魂の呼吸
楸
発端とされるもの
序
施錠された校内に侵入した方法は、廊下際の窓ガラスを割ってのものとされ、その際のセキュリティシステムの警報から、だいたいの死亡時刻はそれに定まった。
翌日、彼の死体が見つかるよりも先に、いつまでも起きてこない彼を起こそうとやってきた妹が、机上に置いてあった『遺書』と書かれている紙を発見。また、そのすぐ後に彼の家にある固定電話のベルが鳴った。
死の前に書いたとされる遺書の内容は一言だけ。
それが誰に向けられたものなのかはわからない。
それは遺書と定義できるものなのかわからないほどに情報が少なかったらしい。
何故、自分が死を選んだのか、死ぬことに対する感情は何一つ書かれておらず、その遺記から何かを拾うことは難しかったそうだ。
ただ、死ぬからなんとなく書き起こした。遺書というものはそういうものだから。
そんな気持ちを汲み取ることしかできないほどに文字数がない。
遺書を発見した彼の妹によれば、紙の感触はふやふやとしており、筆跡については滲んでいたらしい。また、数文字の内容でしかないはずなのに、何度も、何度も消しゴムで直した跡が残っていたのだそうだ。
そう、数文字だけ。一言にも満たないような言葉だけ。
『きみのせいだ』
紙には、そんな六文字だけが記されていたようだ。
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