそこまで来ていた。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 需要あるかわからないけど一応…


 セーマ:16歳

 アイシャ:15歳

 オピス:19歳

 アレス:24歳

 シュリ:23歳

 ミカ:17歳


 となっています。(アイシャは早生まれです)

 物語を進めるうえで致命的な矛盾があったりした場合は変更する可能性もあります。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る