第12話 アベンジャーズ?

「都よ。一先ず邪神開封動画の撮影が決まったところで少し別の話がしたいのだが良いか?」


 企画として邪神開封動画が決まった直後。とりあえずユーチューブの企画が1つ決まった事もあり私はどうしても別の話がしておきたくなったのだ。

 そしてそれに対しての都だが――

「なんだ? 私は個性がないのが個性なカバディの選手から味付け海苔(ファラオ味)、果てはオシャレなスネ毛の話まで幅広く網羅しているぞ? どんな話がしたい?」

 うむ。驚異的な守備範囲だが残念ながら私はその手の話に興味がない。なので無視して私は私の意見を述べる。

「うむ。我々が地球征服を目指す際に必ず立ちはだかる壁……確実に越えなければならない壁。即ち世界各国のスーパーヒーローを出来るだけ把握しておきたい。今現在ヒーローはどれくらい居るのだ? そして要注意なヒーローは?」

 すると都は両肩を竦めると首を左右に振り。

「なんだ仕事の話か……まあ良いだろう。しかし正直なところ全世界に今現在どれだけのヒーローがいるかまでは私も把握しきれていない。何せ大小合わせれば無数にいるからな。しかし要注意のヒーロー……こちらはある程度の目星が付いている」

 私は一つ頷き。

「続けてくれ」

「うむ。まずやはり最初に語るべきはアメリカだろうな。蜘蛛男を筆頭にヒーロー大国と言っても良いだろう」

 蜘蛛男? それは怪人ではないのか?

「あぁ。スパイダーマンの事か……」

 私が疑問を解消すると同時に呟くが――即座に都が否定をする。

「違う。スパイダーマンではない蜘蛛男だ。いいか、スパイダーマンは蜘蛛に噛まれて蜘蛛の能力を得たスーパーヒーローだが、蜘蛛男は逆で人間に噛まれた蜘蛛が人間の能力を得たスーパーヒーロー。人間のように二足歩行をするようになった、人間のようにウンコをするようになった蜘蛛のスーパーヒーローだ」

 まるでそれまで蜘蛛がウンコをしない動物だったかのような口振りだな? だがそれは置いておくとして。

「なるほど。アメリカにはそんなヒーローが存在するのか……他には?」

「うむ。次に語るべきは鉄男だろう」

 ……? アイアンマンか。

「こいつは人間に噛まれた鉄がヒーローになったパターンだ」

 そうきたか。

「あと要注意なのは蝙蝠男なんてのもいる」

 バットマンか。

「こいつはグリズリーに噛まれたサーモンだ」

「それはただの捕食されているだけのサーモンだろう……。いや、しかし十分だ。アメリカがヒーロー大国だというのは良くわかった」

「だろう? キャプテン・エジプトなんて奴もいるからな?」

 キャプテン・アメリカじゃなくてキャプテン・エジプトだとっ!! アメリカでっ?

「悪い事は言わん。エジプトを守れ」

「私に言うな」

 だな。都に言っても仕方がなかった。


 ――と。

「そう言えばアメリカで思い出したがダイコンよ。昨今のアメリカではアベンジャーズと呼ばれるスーパーヒーロー大集結のチームが話題になっているが知っているか?」

 私は両肩をヒョイと竦め。

「当たり前だ。流石の私でもそれは知っている」

「そうか……因みにアベンジャーとは報復者という意味だ。つまりアメリカのアベンジャーズとは不正や悪事を働いた者へ報復する者達……規律を正す者達という意味合いになる。そしてアベンジャーには復讐者という意味もある。まあ、報復も復讐も同じような意味だからな……。で、我々はヨネ、ダイコン、リキ、シコナ……つまり私以外の忍転道幹部全員が復讐者アベンジャーズ。という事は我々とアメリカが激突するとなった時、その時は日米アベンジャーズの頂上決戦という事になる。どうだ? ワクワクしないか?」

 まあ、我々はアベンジャーズよりもリベンジャーズの方が意味合いとしては近いのだがそれは良いとして。

「そんな結果の見えている勝負をする意味があるのか?」

 という私の言葉がよほど気に入らなかったのか、都が珍しく両腕を組み口をへの字に曲げる。

「つまらん男だな……。良いか? ヒーローとは時として負けるとわかっていても、譬え家に帰るまでが遠足だとわかっていても戦わなくてはならない時がある。そしてそれに全力で応えるのが我々ラスボスの役目だろう? そう――つまり家に帰るまで全力で遠足を楽しんでこそ真のラスボスと言えるのだっ!!」

 と拳を握ってまで力説する都だが――。この私がいつ全力で遠足を楽しまない男だと言った? 私は遠足に行く際に「先生。まるごとバナナから取り出したバナナはおやつに入るんですか?」と毎度先生に質問をしていたタイプの優等生だったのだぞ? ……というのは別に良いとして、それよりもいつから我々はラスボスになったのだ? 確かアベンジャーズの話をしていたはずだろう? まあ良い……

「わかった、わかった。ならば日米アベンジャーズ対決の時は全力でアメリカに遠足に行って奴等を叩きのめせば良いのだな?」

「ああ、その通りだ」

 と満足そうに頷く都だが、何がその通りなのか私には全くわからない。しかしとりあえずアメリカに行く時はまるごとバナナの中身バナナは忘れないようにしようと私は決心した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る